更新日:2024.07.18

生理と貧血の関係とは?生理中の貧血症状や原因、緩和方法をご紹介

生理中は疲れやすさや、めまい、立ちくらみ、ふらつきなどの症状が出る女性も少なくありません。
これらの症状は出血により引き起こされる「鉄欠乏性貧血」によるものである可能性があります。
そこで今回は、生理中に貧血になってしまう原因や脳貧血との違い、
予防法や緩和方法についてわかりやすく解説します。

監 修

早田 輝子先生

早田 輝子先生

医学博士。女性ライフクリニック新宿院長。
クリニックでは女性の健康とライフデザインをサポート。患者様に合った最適な方法を提案している。日本医師会認定健康スポーツ医・循環器専門医・国際協力NGOジョイセフフレンドとしても活躍。1男1女の母。

生理と貧血の関係

生理中に貧血の症状が出る人は少なくありません。
貧血とは、血液中の赤血球や血色素(ヘモグロビン)の量が基準値を下回っている状態のことです。一般的には立ちくらみやふらつきのことを「貧血」と表現することがありますが、医学的にはこのように定義されています。

貧血の主な症状は疲れやすい、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、顔面蒼白、頭痛などです。貧血の状態が長く続き慢性化すると、目立った症状が見られないことも多々あります。しかし、徐々に心臓や脳に負荷がかかり、心筋梗塞や記憶力の低下などを引き起こすおそれがあるため、貧血を放っておくのは危険です。

「鉄欠乏性貧血」が生理中の女性に多い理由

貧血にはいくつかの種類がありますが、生理中の女性は「鉄欠乏性貧血」になりやすいといわれています。
鉄欠乏性貧血とは、赤血球の材料である鉄分の不足が原因で起きる貧血です。主な症状は、動悸、息切れ、立ちくらみで、正式な診断をするには血液検査が必要です。血液検査の結果、ヘモグロビンの量と、血清鉄やフェリチン(貯蔵鉄)の値が基準値を下回っていると、鉄欠乏性貧血と診断されます。

10~40代の女性の場合は、生理によって定期的に経血が排出されることなどが影響し、貧血になることが多いです。経血量が多い人ほど、失われる鉄分が増えるため、鉄欠乏性貧血になりやすくなります。

なかには背後に子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科の病気や、胃潰瘍、胃がん、大腸がんが隠れているケースもあります。
治療には、まず貧血の原因である病気の治療を優先します。そして同時に鉄分を補充するために鉄剤を服用したり、注射を行ったりします。

自覚症状と実際の貧血の程度が一致しないことも

鉄欠乏性貧血が徐々に進行すると、自覚症状を感じにくくなります。ずっとなんとなくだるいくらいに思っていたら、重度の貧血だったというケースもあります。
定期的な健診も大切ですし、体調不良を感じたら一度は受診、採血することをおすすめします。

こんな「貧血」にも要注意

貧血の発症には至っていないものの、鉄欠乏の状態が続いている「潜在性鉄欠乏」にも注意が必要です。潜在性鉄欠乏は「かくれ貧血」ともよばれています。
体内のフェリチン(貯蔵鉄)が減少することで、だるさやめまいといった不調をもたらすのが、潜在性鉄欠乏の特徴です。
女性は生理によって定期的に鉄分を失っているため、潜在性鉄欠乏状態の人が多いといわれています。

また、「起立性低血圧症」にも要注意です。これは、急に立ち上がったときに血圧が低下して、脳の血流が悪くなり、めまい、ふらつき、目の前が暗くなるといった症状が出るもので、なかには意識が遠のき、失神することもあります。貧血のように血液に異常があるわけではないのですが、症状が似ているため、通称「脳貧血」とよばれ、貧血と混同されることがあります。

生理中は下腹部に血液が集中しやすいといわれています。また、出血により体内の血液の量も減る傾向があります。それらの影響により通常時よりも体内をめぐる血液が少なくなり、脳貧血になりやすい状況にあるといえます。生理中によくこのような症状が出る場合は、脳貧血なのか鉄欠乏性貧血なのか血液検査で確認することをおすすめします。

起立性低血圧を防ぐには

脳に血流を送るには全身の血流を良く巡らせることが大切です。緊張状態は血の巡りを鈍くさせるため良くありません。
血流を改善し、起立性低血圧を防ぐために、日ごろから以下の点を意識して実践してみましょう。

  • 血流を戻すポンプである下肢(脚)を鍛える。
  • 肩・首まわりをほぐし、正しい姿勢を保つ。

貧血以外にも生理中はこんな症状も…

貧血以外にも生理中はこんな症状も…

生理のときには、貧血の他にもさまざまな症状が現れます。
例えば、腹痛(下腹部痛)。生理のときには痛みのもととなるプロスタグランジンという物質が産生され、ズキズキした痛みが生じたり、子宮や腸管が過度に収縮することで、ぎゅ~っとねじれるような痛みが出たりします。
子宮が強く収縮する影響が腰側にも及ぶと、腰痛に悩むこともあるでしょう。

また、プロスタグランジンやその関連物質が血液にのって全身を巡ることで、痛みが子宮から離れた頭にも現れて頭痛が起きたり、吐き気や下痢といった症状も生じることがあります。
カラダの症状だけでなく、イライラしたりネガティブになったりなど、ココロのバランスが崩れることもあります。

