2024.10.01

【医師監修】手指が乾燥する…ガサガサの原因と対策、注意したい習慣についても解説

【医師監修】手指が乾燥する…ガサガサの原因と対策、注意したい習慣についても解説

手や指が乾燥し、ガサガサが気になる、乾燥した部分にひび割れができて痛いなど、
手や指の乾燥に悩む方も多いでしょう。
「乾燥」と聞くと空気の乾いた寒い時期の悩みと考えがちですが、
手や指のガサガサの原因は外気の乾燥だけではありません。
刺激の強い洗剤を使うなどして角質層のバリア機能が低下すると、季節とは無関係に手荒れに悩まされがち。
手や指が乾燥したとき、どのように対処していけばいいのかを皮膚科専門の医師に聞きました。

監修
横井彩先生

日本橋いろどり皮ふ科
クリニック
院長
横井 彩 先生

そもそも手指がガサガサに乾燥する原因は?
症状についても知ろう

手や指が乾燥する原因

皮膚には、水分を保持し、さまざまな刺激から皮膚を守るバリア機能の役割を担う「角質層」があります。
角質層には油分とともに一定の水分が含まれています。角質層に含まれる水分量は周囲の環境によって変化します。例えば、湿度が高くムシムシとした場所では水分量が多くなりますが、乾燥した場所では皮膚の表面も乾燥し、ガサガサした状態になりがちです。
また、角質層のバリア機能が低下することも皮膚を乾燥させる一因になっています。角質層は、重なって層になった角質細胞と、その隙間を埋める細胞間脂質でできています。健康な皮膚では、細胞間脂質が角質細胞の隙間をぴっちりと埋めているため、水分が出て行きにくくなっています。
しかし、何らかの原因でバリア機能が低下すると、角質細胞の隙間から水分が蒸発しやすくなり、皮膚が乾燥しやすくなります。

正常な皮膚(潤いが保たれている状態)
正常な皮膚
(潤いが保たれている状態)[イメージ図]
乾燥しやすい皮膚(バリア機能が低下し水分が蒸発している状態)
乾燥しやすい皮膚
(バリア機能が低下し
水分が蒸発している状態)[イメージ図]

手や指先はさまざまな場所や物に触れる機会が多いため、体の中では比較的角質層が厚くなっています。しかし、それ以上に刺激が多いとバリア機能が低下しやすく、乾燥が進みやすくなると考えられます。

乾燥によって起こる手や指の症状

皮膚表面が乾燥すると、外部からの刺激を受けやすくなり、手荒れなどの皮膚トラブルが生じます。手はさまざまな場所や物に触れるため、刺激を受けやすく、表皮のガサつきなどの症状が生じやすい環境にあります。乾燥がきっかけで手や指には次のような症状があらわれます。

手荒れ(進行性指掌角皮症)

角質層のバリア機能が低下すると、皮膚の表面が乾燥し、手がガサガサした状態になります。この状態の手は、乾燥した角質層の隙間から異物などが入り込み、手荒れを起こしやすい「手荒れ予備軍」といえます。
角質層のバリア機能の低下がさらに進み、乾燥状態が悪化して、皮むけ、かゆみ、炎症といった症状が現れると、進行性指掌角皮症(しんこうせいししょうかくひしょう)、いわゆる手荒れの状態になります。手のなかでも、利き手の親指、人差し指、中指が特に手荒れが起こりやすい部位といわれています。
手荒れが進むと、痛みやかゆみを伴うひび・あかぎれにつながることもあります。

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手指がガサガサに乾燥しやすい人の特徴や傾向は?

手や指が乾燥し、ガサガサするのは、外部の環境や角質層のバリア機能の低下が主に影響しています。皮膚が乾燥しやすい環境で長時間過ごしていたり、皮膚に刺激を受ける機会が多かったりすると、バリア機能が低下して乾燥しやすくなります。以下に一例をまとめました。

皮膚が乾燥しやすい人の特徴の例

  • ・手洗いの回数が多い
  • ・手指を硬いブラシなどでゴシゴシ洗う
  • ・あまり保湿をしない
  • ・入浴時間が長い
  • ・エアコンの効いた場所で長時間過ごす
  • ・アトピー性皮膚炎など元々乾燥しやすい肌質の人

手洗いが多いと皮膚は乾燥しがちです。そのまま保湿をせずにいるとさらに手荒れや肌荒れになることも。入浴をすると皮膚の表面から水分が吸収されて、一見潤ったように見えます。しかし、入浴後は表皮や角質層の油分、水分を保持する細胞間脂質などが流れ出し、入浴前よりも乾燥が進んでしまいます。夏や冬にはエアコンの使用が欠かせませんが、エアコンの効いた部屋は湿度が低く、長くいると皮膚は乾燥します。
また、アトピー性皮膚炎の方は元々皮膚が乾燥してバリア機能が低下しがちなため、ちょっとした刺激にも反応しやすい状態といえます。

手や指が刺激を受けやすい環境の例

  • ・水仕事をする機会が多い
  • ・仕事で手が物質に触れることが多い
  • ・キーボードを頻繁に使う
  • ・紙を扱う機会が多い

水仕事が多いのはもちろん、薬剤や食品が手に触れる機会が多い美容師や理容師、調理師の方は手が刺激を受けやすい傾向があります。キーボードを打つなど指先を使う機会が多い人も、繰り返す刺激によって角質層のバリア機能が低下しやすく、手の乾燥や手荒れが起こりやすいといわれています。

手指がガサガサ…乾燥がひどいときの対策

ハンドクリームなどの保湿剤を使う

手や指がガサガサに乾燥しているときは、ハンドクリームなどの保湿剤を使って角質層を覆い、水分が逃げないようにするのも一つの方法です。保湿剤を選ぶ際や使うときには以下のポイントも参考にしてください。

