2023.04.24

さめ肌(鮫肌)の原因と改善法とは?腕やおしり太ももの急なザラつきを治す方法を医師が解説

さめ肌(鮫肌)の原因と改善法とは?腕やおしり太ももの急なザラつきを治す方法を医師が解説

さめ肌(鮫肌)とは、一般的に、スネや二の腕などの
ガサガサ・ザラザラした皮膚の状態を指す時に使われています。
肌を出す季節になると、さめ肌が気になって、好きな洋服を着られなかったり、
肌を見られるのを恥ずかしいと感じたりする方も多いでしょう。
本記事では、さめ肌の原因や悪化する要因、
症状の改善の方法について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

監修
横井彩先生

日本橋いろどり皮ふ科クリニック
院長
横井 彩 先生

さめ肌(鮫肌)の特徴と状態

さめ肌とは、鮫の皮のように肌のガサつきやザラつきが感じられる状態を指す言葉です。さめ肌は、病気や医学用語ではなく俗語で、いくつかの肌の症状をまとめて指している言葉といえるでしょう。
さめ肌は従来、スネなどの皮膚がウロコのようにガサガサする状態(軽症の尋常性魚鱗癬:じんじょうせいぎょりんせん)を指していましたが、近年では、毛穴部分に粟粒のような小さな発疹が多数みられる状態(毛孔性苔癬:もうこうせいたいせん、とり肌などとも呼ばれる)も含めているようです。

軽症の尋常性魚鱗癬のイメージ
(軽症の尋常性魚鱗癬のイメージ)
毛孔性苔癬のイメージ
(毛孔性苔癬のイメージ)

2021年5月に興和株式会社が実施したWEB定量調査によると、20代~40代女性(n=17,556)のうち、さめ肌に悩んだ経験があるという方は、約4人に1人とされているため、さめ肌に悩む女性は多いといえるでしょう。

さめ肌(鮫肌)が現れやすい部位

尋常性魚鱗癬は、スネなど乾燥しがちな部位に見られます。また、毛孔性苔癬は、二の腕や肩、お尻、太ももに多く見られ、痛みやかゆみはほぼありません。
二の腕や肩にポツポツとした毛穴の隆起があると、おしゃれを楽しみたい季節に服装を制限されるため、さめ肌をなくしたいと思う方もいるでしょう。

さめ肌(鮫肌)の悪化要因

さめ肌と呼ばれる尋常性魚鱗癬や毛孔性苔癬は、どちらも遺伝的な要素が大きい疾患です。
そのため、スキンケアの間違いや、毛穴のつまり、季節の変化などの影響によって、さめ肌が起きてしまうわけではないということ知っておきましょう。
以下では、さめ肌を引き起こす原因ではないものの、さめ肌の症状を悪化させる可能性がある要因について解説します。

ターンオーバーの乱れ

古い角質が蓄積されている
古い角質が蓄積されている(イメージ図)

さめ肌が悪化してしまう要因のひとつに、ターンオーバーの乱れがあります。
そもそもターンオーバーの乱れとは、通常であれば、古い細胞が剥がれおちて、肌の中で生まれた新しい細胞へ入れ替わるところを、何らかの影響により、細胞の入れ替わるのが遅くなってしまう状態のことです。
ターンオーバーが妨げられてしまう原因には、ストレス、加齢、栄養不足、睡眠不足などがあげられます。

肌の乾燥

乾燥肌のメカニズム(イメージ図)
乾燥肌のメカニズム(イメージ図)

さめ肌の悪化要因のひとつに、肌の乾燥が考えられます。
肌には、水分を保持し、あらゆる刺激から肌を守るバリア機能の役割を担う「角質層」がありますが、生活習慣や環境などによって、肌の水分量の維持が難しくなると角質層が部分的に厚くなり、ゴワゴワとした肌触りになっていきます。
肌の乾燥によるさめ肌の悪化を改善させるには、角質の水分保持力を高めてくれる尿素などを配合したクリームや、ガサガサ肌の改善を促すトコフェロール酢酸エステルなどが配合されたクリームを使って保湿するのが大切です。