生理中の貧血(鉄欠乏性貧血)を
緩和するために摂りたい栄養素

鉄分

鉄欠乏性貧血の予防には、日々失われる鉄分を食事からしっかり摂ることが必要です。
カラダの代謝によって、成人男性では一日あたり約1mg、女性では約0.8mgの鉄が毎日失われています。加えて生理中は、一日あたり約0.5mgの鉄が失われるといわれています。
食事から摂取した鉄は、食べた量の約15%がカラダに吸収されることがわかっています。そのため、日本人成人(20~49歳)の鉄の推奨摂取量は一日あたり男性で7.5mg、女性は10.5mg(無月経や閉経後の女性は6.5mg)となります。

ヘム鉄と非ヘム鉄の違い

食品中に含まれる鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。
この2つは体内での吸収率が大きく違い、ヘム鉄のほうが非ヘム鉄よりも吸収率が高い傾向があります。
ヘム鉄は主にレバーなどの動物性食品に、非ヘム鉄は小松菜などの植物性食品に含まれます。

他にもこんな栄養素を意識して摂ろう

他にもこんな栄養素を意識して摂ろう

鉄分の他にも以下のような栄養素を意識して摂取すると、貧血の予防に役立ちます。

タンパク質

赤血球に含まれる血色素であるヘモグロビンなどの材料になります。ヘモグロビンは、鉄(ヘム)とタンパク質(グロビン)が結びついたものなので、貧血を防ぐには鉄だけでなくタンパク質の摂取も重要です。牛のヒレステーキ、豚のスモークレバーやあさりのつくだ煮などは鉄分、タンパク質ともに多く含んでいるのでおすすめです。

ビタミンC

鉄分の吸収を高める役割があります。ビタミンCを多く含む緑黄色野菜、果物などを積極的に摂取しましょう。

葉酸

赤血球が作られる際には葉酸が必要になります。通常の食事で不足することは少ないですが、特に成長期には葉酸が大量に消費されるので、葉酸不足による巨赤芽球性貧血(悪性貧血)が起こりやすくなることがあります。思春期以降の健康管理において葉酸は不可欠な栄養素です。葉酸は、茹でたほうれん草やアスパラガスの油炒め、納豆などに多く含まれています。

ビタミンB12

葉酸と同じく、赤血球が作られる際に必要とされる栄養素です。不足すると葉酸と同様、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)を引き起こすことがあります。ビタミンB12を多く含むしじみの水煮、ししゃもの生干し、プロセスチーズなどを積極的に摂取していきましょう。

※ 巨赤芽球性貧血…骨髄内で赤血球の元となる赤芽球が正常に成長できず、赤血球が正しく作られないことで貧血になる病気です。主な原因は、赤芽球の成長を促すために必要な葉酸やビタミンB12の欠乏といわれています。

生理中の貧血症状は病気のサインの可能性も

過多月経

生理の出血量が多くてふらついたりする場合は「過多月経」の可能性が考えられます。過多月経とは、生理中の出血量が多いことをいいます。
昼間でも夜用のナプキンを使う必要がある場合や、1回の生理期間を通した出血量が150ml(正常値は20~140ml)を超え、凝血塊(ぎょうけっかい)とよばれるレバーのような塊がたくさんあると過多月経の可能性があります。

経血の量を正確に計るのは困難なため、過多月経の診断は、主に凝血塊の有無やナプキンの使用量、交換の頻度と鉄欠乏性貧血の有無によって行われています。

過多月経は経血の量が多いため、赤血球に含まれる鉄分が多く体外に排出される傾向があります。その結果、体内に鉄分が不足し、鉄欠乏性貧血を招きやすいことから、鉄欠乏性貧血は過多月経の特徴的な症状の一つと考えられています。

過多月経の原因として考えられる婦人科疾患

過多月経は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症といった子宮の異常や病気が原因となることがあります。

子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍(こぶ)のこと。無症状の場合、子宮筋腫は発育が遅く悪性化もしないため、経過観察でよい場合も多いですが、子宮筋腫のある場所によっては経血の量が増えたり、生理痛が強くなったりすることがあります。

子宮内膜症

子宮内膜症は本来、子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、卵巣や卵管など子宮とは異なる場所に発生してしまう病気です。20~30代の女性に多く見られます。生理痛をひどくする他に、排便痛、性交痛などが生じたり、不妊の原因になることもあります。

子宮腺筋症

子宮の筋肉の中に、子宮内膜の組織が入り込んでしまう病気が子宮腺筋症です。子宮内膜症と同じく、生理痛が強くなったり、過多月経を引き起こしたりします。

その他、卵巣機能の低下などの機能的な不調が過多月経の原因になっている場合もあります。
上記のような婦人科系の異常や病気が原因で経血の量が多くなっている場合には、それらを治療することで過多月経を改善することができます。

バランスのよい食事を心がけ、貧血を予防しよう

鉄欠乏性貧血の予防には、日々失われる鉄分を食事からしっかり摂ることが大切です。鉄を多く含む食材を積極的に摂りましょう。

同時に鉄の吸収を高めたり、赤血球をつくるのに役立ったりするタンパク質、ビタミンC、葉酸、ビタミンB12といった栄養素を摂ることも重要です。これらを意識したバランスのよい食事を心がけ、貧血を予防していきましょう。

なお、鉄欠乏性貧血は、過多月経の人に起こりやすいことがわかっています。過多月経の場合、排出される経血の量が多いため、生理痛が重い人もいるでしょう。
痛みが出た時にはガマンせず鎮痛薬をのんで痛みを和らげましょう。できれば痛みが出始めたタイミングで早めに、用法・用量を守って服用してください。

経血の量が多く、疲れやすさやめまいといった貧血の症状が出やすい場合は、一度婦人科を受診し、相談してみましょう。ツライ症状の改善だけでなく、この先さまざまな不安を相談できる、かかりつけの婦人科が見つかるかもしれません。

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