【医師監修】ツライひび・あかぎれはなぜ起きる?症状と原因、セルフケアを解説
主に寒い季節に起こりやすい手のひびやあかぎれは、ちょっとしたセルフケアで予防や対策が可能です。
あかぎれの症状や原因、そして対策のポイントをご紹介します。
日本橋いろどり皮ふ科
クリニック
院長
横井 彩 先生
ひび・あかぎれとは
ひびの主な症状
「ひび」とは皮膚にできた亀裂のことです。皮膚が乾燥するなどしてかゆみが生じた際、そこをかきむしるなどしているうちに、皮膚に亀裂=ひびができることがあります。ひびができると、その部分に痛みやかゆみといった症状が生じます。特に、患部を温めた場合に生じやすいです。また、たくさんの神経が通っている真皮にまでひびが達すると、ちょっとした刺激で強い痛みを感じやすくなります。
痛みやかゆみを伴う(肌内部のイメージ図)
あかぎれの主な症状
ひび割れのように皮膚にできた亀裂が悪化し、表皮の深い層やその下にある真皮にまでおよぶと「あかぎれ」と呼ばれることがあります(俗称であり、医学用語ではありません)。乾燥などによって手足の皮膚が弾力性を失い、亀裂が入って血がにじんだり、痛みを伴ったり、ごわごわした触感の皮膚になることも多々あります。
症状が現れやすい部位
全身に生じますが、「あかぎれ」は主に手の指や手のひら、足の裏、かかとに発症した亀裂を指します。発症頻度には個人差があり、アトピー性皮膚炎のある人は手に湿疹や炎症が起こりやすく、それに伴って、ひびやあかぎれが生じやすくなります。
ひび割れ・あかぎれが起きるメカニズム
ひび割れもあかぎれも、主に皮膚表面の皮脂が失われ、皮膚のバリア機能が低下することで生じると考えられます。
皮脂には皮膚の水分を保ち、皮膚を保護する働きがあります。空気の乾燥や皮膚の洗いすぎ、加齢などによって皮脂が失われると、皮膚の表面が乾燥します。乾燥しても保湿などのケアをせず、生じたかゆみを我慢できずにかきむしると皮膚のバリア機能の低下が進みます。すると皮膚は正常な状態を保てなくなり、弾力性が失われます。その結果、皮膚がぱっくりと割れてしまい、ひび割れ・あかぎれが発症します。
手荒れやしもやけとの違い
ひび・あかぎれは手荒れの一種ですが、主に乾燥などによって皮膚に亀裂が入った状態のことを指します。一般的な手荒れは、これ以外に水疱(すいほう)やカサつき、紅斑(こうはん)と呼ばれる皮膚の赤み、かゆみなども含みます。
しもやけは正式には凍瘡(とうそう)と呼ばれ、手足の指、耳などが赤くなったり、かゆくなったりといった症状が起こります。
しもやけの原因は皮膚の炎症やバリア機能の低下ではなく、寒さによる血行障害です。寒い場所で長時間過ごした後で、患部に腫れがあり、さらに痛みがゆさといった症状を感じるという場合は、あかぎれではなく、しもやけの可能性が高いでしょう。必要に応じて皮膚科専門医を受診し、適切な対応をとりましょう。
ひび・あかぎれの原因
皮膚の乾燥
皮膚の乾燥は、ひびやあかぎれの要因です。乾燥すると皮膚のバリア機能が低下して外的刺激を受けやすくなり、かゆみや赤み、湿疹が生じやすくなります。
空気の乾燥
空気の乾燥は皮膚の乾燥にもつながります。冷房を使用する夏場、空気が乾燥しているうえに暖房も使用する冬場は特に乾燥が進みやすく、皮膚のバリア機能が低下して炎症が起きやすい状態となるため、要注意です。
加齢による汗や皮脂の分泌量の減少
加齢によって発汗量や皮脂の分泌量が減少することも、ひびやあかぎれのリスクを高める一因になることがわかっています。皮膚が刺激を受けやすい状態になっているので、この後に紹介するセルフケアを参考に、ひび・あかぎれの対策をすることをおすすめします。
