腸内細菌は、私たちの腸の中で、さまざまな働きを担っています。
【参考】
①~⑤:『新版胃腸ケア・ガイドブック』(興和新薬)
⑥:『静脈経腸栄養』Vol.28 No.4 2013 9(915)-15(921)(日本静脈経腸栄養学会)
細菌が原因となる病気(感染症)などの治療のために、細菌を殺したり、増殖を抑えたりする抗生物質を服用することがあります。抗生物質は病気の治療になくてはならないお薬ですが、人体に害を与える細菌だけでなく、有用な働きをしている細菌にも作用します。その結果、腸内の善玉菌(ビフィズス菌)の数が減り、悪玉菌や日和見菌の割合が増えて、腸内フローラのバランスが崩れてしまうことがあります(菌交代症)。
こうした影響を最小限に留めるために有効なのが、ビフィズス菌や乳酸菌を摂取することです。日頃から「腸にやさしい食事」を参考にしましょう。また、抗生物質を服用する際は、腸内フローラのバランスにも気をつけてみるとよいでしょう。
【参考】
『人の健康は腸内細菌で決まる!』光岡知足(技術評論社)
脳は、非常に複雑な神経ネットワークを構築し、私たちの生命活動を支えています。一方、腸には独自の神経系があり、脳と互いに影響を及ぼしあうことがわかっています。これを「脳腸相関」(のうちょうそうかん)と言います。
生命活動や心の動きを調節する際、さまざまな指令を伝えるのが神経伝達物質です。脳と腸の両方で分泌される神経伝達物質に「セロトニン」があります。「セロトニン」は、脳内では気分を安定させ、穏やかにする役割を担っているほか、睡眠にも関与しています。また、腸では、腸を動かす指令を出す際に使われています。 生活習慣やストレスなどが影響して腸の働きが鈍り、便秘になった場合を考えてみましょう。
このとき、腸の神経系は、「セロトニン」を分泌し、腸が動くように刺激します。腸内では、腸が反応するまで「セロトニン」を分泌し続けるため、便秘がひどくなると、腸内のセロトニンが過剰になります。一方、脳では「セロトニン」が不足している状態になってしまうため、不安になったりイライラしたりしやすくなるようです。
腸内フローラのバランスを適切に保ち、便秘を予防することが、心身ともにすこやかに過ごすことにつながるのです。
【参考】
『あなたの知らない乳酸菌力』後藤利夫(小学館)
『臨床栄養』臨時増刊:脳腸相関
『日経サイエンス』2017年2月号