知っているようで知らない下痢のお話~下痢が続くとき~
下痢のメカニズム
下痢といえば、おなかのトラブルのなかでもつらい症状のひとつ。下痢が続くと日常生活に差し支えたり、体力を消耗し、脱水症状や栄養失調を引き起こしたりすることもあります。また、下痢が起こったときに、原因に合った対処をしないと症状が悪化し、生活の質(QOL)が低下することもあります。腸と便のこと、下痢のときの状態を知っておきましょう。
うんちの種類
下痢とは、便に含まれる水分が多く、液状に近いまま排出されることをいいます。便はほとんどが水分でできているため、便の状態は水分量が大きく関係しています。硬さが理想的とされるバナナ状の「固形便(こけいべん)」でも、その70~80%が水分です。これが70%以下になると便は硬くなり、便秘を起こしやすくなります。逆に、便に含まれる水分量が80~90%になると、形のない泥のような「泥状便(でいじょうべん)」となり、水分量が90%以上になると、水のような「水様便(すいようべん)」となります。このように10~20%の水分量の変化でも、その状態が変化するのです。
下痢とは、泥状便や水様便といった液状の便を、ひんぱんに排出する状態です。一般的には、食べたものが十分に消化されなかった場合や、食あたりをしたときなどに起こり、便の形状が変化するとともに便の回数も増えます。
腸と排便のしくみ
私たちが食べたものは、口から食道を通って胃に入り、胃液と混ざると、溶かされてどろどろの状態になり、腸へと送られます。
腸は大きく、小腸、大腸に分かれており、主に食べ物の消化と栄養分の吸収を行っているのが小腸です。 大腸では、液状の内容物からだんだん水分が吸収されて、固形の便が形成されます。また、大腸にはたくさんの腸内細菌がいて、食物繊維など消化されなかったものを分解します。こうして残りかすとなったものが、ぜん動運動によって、最終的に便として排出されます。
腸の働きと下痢との関係
大腸には、3つの働きがあります。これらの働きが何らかの原因で、通常より低下したり、あるいは必要以上に高まったりすることによって、下痢や便秘といった症状が起こるのです。
1つめの働きは、「ぜん動運動」。これは、腸が伸び縮みをくり返すことで、内容物を先に送っていく運動のこと。ぜん動運動が活発になり過ぎると、便が腸内にとどまる時間が短くなり、十分に水分が吸収されないまま排出されるため、下痢になります。また、逆にぜん動運動が低下すると、腸内に便がとどまる時間が長くなるため、便の水分が吸収され過ぎてしまい、便が硬くなって便秘になりやすくなります。
2つめの働きは、「便からの水分吸収」。腸で便の水分を吸収する働きが落ちると、便の水分を十分に吸収できず、下痢になります。また、逆に腸での水分吸収が高まると、便が硬くなって便秘になってしまいます。
3つめの働きは、「腸からの水分分泌」。腸では、腸液をはじめ、さまざまな水分が分泌されています。この水分が過剰になると、水分吸収が間に合わず下痢になります。また、逆に腸からの水分分泌が低下すると、結果的に便の水分が少なくなり硬くなるので便秘になります。
働きが高まる
下痢
十分に水分を吸収できず、便が緩くなる
働きが落ちる
便秘
水分が吸収され過ぎて、便が硬くなる
働きが落ちる
下痢
十分に水分を吸収できず、便が緩くなる
働きが高まる
便秘
水分が吸収され過ぎて、便が硬くなる
働きが高まる
下痢
水分量が多く、便が緩くなる
働きが落ちる
便秘
水分量が少なく、便が硬くなる
【参考】
『病気がみえるvol.1消化器』(医療情報科学研究所/メディックメディア)
『目で見るからだのメカニズム』(堺 章著/医学書院)
『胃腸ケア・ガイドブック』(興和新薬)