更新日:2025.08.19

生理のときの吐き気…その原因と対処法をご紹介

「生理前や生理中は、どうも気持ちが悪くなる…」そんな悩みを抱えていませんか?
生理に伴う吐き気は、女性が経験することのあるツライ症状の一つです。
ホルモンバランスの乱れが関係している場合もあれば、子宮内膜症などの病気が隠れていることも。
この記事では、生理に伴う吐き気の原因を解説するとともに、
ご自身でできる対処法や医療機関を受診する目安についてもご紹介します。

監 修

吉居 絵理先生

吉居 絵理先生

産婦人科専門医。神宮外苑 Woman Life Clinic 医師。
全ての女性が年代問わず自分らしく生きられるように、個々に合った治療やアドバイスを行っている。
周産期専門医・女性ヘルスケア専門医・抗加齢医学会専門医・新生児蘇生法インストラクター。1児の母。

生理期間中の吐き気の原因

吐き気は、生理中だけでなく生理前から感じる人もいます。
いつ、どのような原因で吐き気が起こるのかを知ることが、適切な対処への第一歩です。
ここではまず「生理中」に焦点を当てて、吐き気の症状と原因を解説します。

生理中の吐き気とは

生理中の吐き気は、胃のむかつきや、まさに吐いてしまいそうな差し迫った感覚、実際に吐いてしまうなど、様々なかたちで現れます。
生理痛(下腹部痛、腰痛)や下痢、頭痛、めまい、眠気など、生理に伴うさまざまな症状と同時に起こることも少なくありません。
これらの症状の強さや感じ方には個人差があるため、ご自身の状態を把握することが大切です。

生理中の吐き気の主な原因

生理中の吐き気には、いくつかの原因が考えられます。主なものを以下に挙げます。

プロスタグランジンの影響

「プロスタグランジン」は、子宮の収縮を促して不要になった子宮内膜を経血として排出させる物質です。プロスタグランジンが過剰に産生されると、子宮の収縮が強くなり生理痛を引き起こします。
このプロスタグランジンには、子宮と同時に胃腸を収縮させる作用があり、吐き気や下痢を起こすことがあります。

ホルモンバランスの変動による自律神経の乱れ

女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、生理周期に伴い、大きく変化していきます。この急激な変動は、自律神経のバランスに影響を与えます。
自律神経はカラダの様々な働きに関わっており、胃腸の働きにも関与しているため、バランスが崩れると吐き気、食欲不振などの症状が現れることがあります。

貧血による影響

生理中は経血により、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。
貧血によって全身に十分な酸素が行き届かないと、脳や胃腸の機能が低下して吐き気を感じることがあります。

ストレスや疲労による影響

精神的なストレスや身体的な疲労は、自律神経の乱れや、吐き気などの症状を引き起こします。
特に生理中は、頭痛・腹痛など他の症状によってもストレスが多くなるので、注意が必要です。

子宮内膜症などの病気が原因の場合

生理中の吐き気は、婦人科系の病気が原因となっている場合もあります。

子宮内膜症

子宮内膜組織が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で発育する病気です。下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛に加え、吐き気を伴うことがあります。

子宮筋腫

子宮にできる良性の腫瘍です。主な症状は過多月経、生理痛、貧血などですが、筋腫の大きさやできた場所によっては、周辺臓器を圧迫して便秘、頻尿などを引き起こすことがあります。またプロスタグランジン産生増加により、吐き気などを引き起こすことがあります。

妊娠初期症状の可能性

吐き気は妊娠初期症状の可能性もあります。生理がきたと思っていたのが、実は、受精卵が着床する際におこる「着床出血」だったということもあります。その場合は、「つわり」の症状として吐き気が起こります。
経血量が少ないなど普段の生理と異なる症状が合わせてある場合は、妊娠検査薬で確認してみましょう。

生理前の吐き気とPMS(月経前症候群)の関係

次に「生理前」に焦点を当てて、吐き気の症状と原因を解説します。
生理前には、PMS(月経前症候群)の一症状として吐き気が起こることがあります。
PMSとは、生理前に現れるココロやカラダの不調です。生理が始まる3~10日くらい前から現れ、生理が始まると軽快または消失します。
PMSの症状や程度は個人差が大きく、吐き気は、PMSの代表的な症状の一つです。

PMSによる吐き気の原因と症状

PMSで吐き気が起こる詳しいメカニズムは分かっていませんが、いくつかの要因が考えられます。

ホルモン変動とセロトニンへの影響

排卵から生理開始までの期間(黄体期)には、プロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。プロゲステロンは、妊娠を維持するのに必要なホルモンで、妊娠していない場合は黄体期後半に分泌量が急激に下がります。
このプロゲステロンの分泌量の急激な増減は、脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)の分泌に影響を与えます。セロトニンは消化管の運動にも関与しているため、吐き気などの症状を引き起こす可能性があります。

精神的な症状(イライラ、気分の落ち込み)による影響

PMSでは、イライラ、怒りっぽくなる、気分の落ち込み、不安感、集中力の低下など精神的な症状もよくみられます。
これらの精神的な症状がストレスとなり、自律神経の乱れを介して吐き気などの身体症状として現れることもあります。

生理で起こる吐き気、いつからいつまで続く?