保湿剤を選ぶときのポイント

色や香り、パッケージのデザインなど、市販の保湿剤を選ぶ際のポイントはいくつかありますが、まずは成分に着目しましょう。
保湿剤に使われる主な成分にはワセリン、尿素、セラミド、ヘパリン類似物質などがあります。ワセリンは皮膚の表面を保護し、水分の蒸発を防ぐのが主な働きです。角層を柔らかくする作用もありますが、べたつくため、さまざまな場所に触れる手や指にはあまり適さないかもしれません。尿素、セラミド、ヘパリン類似物質は角質層の水分を保持する働きを持った成分です。例えば尿素は、高い水分保持作用に加えて角質溶解剥離作用(硬くなった角質をやわらかくし、古い角質を剥がす)があるので、みずみずしいなめらかな皮膚へ導きます。

尿素が肌の角質層まで浸透し、潤いのある肌へ

保湿剤を使うときのポイント

保湿剤にはローションタイプや軟膏タイプ、クリームタイプなど、いくつかの種類があり、皮膚の乾燥度や使う部位などによって使い分けるのがおすすめです。
ローションタイプは伸びがよく、全身に塗りやすいのが特徴。清潔にした手に保湿ローションをとり、手のひらを使って保湿したい部位に、優しく丁寧に、まんべんなく伸ばしましょう。
軟膏タイプは保湿性に優れ、刺激性が少ないという特徴がありますが、べたつきがあり、テカリが出やすいです。寒い時期は固くなるので、手のひらで軟らかくしてから塗るとよいでしょう。
クリームタイプは軟膏と比べて、べたつかず、塗り心地がよいのが特徴です。塗ったところにティッシュをのせても落ちない、または少々テカるぐらいの状態が目安です。より高い保湿効果を求めようと、一度にたくさんの量を使いたくなるかもしれませんが、製品の用法・用量を守って使いましょう。
なお、どのタイプにも共通しているのは、皮膚に水分が含まれた状態で使うこと。入浴直後や手洗い後の皮膚がしっとりしているときに使いましょう。また、こまめに塗ることも大切です。

保湿剤を使うときのポイント

手袋や絆創膏などで手や指を保護する

乾燥し、バリア機能が低下した状態で水仕事をしたり、手や指に刺激を受けたりすると手荒れが引き起こされることがあります。
水仕事をするときにはビニールやゴムの手袋をする、ひび割れには専用の絆創膏を貼る、外出時に手袋をするなどの対策をして、保護することも大切です。
ただし、水を通さない素材の手袋をする場合、素材による蒸れやアレルギーが生じて炎症を引き起こすこともあります。その場合は先に綿の手袋を着けて、その上からビニールやゴムの手袋をするのもおすすめです。

市販薬を活用する

保湿剤をしばらく使っても改善が見られない場合は、症状を抑え、皮膚の修復を早める市販の軟膏やクリーム(OTC医薬品)の活用も考えましょう。
選び方が難しいときはドラッグストアの薬剤師などに相談しましょう。

手指がガサガサに乾燥しているときに注意したい習慣

熱いお湯を使う

お湯を使うと表皮や角質層の油分、水分を保持する細胞間脂質などが流れ出して乾燥が進みます。手や指の乾燥が気になるときには、お湯の温度にも気を付けましょう。ぬるいと感じる程度の温度にして、熱いと感じるお湯を使うのは避けましょう。

強い力でゴシゴシと洗う

強い力でゴシゴシ洗いをすると、必要以上に角質層がはがれ落ち、摩擦による乾燥を招いてしまう可能性があります。皮膚に負担をかけすぎないためにも、硬いブラシなどでゴシゴシ洗うのは避け、手洗い後は柔らかいタオルでやさしく水気をふきとるよう意識するとよいでしょう。

刺激の強い洗浄剤を使う

洗浄力が高いハンドソープやボディソープは、必要以上に皮脂や保湿成分を洗い流してしまい、乾燥につながってしまいます。なるべく皮膚への負担が少ないボディソープを選びましょう。セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分を含んだものや、弱酸性のものを選ぶのがおすすめです。

手洗い後に手をふかない

手を洗った後、水で濡れたままにしておくと、表面についた水分が気化していく際に皮膚の水分も一緒に奪われてしまいます。乾燥を進める要因になるといわれているため、手洗いや水仕事の後は水分をすぐにふきとり、乾燥を防ぎましょう。
また、手をふくときにはタオルやハンカチでゴシゴシこするようにせず、水分を吸い込ませるようにやさしく水滴をふきとりましょう。

手指の乾燥、ガサガサなどの症状が改善しない場合は、早めに皮膚科を受診して

手の乾燥は「そのうち良くなるだろう」と軽視される傾向がありますが、放置していると皮膚が必要以上に厚くなってしまったり、ひびやあかぎれができて痛みを感じたり、日常生活の質を下げることにつながります。
セルフケアを続けても、手や指が乾燥してガサガサする症状が改善しない場合は、皮膚科を受診し、適切な治療をしましょう。

参考文献
安田利顕, 漆畑修「改定10版 美容のヒフ科学」(2021)

日本皮膚科学会「手湿疹診療ガイドライン」

「病気がみえる vol.14 皮膚科」

独立行政法人環境再生保全機構 ERCA
「すこやかライフ」43号(No.28-1)

JCHO東京高輪病院「保湿剤の種類と使い方について」

東京都立北療育医療センター
「保湿剤(軟膏・クリーム、ローション)の使い方」
お肌の悩みラボ
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