更新日:2023.7.27

生理痛がひどい…そんな時にできる対処法とは?

生理痛(月経痛)がひどく日常生活に支障が出るほどの場合、それは「月経困難症」などの
治療が必要な状態かもしれません。生理痛はガマンせずに、婦人科を受診したり、
市販の鎮痛薬を使ったりして適切な対策を取り、改善していきましょう。
この記事では、生理痛の原因や症状、生理痛への対処法など、
生理痛のツラさから解放され、心地よい生活を送るためのヒントをご紹介します。

監 修

早田 輝子先生

早田 輝子先生

医学博士。女性ライフクリニック新宿院長。
クリニックでは女性の健康とライフデザインをサポート。患者様に合った最適な方法を提案している。日本医師会認定健康スポーツ医・循環器専門医・国際協力NGOジョイセフフレンドとしても活躍。1男1女の母。

生理痛(月経痛)とは

生理痛(月経痛)とは、生理(月経)の直前から生理中にかけて子宮が収縮する時に起きる、下腹部を中心としたおなかや腰の痛みのことをいいます。
生理の前になると、不要になった子宮内膜を体の外へと押し出すために、子宮内膜でプロスタグランジンという物質がつくられます。この物質の量が多くなると子宮の収縮も強くなり、生理痛となって現れます。

おなかの痛みだけじゃない?
生理の時に起こる症状

腹痛(下腹部痛)が生理痛の代表的な症状ですが、生理の時に痛む場所は他にもあります。生理の時に痛みが生じやすい場所や起こりやすい症状をご紹介します。

おなかの痛みだけじゃない?生理の時に起こる症状

腹痛(下腹部痛)

プロスタグランジンが過剰に産生されて子宮が強く収縮すると、子宮のある下腹部(おへそより下の位置)に痛みが生じます。
生理の直前~開始とともに痛くなり、生理が終わる頃にはなくなるという腹痛は、生理痛と考えてよいでしょう。

腰痛

生理中に腰の痛みや重だるさを感じる人もいるのではないでしょうか。生理中の腰痛も腹痛と同じく、プロスタグランジンの過剰産生が原因で生じる生理痛の一種と考えられます。子宮が強く収縮する影響が腰側にも及ぶと、腰に痛みが現れます。

頭痛・吐き気・下痢

痛みが子宮から離れた位置にある頭に現れたり、吐き気や下痢となって生じたりするのも生理中によく見られる症状です。こうした症状はプロスタグランジンや、プロスタグランジンが代謝されてつくられた物質が血液にのって全身を巡ることで生じるといわれています。

生理痛がひどくなる
原因は?

ツライ生理痛がある状態を「月経困難症」といいます。
月経困難症は、大きく二つに分けられます。子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因となっている「器質性月経困難症」と、原因となる病気が特にない「機能性月経困難症」です。
一般的には、原因となる病気がない機能性月経困難症であることが多いです。この場合、ストレスや血行不良、食生活や冷えなどが痛みを増強させる要因となっていることがあります。一方で、なかには病気などが原因で生理痛がひどくなっていることもあります。
以下に、器質性月経困難症の原因となる病気をいくつかご紹介します。

生理痛がひどくなる原因は?

子宮内膜症

本来、子宮の内腔にあるはずの子宮内膜が、卵巣や卵管など子宮とは異なる場所に発生してしまう病気です。
20~30代の女性に多く見られます。生理痛をひどくするほかに、排便痛、性交痛などが生じることもあり、不妊の原因にもなることがあります。その症状は、生理のたびに進行し、閉経まで完治しません。
治療には鎮痛薬、漢方薬、ピル(低用量ピル ※1)、偽閉経療法などの方法があり、ご年齢や状況に応じた方法を選択します。悪化した場合は手術を行うこともあります。

※1:卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が配合された薬です。のみ続けることで子宮内膜がうすくなって経血の量が減り、生理痛の一因であるプロスタグランジンの量が減って生理痛が緩和されます。一部のピルは現在、月経困難症の治療を目的とする薬として保険適用されています。

子宮腺筋症

子宮の筋肉の中に、子宮内膜の組織が入り込んでしまう病気を子宮腺筋症といいます。
子宮内膜症と同じく、生理痛を生じさせたり、過多月経(※2)とよばれる経血の量が多い状態になったりします。自覚症状があれば治療が必要ですが、特に自覚症状がなければそのまま様子を見ることもあります。閉経すれば自然に治っていきます。

※2:1回の生理期間を通じた出血量が150mlを超え、凝血塊(ぎょうけっかい)とよばれるレバーのような塊がたくさんあると、過多月経と診断されます。

子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮にできる良性のこぶ(腫瘍)のことです。
30歳以上の女性の3~5人に1人には子宮筋腫があるといわれ、めずらしいものではありません。
無症状の場合、子宮筋腫は発育が遅く悪性化もしないため、経過観察でよいです。

