もしも伝染病にかかってしまったら?

感染症に関する知識

もしも伝染病にかかってしまったら?

伝染力の高い感染症を拡散しないためには、
どうすれば良いでしょうか?

ここまで感染症とその予防方法について説明してきました。では、注意していても伝染病(多数の人が感染を受け、その感染がかなり広い地域に及び、しかも一定期間発生が続く感染症を「伝染病」と呼称します)にかかってしまったらどうすれば良いでしょうか?
すぐに病院に行きますか?あるいは家で休養しますか?どのように対処すべきなのでしょうか?
今回は、伝染力の高い感染症として、新型コロナウイルスに感染してしまった場合を考えてみましょう。

新型コロナウイルスが伝染しやすいのはいつ?

新型コロナウイルスに感染してから発症する(症状が出る)までの時間は、最初の感染拡大期よりだいぶ短くなって来ており、オミクロン株では平均1~2日といわれています。そして、発症の1~2日前から、発症後7~10日間程度(発熱から4~6日程度)が人に感染させる力を持っています。発症前、なんとなく身体がだるいなと思っていると微熱がでて、病院を受診したら熱があり、実は新型コロナウイルス感染症であったということもよく聞く話です。しかもその周囲にいた人は熱などの症状が何も無いのに新型コロナウイルス陽性となっていることもあります。自分が気付いていないときに他人に感染させてしまう力が強いところも、新型コロナウイルスの非常に怖いところです。そうなると、たとえ自覚症状のない人でも、すべての人が新型コロナウイルスに感染していると疑わなければなりません。これが新型コロナウイルスの怖くて難しいところです。それゆえに感染の自覚の有無に依らず、混雑している場所では感染予防につとめ、マスクや手洗いによる自己防御が重要な意味を持つことになるのです。

  • 新型コロナウィルス感染症の症状 新型コロナウィルス感染症の症状

出典:BMJ 2020;371:m3862 をもとに作画
https://www.bmj.com/content/371/bmj.m3862

軽症:新型コロナウイルス感染症のうち、オミクロン株では95%以上が軽症で、微熱・倦怠感など自宅療養、7日間の隔離で症状は軽快する。

中等症:6~10日目ぐらいから呼吸困難、息切れ、頭痛、高熱になる。全身の強い倦怠感、呼吸が苦しい、息切れなど(1~2週の病院・隔離施設治療が必要)。

重症:発症10日ごろから高度の発熱(38.5℃以上)、呼吸が促迫、息苦しさ、意識がもうろうとなるなどの症状(呼吸器感染症治療を行う)、60歳以上だと8%程度だが、60歳以下では0.3%と高齢者・糖尿病や高血圧の既往症の持つ人に多い。 

重篤:集中治療室での人工呼吸やECMOなどの治療が必要。

  • よくある症状

    ・発熱・咳・息切れ:70%
    ・発熱:43%
    ・咳:50%
    ・息切れ:29%
    ・筋肉痛:36%
    ・頭痛:34%
    ・咽頭痛:20%
    ・下痢:19%
    ・吐き気・嘔吐:12%

  • ・約80%は特に治療を受けずに回復する
  • ・軽症は風邪やインフルエンザなどと似ている

出典:MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:759–765.

感染したかも?と自分で気付けるようにしましょう

新型コロナウイルス感染時の症状は、症状が進行した重症時の呼吸困難や肺炎症状などをイメージしがちですが、実際には感染した人でも症状がない人も多く、また、発症しても最初の内は感冒症状(鼻水、咳、咽頭痛、熱、筋肉痛や全身倦怠感)や、味覚障害・嗅覚障害、そして下痢・嘔吐などの消化器症状を呈します。 また、オミクロン株では、60歳以上では重症化しやすい傾向があるため、高齢者や免疫力が低下している人などリスクの高い人は特に注意が必要となります。 また、発症時に軽症で済んでも、その後何らかの後遺症で悩む人がいます(感染後1年でおよそ30%近くの人)。
今後はマスクをつけない人が増えることも予想されます。強い症状がある場合はもちろんのこと、軽症だからといって、マスクなしで食事や買い物、映画など人混みの中に出てしまうと、周囲の人に感染させてしまう恐れがあるので避けるようにしましょう。

  • 新型コロナウィルス感染症の主な経路 新型コロナウィルス感染症の主な経路

新型コロナウイルス感染症なのか季節性感冒症などの他の疾患なのかを判断しましょう

以下に、感染してから検査までのポイントを示します。

  1. 新型コロナウイルス感染症かもと思った場合には、都道府県の相談窓口か、かかりつけ医に電話して、受診すべきかどうか相談をする。(保険診療が現在は可能ですので必ず保険証を持参しましょう)
  2. 令和年5月8日以降5類に移行されても現在の体制が維持されることになっています。症状がある場合には、かかりつけのクリニックや医院または病院で迅速に抗原検査やPCR検査での診断を受けることが可能です。早ければ1時間、遅くても2日以内には結果が出ますので、それまでは保健所や医師の指示に従い家で静養し、外出を控えることが重要です。
    また、自分で抗原検査キットを購入し検査することも可能ですが、駅前PCRと同様に正式な診断は医師でないとできないため注意が必要です。
  3. 移動手段として、バス、電車などの公共交通機関はなるべく使わず、やむをえない場合には周囲の人と2m以上の距離をとると良いでしょう。
  4. 発熱のある間は外出を控えた上で毎日体温を測定し、熱や、他の症状の変化を記録しておきましょう。誰と接触したか、食事は誰としたか、どのくらいの熱が何日程度続いたかを正しく記録しておくと治療に有効です。