期間のイメージ画像

生理に関連する吐き気がいつから始まり、いつまで続くのかは、その原因により異なり、個人差があります。

吐き気の症状が現れやすい時期は

生理中の吐き気は、生理1日目、2日目など、生理痛がピークになる時期に合わせて現れることが多いです。
PMSによる吐き気の場合、生理開始の3~10日前から現れ、生理が始まるとともに軽快・消失します。
まれに排卵期(排卵前後の数日間)に起こるホルモンバランスの変動で吐き気を感じる人もいます。
ただし、症状の期間や強さは個人差が大きいため、あくまで目安となります。

ツライ吐き気を和らげるためのセルフケア

生理前や生理中のツライ吐き気は、セルフケアで和らぐ場合もあります。いくつか対処法をご紹介しますので、無理のない範囲で試してみましょう。
ただし、症状が重い場合や改善しない場合は、ガマンせずに婦人科を受診しましょう。

食事内容を工夫する

吐き気があるときは、胃腸に負担をかけにくい食事にするのがおすすめです。

消化の良いものを食べる

おかゆ、うどん、スープ、豆腐、白身魚、鶏のささみなど、消化しやすいものを選びましょう。少量ずつ、よく噛んで食べることも大切です。

吐き気を誘発しやすい食べ物を避ける

脂っこい食事、香辛料などの刺激物、カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、紅茶、緑茶など)や炭酸飲料は、胃腸を刺激し、吐き気を悪化させることがあるので避けましょう。

鉄分やビタミンB群などの栄養素を摂る

貧血気味の人は、鉄分の多い食品(レバー、牛肉の赤身など)を意識して摂りましょう。
ビタミンB群の不足により吐き気は起こりやすくなります。肉、魚介類、果物、乳製品など満遍なく摂るようにしましょう。
食事だけで改善が難しい場合は、医師や薬剤師に相談のうえ、サプリメントの利用を検討してもよいでしょう。

生活習慣を見直す

日々の生活習慣を見直すことも、症状緩和につながります。

カラダを温める(お腹や腰を冷やさない)

カラダが冷えると血行が悪くなり、生理痛や胃腸の不調が悪化することがあります。
お腹や腰を温める、温かい飲み物を飲む、ゆっくり入浴するなどしてカラダを冷やさないようにしましょう。

飲み物を飲む女性

十分な睡眠と休息をとる

睡眠不足や疲労は、自律神経の乱れを引き起こし、吐き気などの症状を悪化させます。
ツライ時は無理をせず、睡眠を十分にとり、作業の合間には休息時間を確保することが大切です。

ストレスを溜めない

ストレスを溜めないように、自分に合ったリラックス方法を見つけることも有効的です。
アロマテラピーには、リラックス効果や吐き気を和らげる効果が期待できるものがあります。アロマで用いられるオイルには、さまざまな種類があり、心地よいと感じる香りを選ぶのが基本ですが、吐き気には、レモン・グレープフルーツなど柑橘系の香りや、ペパーミント(すっきりとした清涼感のある香り)など、気分をリフレッシュさせてくれる香りがおすすめです。
また、気分転換や血行促進のために、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れて、ストレス解消することもおすすめです。

ツボ押しをする

東洋医学では、カラダの中には、経絡(けいらく)と呼ばれる「気(エネルギー)」「血(栄養)」「水(体液)」が流れる通路が張り巡らされていると考えられています。
路上には経穴(ツボ)と呼ばれる特定のポイントが存在し、刺激することで、これらの流れがスムーズになり様々な症状が緩和すると考えられています。
生理痛や吐き気の症状緩和が期待できるツボには以下のようなものがあります。

三陰交(さんいんこう)

婦人科の不調に効果的といわれている最も代表的なツボで、足の内くるぶしの骨の
でっぱりから指4本分上のところにあります。

関元(かんげん)

おへそから指4本分下の位置にあります。お腹を温める働きが期待できるツボです。

できれば市販のツボ押しグッズなどは使わず、自分の指を使って刺激すると力加減がわかりやすいので安心です。グイグイと強く押すのではなく、「少し痛いけれど気持ちがいい」と感じる力加減でゆっくり押しましょう。

こんな場合は婦人科へ相談を

以下のような場合は、ガマンせずに婦人科を受診しましょう。

  • ○セルフケアで改善しない
  • ○症状がだんだん悪化してきている
  • ○不正出血やおりものの異常、激しい腹痛など、吐き気以外の気になる症状がある
  • ○妊娠の可能性がある

生理のツライ吐き気、ガマンしないで対策を

生理前や生理中の吐き気は、プロスタグランジンの影響やホルモン・自律神経の乱れ、婦人科系の病気など、さまざまな原因で起こります。
「生理だから仕方ない」とガマンせず、まずはご自身の症状がいつから、どのように現れるのかを把握することが大切です。
生活習慣の見直し、市販薬を使うなどのセルフケアで症状が和らぐこともありますが、ツライ時は無理せず婦人科を受診しましょう。
医師に相談することで、原因に合った治療法や、より効果的な対処法が見つかるはずです。
生理前後のツライ吐き気を少しでも軽減し、より快適に過ごせるように、できることから試してみてくださいね。

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アレルギー体質の方は、必ず薬剤師、登録販売者にご相談ください。

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