紫外線

二の腕や肩など露出する部位では、紫外線により発疹の色調が目立つことがあります。また、日焼けは皮膚の乾燥を誘導するので、紫外線対策も重要です。

さめ肌(鮫肌)に有効なセルフケア

さめ肌に効果的なセルフケアをご紹介します。なお、さめ肌は遺伝的な要因が大きい疾患であるため、あくまで症状を悪化させないための方法となります。
また、インターネットなどのメディアでは、ビタミンA・βカロテンなどの特定の栄養素の摂取が推奨されたり、睡眠や運動などの生活習慣の改善によってさめ肌が治るといった紹介がされたりすることがあります。
しかし、尋常性魚鱗癬・毛孔性苔癬は両方とも生まれつきの肌の性質であるため、食事・睡眠・運動など生活習慣の改善だけで治すことは困難です。しっかりと正しい情報について知っていきましょう。

クリームなどで肌をしっかり保湿し、乾燥を防ぐ

クリームなどで肌をしっかり保湿し、乾燥を防ぐ

さめ肌をつるつるとした美しい肌へ近づけるには、水分量と油分量を整えることが大事です。
入浴後や洗顔後に、水気を軽くとった肌の水分を逃さないように油分を含むクリームで閉じ込めましょう。
スキンケアの順番は化粧水など水分の多いものが最初で、スキンケアの最後に油分量の多いクリームを使うのがポイントとなります。
ただし身体の肌のお手入れに複数の化粧品を重ねることは毎日のスキンケアとしては現実的ではないので、水分と油分のバランスが取れた乳液やクリームなどの一品で保湿をしても良いでしょう。

日焼け止めをこまめに塗って紫外線対策をする

日焼け止めをこまめに塗って紫外線対策をする

紫外線は四季を問わず降り注いでいます。紫外線による肌へのダメージが気になる人は、年間を通した対策を行うのがおすすめです。
日焼け止めなどの、紫外線対策商品には、「SPF」や「PA」といった記載があります。「SPF」は、「UVB」という紫外線を浴びたことによる赤くなる日やけの防止効果を数値で表し、「PA」は、「UVA」という紫外線によって、短時間で皮膚が黒くなる反応の防止効果を表しています。
SPFの数値や「PA+」の数が多ければ防止力は高くなりますが、汗をかいたり拭いたりすると効果は落ちてしまいます。こまめに塗りなおすことを心がけましょう。

身体を洗う際は肌を乾燥させないように

身体を洗う際は肌を乾燥させないように

さめ肌の症状が目立たないようにするには、肌を乾燥させないことが大切です。
入浴は人肌程度のお湯を使用して、必要な皮脂まで落としすぎないようにしましょう。また、身体を洗う際には、スポンジやタオルでボディソープや石鹸をよく泡立てたたっぷりの泡で「手で撫でるように」洗うと肌に負担がかかりません。しっかりすすいだら、やさしく水分をふきとって早めの保湿ケアがポイントです。

さめ肌(鮫肌)をケアするときの注意点

さめ肌をケアするときは、身体の洗いすぎや洗うときのお湯の温度に注意が必要です。ケアをするときの注意点について解説します。

洗いすぎに注意する

さめ肌を改善させるためには、洗いすぎに注意しましょう。肌は洗いすぎると、乾燥して、肌を健康に保つ機能が低下します。
さめ肌をきれいにしたいからと、洗浄力の強いボディソープをつかったり、ナイロンタオルなどの硬い素材で肌を洗ったりするのは、おすすめできません。