感染者が自宅で療養している際の注意点

新型コロナウイルスを含め、感染力の高いウイルス・細菌に感染してしまった場合に特に気をつけることは、家族内感染を起こさない(同居している家族へ感染させない)ことです。可能であれば個室にし、なるべく部屋から出ないようにし、また、トイレ・シャワー・食事も別にして症状が消えるまで個室での管理を続けることが重要です。食事は個室内で食べ、食器などはドアの前に置き、直接感染者と会わないようにしましょう。家庭内でもマスクを外さず、消毒を徹底しましょう。
部屋を分けられなければ、2m以上の距離を保つか、カーテンなども活用して仕切りを作るのが良いでしょう。また換気を良くして風を通すようにしましょう。
家庭内では、感染者の症状が落着き、24時間経過するまでは食事・食器・トイレなどは別にしておきましょう。

洗濯や部屋の消毒はどうするの?

洗濯などに関しては、新型コロナウイルスの場合にはノロウイルスと違い、タオル、衣類、食器、箸・スプーンなどは、通常の洗濯や洗浄でよいでしょう(食洗器で洗うと熱湯消毒にもなります)。ただし、下痢など体液で汚れた衣服やタオル、シーツなどを扱う際は、手袋とマスクをつけ、まず80度の熱湯の中に10分以上浸けてから、一般的な家庭用洗剤で洗って完全に乾かすのが良いでしょう。
トイレ・洗面所はできるだけ共用しないようにします。やむを得ない場合にはコップ・タオルは別にしておきます。ドアノブやリモコン、照明スイッチ、玄関など家族みんなが触るところは、2日に1~2回消毒をしましょう。60%以上の消毒用のアルコールで拭くか、家庭用塩素系漂白剤を水で薄めたもので拭いた後に水拭きをしてください。
介護が必要な人は、できれば複数の人が関わるのではなく、1人に限定すると良いでしょう。介護にあたる際にはマスク、手袋を着け、洗濯したエプロンを着け、使用後に捨てる際はポリ袋に入れてしっかりと閉じておきましょう。介護をする人は、こまめに手を洗い、うがいを行い、自分の顔の粘膜(目、鼻、口)をむやみに触らないようにしましょう。体液や飛沫を浴びたらすべてを脱ぎ、新しいものに着替える周到さが必要です。

新型コロナウイルス感染症にかかってからの復帰は?

新型コロナウイルスに感染した患者が活動できる基準について、令和5年5月8日以降は、 発熱や咳などの症状がある場合は出来るだけ自宅待機し、症状が軽快するまで外出を控えるようにしましょう(概ね7日間あるいは症状が消失して24時間以上経過するまでを待機目安と考えます)。 症状がないときはこの限りではありません。
受診をしない場合でも、身体がだるい、発熱がある時には家で休むようにしましょう。概ね1週間程度の自宅療養期間を経て、体調の改善を見つつ徐々に仕事や学校へ復帰すると良いでしょう。 万が一感染してしまったら、他の人に迷惑をかけないことがまず重要です。そのためには、一人ひとりの基本的な感染対策への意識が重要です。
下図に新しい生活様式の具体例を示します。これらを参考に、Withコロナの時代を生きていく知恵を身に付けましょう。

  • 「5類感染症移行後の生活様式」の具体例

    ・高齢者や持病のある重症化リスクの高い人と会う時はマスク着用・体調管理に気をつける
    ・手は石鹸で15~30秒、流水で15秒程度洗う
    ・感染が流行している地域への旅行は控えめに
    ・買い物は通販や電子決済を活用 ・食事は横並びに座り、大皿を避ける
    ・毎日健康チェック、発熱や感冒症状のある際は、無理せず自宅で療養する

  • 企業活動の際の対策

    ・施設の入り口と内部に手指の消毒設備を置く
    ・こまめに換気をする
    ・複数の人が手を触れる場所は適宜消毒する
    ・休憩スペースは一度に利用する人を限定する
    ・トイレはふたを閉めて流すように表示する
    ・テレワークや時差出勤を継続<する
    ・仕事の会議や名刺交換はオンラインで行う
    ・身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いを社内で徹底する
    ・ストレスを抱えている人への早期の介入を行う(こころの相談)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000643326.pdf
    ・後遺症を有する人への配慮する

  • ・業種ごとにガイドラインを作成

監修者プロフィール

国士舘大学院 救急システム研究科 研究科長・教授 田中 秀治

国士舘大学院 救急システム研究科 研究科長・教授 田中 秀治

一般社団法人Heart Sever Japan(HSJ) 代表理事、国士舘大学 新型コロナ感染症対策本部 副本部長
Medic Japan メディカルディレクター 感染症コンサルタント
日本救急医学会評議員・指導医 日本臨床救急医学会理事 日本救護救急医学会理事 救急専門医 ICD制度協議会 前インフェクションコントロールドクター