更新日:2025.03.06

月経困難症とは?主な症状や原因と対処法についてご紹介

月経困難症とは、月経期間中に月経に伴って現れる
下腹部痛、腰痛、お腹の張り、吐き気、頭痛などの病的症状のことです。
明らかな原因となる病気があれば器質性月経困難症、
特に原因となる病気がなければ機能性月経困難症と診断されます。
日常生活に支障をきたす月経困難症について、理解を深めていきましょう。

監 修

吉居 絵理先生

吉居 絵理先生

産婦人科専門医。神宮外苑 Woman Life Clinic 医師。
全ての女性が年代問わず自分らしく生きられるように、個々に合った治療やアドバイスを行っている。
周産期専門医・女性ヘルスケア専門医・抗加齢医学会専門医・新生児蘇生法インストラクター。1児の母。

月経困難症とは?

月経困難症とは、月経(生理)に伴って起こる病的症状のなかでも、日常生活に支障をきたし、治療の対象になる場合をいいます。
このあとご紹介するような病的症状が生理前もしくは生理中に現れ、なおかつ治療をしないといつも通りの生活を送るのがツライ場合は、月経困難症と診断される可能性が高いでしょう。

月経困難症の主な症状

月経困難症では以下の症状が見られます。
これらの症状は主に不要になった子宮内膜を体外に押し出す作用のある「プロスタグランジン」という物質が過剰につくられる影響で生じると考えられています。

月経困難症のイメージ画像

腹痛(下腹部の痛み)、お腹の張り

過剰につくられたプロスタグランジンによって子宮が強く収縮し、腹痛やお腹の張りが生じます。プロスタグランジンが血液中に入ると腸管の収縮を引き起こし、軟便を伴う下腹部の痛みも起こりやすくなります。

腰痛

生理中の腰痛も腹痛と同じく、プロスタグランジンの過剰産生が原因で生じると考えられています。子宮が強く収縮する影響が腰側にも及ぶと、腰痛となって現れます。

吐き気

吐き気も生理中によく見られる症状で、プロスタグランジンまたはプロスタグランジンが代謝されてつくられた物質が血液にのって全身を巡る影響と考えられています。

頭痛

プロスタグランジンや、プロスタグランジンが代謝されてつくられた物質が血液にのって全身を巡ることで、痛みが子宮から離れた位置に現れることもあります。頭痛はその中の一つの症状です。

月経困難症の原因

月経困難症には「器質性月経困難症」と「機能性月経困難症」があります。それぞれの詳しい原因を見ていきましょう。

器質性月経困難症

子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気が原因で、生理中に痛みなどの病的症状が生じているものを器質性月経困難症といいます。
30歳以降に生じる月経困難症は、器質性月経困難症であることが多いといわれています。生理が始まる前から症状が現れ、生理が終わった後にも続くことがあります。

機能性月経困難症

特に原因となる病気がないけれど、生理中に日常生活に支障をきたすような病的症状があるものが、機能性月経困難症です。
初めて生理がきてから2~3年経ったタイミングや、10~20代の比較的若い年代に起こりやすいという特徴があります。
生理の初日~2日目に症状が強く出るものの、1日程度で軽減することが多いです。

月経困難症になりやすい人の特徴は

月経困難症でツライ思いをする人は、生理時に産生されるプロスタグランジンの量が多いという報告があります。
「主な症状」でもご説明したように、プロスタグランジンは不要になった子宮内膜を体外に押し出すために必要な物質で、生理の際には重要な役割を果たします。
一方で、その量が多すぎると子宮の収縮が強くなりすぎたり、プロスタグランジンやプロスタグランジンが代謝されてつくられた物質が血液にのって全身に巡り、他の部位の痛みや吐き気などを引き起こすことがあります。
しかし、プロスタグランジンの産生量をセルフケアでコントロールする方法は今のところ見つかっていません。
そのため、薬などを適切に使ってプロスタグランジンの影響を抑え、痛みを和らげる必要があります。

月経困難症は病気ではない?