お湯は熱すぎないよう注意する

さめ肌を改善し、美しい二の腕や太ももを目指すなら、お湯の温度にも注意しましょう。お風呂の温度が高すぎる場合、皮脂を必要以上に落として、肌の乾燥を招きます。

さめ肌(鮫肌)かなと思ったら医師に相談

さめ肌(鮫肌)かなと思ったら医師に相談

さめ肌は、遺伝性の肌質である「毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)」や「尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)」を指す言葉です。ていねいにスキンケアをしていてもガサガサ・ザラザラが改善しないときは、皮膚科の医師に相談してみましょう。

尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)

尋常性魚鱗癬は、生まれたときから皮膚にウロコ状の屑やフケのような皮むけが生じる遺伝性の肌質のひとつです。
尋常性魚鱗癬は、遺伝性魚鱗癬のなかでは、最も人口が多く、症状が軽いとされています。また、潜在的な患者も含めると有病率は約10%と高く、青年期以降は軽快するため、さめ肌や乾燥肌と認識し、自覚症状がない可能性もあります。

尋常性魚鱗癬の症状

尋常性魚鱗癬は肌のターンオーバーの障がいにより肌の角層が厚くなっている状態です。
生まれつき肌が乾燥して肌の角層が厚くカサカサとしているのが特徴です。ひざから足首までの前側に症状が現れることが多いです。
遺伝的な肌質なので根治療法はなく、保湿剤などによる対症療法が主流です。

毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)

毛孔性苔癬は、主に思春期以上の若い年齢で発症し、二の腕や太ももに現れる傾向があります。また、小さな子供だと頬などにも同様の症状が見られることがあります。
毛孔性苔癬は、毛穴が隆起したように見えたり、肌が茶色っぽく見えたりするため、見た目を気にされる方もいます。毛孔性苔癬は遺伝性の要因が大きいため完治が難しいとされていますが、少しでも症状を改善したい場合は、尿素などを配合したクリームを使用します。また、レーザーなど美容治療も行われることがあります。

毛孔性苔癬の症状

毛孔性苔癬は、1~3mmの毛穴が隆起したような症状が、二の腕や太ももの外側、肩、背中、おしりなどに現れます。乾燥しており、さわるとザラっとした感触が特徴です。
一般的に毛孔性苔癬ができた肌は、かゆみを伴わないことがほとんどですが、まれにかゆみが生じる場合もあります。年齢を重ねると症状がおさまる人がいますが、消えずに残る人もいます。

さめ肌(鮫肌)について知り、つるつる肌を目指そう

さめ肌は、スネなどの皮膚がウロコのようにガサガサする状態が特徴の軽度の尋常性魚鱗癬や、毛穴部分に粟粒のような小さな発疹が多数みられる毛孔性苔癬を指しますが、どちらも遺伝的な要因が大きい疾患です。
そのため、スキンケア方法の間違いや、食事や運動・睡眠などの生活習慣が悪いことによって引き起こされているわけではないということを知っておきましょう。
さめ肌の基本的なケアとしては、保湿や乾燥の予防が大切です。またセルフケアで肌のガサガサ・ザラザラが改善しないときは、皮膚科の医師に相談するのも良いでしょう。

参考文献
公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「先天性魚鱗癬(指定難病160)」(参照2023-01-19)

日本栄養・食糧学会誌「モルモットに経口摂取させたビタミンC,L-システイン,ビタミンEの併用による色素沈着抑制効果」
第56巻 第4号 p.221-228(2003)

厚生労働省eヘルスネット「ストレスと食生活」(参照 2022-12-13)

厚生労働省「指定難病として検討する疾患(個票)」

MSDマニュアル家庭「17-皮膚の病気過敏症と炎症性皮膚疾患/毛孔性角化症」

国立研究開発法人日本医療研究開発機構「皮膚が新陳代謝しつつバリアを維持する仕組みを解明−細胞の形が解き明かす瑞々しい皮膚が保たれる秘密−」

田上八朗「皮膚のバリア、各層をめぐる炎症,炎症」
1999年 19巻 6号 p.319-330
お肌の悩みラボ
一覧を見る