皮膚への刺激
洗浄力の強い洗剤やシャンプー、アルコール消毒液などは、皮膚を守る皮脂などを減少させます。それらにふれる機会の多い医療従事者や美容師などは職業柄、ひび割れ・あかぎれが生じやすい傾向があります。
また、コロナ禍でこまめに手洗いをする習慣がついた人も多いかもしれませんが、手洗い後に保湿などのケアをせずにいると、ひび割れ・あかぎれが発症しやすくなることもあり、要注意です。
ひび割れ・あかぎれが発症してしまった時のセルフケア
市販薬の軟膏やクリームを活用
痛みやかゆみ、炎症を抑えたり、皮膚の修復を早める市販の軟膏やクリーム(OTC医薬品)を活用して、ツライ症状を抑えましょう。
ひび・あかぎれに有効とされる市販薬には、皮膚の水分を集めてみずみずしさを保ったり、皮膚を正常な状態に修復する効果をもつものがあります。症状を悪化させないよう、皮膚の潤いを保つことが大切なので、市販薬のほか、ハンドクリームや乳液などの保湿剤も役立ちます。
ビニールやゴム手袋で刺激を避ける、または絆創膏で保護する
ひび割れ・あかぎれを発症してしまった後でも、悪化させないように刺激を避けることが大切です。水仕事は可能な限り避ける、やむを得ず行う際にはビニールやゴム手袋を着けるなどして皮膚を守りましょう。患部を絆創膏で保護するのもよいでしょう。
手袋の着け方によっては症状を悪化させることもあるので、予防するポイントでご紹介する方法を参考にしてください。絆創膏は水仕事でもはがれにくいタイプもあり、ストレスなく患部を保護できます。
ひび割れ・あかぎれを予防するポイント
ハンドクリームなど保湿剤でこまめに保湿
乾燥は皮膚のバリア機能を低下させ、炎症を起こしやすくさせます。こまめな保湿は皮膚の乾燥を予防し、バリア機能の維持に役立ちます。特に水仕事の後には必ず保湿剤を手全体に塗布し、ひび割れ・あかぎれを積極的に予防しましょう。
皮膚が水で濡れた後は水気をすぐにふき取る
皮膚が水で濡れた後、そのままにしておくと、皮膚表面についた水分は気化していきます。そのときに皮膚の水分も一緒に奪われてしまい、乾燥を進める要因になるといわれています。手洗いや水仕事の後は水分をすぐにふき取り、乾燥を防ぎましょう。
手袋などで手指を保護する
皮膚にとって刺激になるものにふれるときは薄手のビニールやゴム手袋をしたり、外出時に手袋をしたりすると、皮膚の保護とひび割れ・あかぎれの予防につながります。ただし、ゴム手袋の素材や蒸れが生じることにより炎症を引き起こす場合もあり、注意が必要です。その場合は綿の手袋をつけた上からビニールやゴムなどの防水の手袋をつけると効果的です。
部屋を加湿する
ひび割れ・あかぎれを引き起こす一因となる空気の乾燥を防ぐことも大切です。冬場など乾燥する時期は特に、加湿器などを使って部屋を加湿し、空気の乾燥を防ぎましょう。
入浴習慣の見直し
入浴時のお湯の温度や洗い方などが原因で皮膚が乾燥し、炎症を引き起こすこともあります。洗いすぎない、こすりすぎないことに注意するとともに、湯船やシャワーのお湯の温度は40度程度を目安にして、皮脂の過剰な減少を防ぎましょう。
セルフケアで症状が改善しない場合は
早めに皮膚科へ
ひび割れやあかぎれは予防が可能なことや、発症してしまっても市販薬の軟膏を使ったり、セルフケアをしたりすることで改善するケースが多いため、軽視されがちな傾向にあります。しかし、長引くと皮膚の炎症が重症化して治癒が困難になることもあります。 痛みで手洗いや水仕事がつらいなどの自覚症状がある場合は我慢せず、皮膚科を受診するなどして、適切な治療を心がけましょう。