どうして冬になると風邪が流行るのでしょうか?
感染の原因を知って正しい予防をしましょう。
感染症とは、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原体が身体に侵入してくることで何らかの症状が出る病気のことです。ただ、病原体が身体に侵入してきても、必ず感染症となるわけではなく、発病するかどうかは、病原体の感染力の強さと、身体の免疫など抵抗力の強さのバランスで決まります。
感染症の中でも最も身近な風邪。その原因となる病原体の約80〜90%はウイルスです。残り約10〜20%は細菌で、そのほか、ウイルスと細菌の間の大きさのマイコプラズマやクラミジア(カビ)などもあり、原因病原体は多岐にわたります。
風邪の原因となるウイルスのうち、最も代表的なライノウイルスは全体の30〜40%を占めており、症状は冬場に鼻風邪などを起こすのが特徴です。つぎに季節性コロナウイルスが15%程度を占め、鼻や喉の炎症、咳、発熱を示します。よく知られているインフルエンザウイルスも15%程度で、咳、発熱、咽頭の炎症を示します。またパラインフルエンザウイルス(5%)やRSウイルス(5%)でも同様に咳、発熱などを示します。
冬に流行する風邪には夏はあまり罹患しません。それはなぜでしょう?
冬に流行する風邪の原因となるウイルスは、低温で湿度が低くなると、環境内での活性を保つ期間が長くなります。また、空気が乾燥すると、ウイルスを含んだ飛沫やエアロゾル(浮遊する微粒子)の水分が失われて、小さくて軽い粒子となり空中に浮遊しやすくなります。
日本でも本格的な冬がやってくる11月下旬からは、冬のウイルスが活動しやすい環境になるのです。
また冬は、乾燥して上気道(鼻や喉)の炎症が起こりやすくなり、低温では咽頭の免疫力が低下します。その状況で、活発に活動しているウイルスに感染することによって、冬には風邪が発症しやすいのです。
そのため、逆に気温が1度上がると新たな感染者がおよそ3%少なくなるとも言われています。
新型コロナウイルスも冬の時期は漂って活性を保つ期間が長くなり、飛散する距離が延びて、感染リスクが高まります。
まず喉に炎症を起こした後、肺に炎症を拡大し、その後全身に広がり、重篤な症状を起こしやすくなるのです。
これらは、新型コロナウイルスの第3波のはじまりは冬であったことや、日本では北海道で流行してから全国で流行したことからもご理解頂けると思います。
しかし、新型コロナウイルスの場合はそれだけではありませんでした。次から次へとウイルスの形を変え(変異株)、冬でも夏でも流行するように環境に適応していったのです。
ウイルスは生物としての最低要素を備えていないため、生物ではありません。遺伝物質(DNA/RNA)とタンパク質の殻のみで構成されており、種類によってはそれが脂質の膜で覆われています。サイズは細菌の1/50程度の大きさで、電子顕微鏡でなければ見えません。また細菌は栄養があれば複製して増殖できますが、ウイルスは自力で増殖することができません。そのため、ウイルスは動植物の細胞のなかに入りこみ、その細胞の機能を使って自身のコピーを増殖させ、最終的に細胞を飛び出していきます。ウイルスによる感染症とは、ウイルスが細胞内で増殖し、結果的に細胞を破壊することで、感染した人間に有害な症状が現れることです。
ウイルスや細菌が傷害する場所は喉が多いですが、それはウイルスが伝搬する感染経路として「飛沫感染」と「空気感染」が多いからです。
「飛沫感染」は、感染者がくしゃみや咳などをする時に、ツバなどの飛沫とともにウイルスが飛び散り、別の人が口や鼻から吸い込み感染してしまうことです。
「空気感染」は空気中にフワフワと浮いているウイルスを吸い込んで感染することです。麻疹ウイルスなどは小さいため、空気中に浮くことができますし、ノロウイルスもトイレの排泄物などが巻き上がりそれに含まれるウイルスを吸入して感染します。
一方「接触感染」は、ウイルスの付着した部分に触れることで手にウイルスが付着し、その手で顔(口や鼻や眼の粘膜)に触ることで体内にウイルスが入り込んで感染することです。夏場の感染で有名な咽頭結膜熱、プール熱などはアデノウイルスの接触感染でおこります。コップやタオルなどの共用の他、トイレや部屋のドアノブ、照明のスイッチ、エレベーターのスイッチ、電車やバスのつり革など、あらゆるところに危険が潜んでおり、感染源となります。また、ウイルスに汚染された血液などの体液に触れても起こります。
「経口感染」は食事、とくに加熱していない生の肉や貝類などから感染するものです。肝炎ウイルスなどがあります。
以上のように、ウイルスはさまざまな方法で人に忍び寄ってきます。しかしウイルスに対抗し感染を防ぐ手段もあります。ウイルスはそもそも生物ではないので、概念的に「死滅させる」ことはできませんが、石鹸や消毒液で破壊することができるのです。
コロナウイルスは熱およびアルコール(60%以上)に弱いことがわかっています。
70℃以上で一定時間の加熱、石鹸の泡や60%以上のアルコールは、ウイルスを覆っている膜を破壊することができます。また、25℃以上の流水で30秒以上かけて洗うと、ウイルスのタンパク分子は分解して破壊されるのです。
各感染方法と特徴を図に示しますので、それぞれの感染方法の特性を理解した上で感染対策をしましょう。