しかし、子宮筋腫のある部位により経血の量が増えたり、生理痛が強くなったりする場合は治療することがあります。
経血の量はピルやIUS(※3)などで減らすことが可能です。痛みは鎮痛薬で軽減できますが、鎮痛薬をのんでも症状が軽快する様子が見られなければ、薬を使って生理を止める「偽閉経療法」を行うこともあります。ただし、更年期のような症状が出ることもあり、若い女性には不向きな治療法です。
QOLが低下しており、本人からの希望があれば手術も検討します。
いずれにせよ状況に応じて治療方針を考えます。

なお、子宮筋腫と思われていた腫瘍が急速に大きくなる場合は、がんの一種である「子宮肉腫」ではないか、確認する必要があります。
婦人科検診などで子宮筋腫があるといわれたことのある人は、定期的に検診を受けて筋腫の状態を確認しておきましょう。

※3:子宮内に装着し、プロゲステロンを放出させて子宮内膜をうすくする器具。5年間効果が持続します。

コラム:機能性と器質性、どちらの月経困難症なのかを診断するには?

生理痛がひどく、月経困難症が生じていて婦人科を受診した場合、まずはその痛みが病気によるもの(器質性月経困難症)なのか、それとも病気の影響がないもの(機能性月経困難症)なのかを診断します。
診断には、問診、内診、エコー検査などを行います。必要に応じて、MRI(磁気共鳴画像)検査や血液検査も追加します。
これらの検査の結果、異常がなかった場合、機能性月経困難症と診断されます。

生理痛への対処法

生理痛がある時は、ガマンせずに痛みを和らげる方法をとりましょう。痛みの緩和に有効なセルフケアや対処法をご紹介します。

生理痛への対処法

ゆったり過ごして
カラダを冷やさないようにする

生理期間はなるべくゆったりと過ごしましょう。おなかをやさしくさすったり、可能ならカラダのしめつけをゆるめて横になったりしてみてください。
生理後半になれば、カラダを動かしていくのがおすすめ。特に、骨盤や股関節を動かしたり、おしりや太もも、おなかの運動やストレッチをしたりして血の巡りをよくすることが大切です。

また、生理期間中はもちろん、日頃からおなかや腰まわりを冷やさないようにしましょう。なお、食事でいうと、添加物やトランス脂肪酸(食物油脂)、白砂糖などはカラダを冷やすため、摂り過ぎには注意しましょう。

鎮痛薬をのむ

痛みが出た時にはガマンせず鎮痛薬をのんで痛みを和らげましょう。できれば痛みが出始めたタイミングで、早めに服用してください。
用法・用量を守って服用することで、鎮痛薬は生理痛を和らげることができます。ドラッグストアなどで市販されている鎮痛薬でOKです。薬の種類によって痛みへのアプローチ方法が異なるので、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。ただし、使い過ぎは胃腸や腎臓を傷めたりすることがあるので注意しましょう。

婦人科を受診する

鎮痛薬などで痛みをコントロールできない場合には一度婦人科を受診し、相談してみましょう。原因があってもなくても、ツライ生理痛の症状を改善する手段がありますし、検査をすることでヘルスチェックもできます。
この先、さまざまな不安を相談できる、かかりつけの婦人科が見つかることもあるでしょう。勇気を出して、受診してみてください。

原因になっている病気を治療する

子宮筋腫、または子宮内膜症や子宮腺筋症などの病気が原因で重い生理痛がある場合、それらを治療することで生理痛を和らげることができます。
病気の発見が早ければ、さまざまな治療の選択肢の中から、希望に応じた治療法を選択できます。
しかし、病気が進行してしまうと、選択肢が限られてしまうことも。そのため、早めの受診をおすすめします。

ピルの活用

しばらくの間、妊娠の予定がない場合、ピルを使うのはとても有効です。婦人科で処方されるピルを内服すると、子宮内膜がうすくなって経血の量を減らすことができ、生理痛が緩和されます。
また、ピルをのんでいる間は卵巣を休めることができ、排卵も止まりますが、妊娠を希望する際には内服を中止すれば本来のホルモン分泌が再開し、排卵もまた行われるようになります。

ピルは生理前の強い不調(PMS:月経前症候群)の改善にもつながります。ぜひ婦人科で相談してみましょう。

ひどくなくても
生理痛があればケアしよう

ひどくなくても生理痛があればケアしよう

生理痛は「あって当然の痛み」ではありません。
痛みがあると、カラダにもココロにも負担がかかってしまいます。負担を減らすためにも生理痛がある場合、ガマンせずに早めに鎮痛薬をのみ、痛みを和らげましょう。
鎮痛薬が効きにくかったり、毎回ひどい生理痛に悩まされていたりする場合は、一度婦人科医に相談してみましょう。婦人科では、病気の治療以外にもさまざまな生理に関する相談にのってもらえます。
また、生理痛は日頃の食生活や運動習慣により改善できる場合もありますので、これを機に日々の生活を見直してみるのもよいでしょう。
生活の中で改善できるところはしながら、ツライときは無理をしないで鎮痛薬や婦人科医を頼って、生理中でも快適な日々を過ごしましょう。

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この医薬品は「使用上の注意」をよく読んでお使いください。
アレルギー体質の方は、必ず薬剤師、登録販売者にご相談ください。

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