なかには「月経困難症と言っても、ひどい生理痛でしょ?」と軽く見てしまう人がいるかもしれませんが、これまでご説明した月経困難症は、正式な病気です。治療の対象ですので、ガマンせずに婦人科を受診しましょう。

月経困難症で産婦人科を受診する女性

月経困難症の診断方法

ツライ生理痛を訴えて婦人科を受診した場合、まず問診をして発症した時期、痛みが起こりやすいタイミングや痛みの持続期間などを確認します。
その後、内診、エコー検査、必要に応じてMRI(磁気共鳴画像)検査や血液検査などをして、ほかの病気が見つからない場合、月経困難症と診断されます。さらに「器質性」か「機能性」かについても判断し、適切な治療を行います。
生理時にひどい痛みがあるときには放っておいたり、自己判断をしたりせず、婦人科を受診しましょう。

月経困難症への対処法は?

月経困難症の治療法や有効とされるセルフケアなど、主な対処法をご紹介します。

処方薬を使う

医療機関で処方される薬のうち、月経困難症の治療につながるものをご紹介します。

鎮痛薬、鎮痙薬

月経困難症の原因にはプロスタグランジンの関わりが大きいことから、子宮内膜でのプロスタグランジン合成を妨げる非ステロイド系の鎮痛薬が有効です。痛みを我慢し続けてから使うと効果が出るまでに時間がかかるので、痛みを感じたらすぐに使うことが大切です。
また、子宮の強い収縮には、鎮痙薬が有効なこともあります。鎮痙薬とは、平滑筋(子宮などの内臓や血管の壁にある筋肉)の収縮を抑え、痛みを和らげる薬です。

ピル、避妊リング

避妊薬のイメージが強いピルですが、子宮内膜症や月経困難症などの治療にも使われます。
低用量ピルの服用によって子宮内膜が厚くなりにくくなるため、子宮を収縮させるプロスタグランジンの産生を抑えることにつながり、月経困難症の症状改善が期待できます。
そのほか、一般的に「避妊リング」と呼ばれる、黄体ホルモンを放出する薬剤を子宮内に装着するレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)も有効です。

漢方薬

体質に合わせて漢方薬治療を行うことがあります。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などの漢方薬の中から、医師が適したものを選択して処方します。

原因となっている病気を治療する

器質性月経困難症の場合は、原因となっている子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気を治療することが、月経困難症の症状の改善につながります。
鎮痛薬により痛みを和らげる治療と並行して、病気の治療を行います。

市販薬を利用する

月経困難症は医療機関での治療が勧められますが、受診までの間などに市販薬を利用するのも有効です。
用法・用量を守って服用することで、痛みなどの症状を和らげることができます。ドラッグストアなどで販売されている鎮痛薬でOKです。
薬の種類によって痛みへのアプローチ方法が異なるので、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
ただし、長期間の連続使用は、胃腸や腎臓を傷めたりすることがあるので注意しましょう。

月経困難症に有効とされるセルフケアを実践する

月経困難症を直接治療するわけではありませんが、セルフケアのなかには症状の緩和につながるものもあります。
例えば、生理痛がツライときに下腹部を温めると、痛みが和らぐことがあります。
また、偏った食生活や睡眠不足など生活習慣の乱れがホルモンの分泌に影響を与え、月経困難症を引き起こすきっかけになっている場合もあります。バランスのよい食事をとる、生活リズムを整えるなど、日々の体調管理も大切です。

月経困難症に対してセルフケアをする女性

生理中のツライ症状はガマンせずに治療しよう

月経困難症の症状を引き起こすきっかけになっているのは、生理のときに産生されるプロスタグランジンという物質です。
プロスタグランジンの分泌が過剰になることで、日常生活に支障をきたすほどの痛みなどが生じることがあります。生理中にツライ症状があるときは、ガマンせずに治療をしましょう。
医療機関を受診することは大切ですが、受診できない場合などには市販薬を用法・用量を守って使用しましょう。
月経困難症を正しく理解して、生理中でも快適な日々を過ごしましょう。

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