痛みの雑学

足トラブルのサイン? 
「疲れ足」の原因と解消法

Vol.6 足トラブルのサイン? 「疲れ足」の原因と解消法

スポーツやたくさん歩いたあとに足が重だるくなったり、立ち仕事や座りっぱなしで足がパンパンになったり。いつの間にか「疲れ足」が当たり前になっていませんか? その疲れ、仕方がないと放置していると、思わぬ足トラブルにつながる可能性も。そもそもなぜ、足が疲れるとむくんだり、だるくなったりするのでしょうか。

今回は、足の疲れからくる「むくみ」「だるさ」のメカニズムから足の疲労対策まで、足の専門医として日々、さまざまな足の症状を診ている、下北沢病院副院長の長﨑和仁先生に教えていただきます。

監修:長﨑和仁先生

下北沢病院 副院長 / 血管外科 
長﨑和仁先生

慶応義塾大学医学部卒業。国内の医療機関に勤務後、スタンフォード大学外科フェローとして渡米。帰国後、浜松日本赤十字病院外科部長・創傷ケアセンター勤務、さいたま市立病院血管外科医長を経て現在に至る。著書に「足の先生!足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤どうすればラクになるか教えてください。」など。

ふくらはぎは第二の心臓? 
足の大事な役割とは

足が疲れてむくんだり、だるくなったりする原因を知るために、まずは足が担っている役割を理解しておきましょう。

私たちの体内では、心臓から送り出された血液が、動脈を通って全身の細胞に酸素や栄養を届け、細胞から二酸化炭素や老廃物を回収し、静脈を通って心臓に戻ります。動脈は、心臓の力強いポンプ作用によって血液を全身すみずみまで流すことができますが、静脈は心臓の力を利用できません。とくに、体の一番下にある足に流れこんだ血液を心臓に戻すのは、重力に逆らって血液を汲み上げなければならないから大変です。

筋肉のポンプ作用

このときにポンプの役割を果たしているのが、ふくらはぎの筋肉。ふくらはぎの筋肉が伸び縮みすることによって、筋肉内の静脈が圧迫され、血液が下から上へと汲み上げられていくのです。そのため「ふくらはぎは第二の心臓」と言われ、全身の血行を促進するうえでとても重要な役割を担っています。

では、ふくらはぎの筋ポンプ機能がうまく働かなくなると、どうなるでしょうか?重力に引かれて血液が足にどんどん溜まり、やがて、血液の水分が血管の外に漏れ出します。そして漏れた水分が皮下に溜まると足がむくみ、重だるさや痛みを感じるようになります。さらに進むと、血液の逆流を防いでいる「静脈弁」が圧に耐えきれなくて壊れてしまい、血液が逆流する「下肢静脈瘤」を発症。足の痛みをはじめ、足表面の凸凹や皮膚炎、潰瘍などさまざまな症状があらわれ、ひどくなると歩行困難になることもあります。

このような足の血行不良から起きる症状は、年齢では50代以降、性別では女性に多く見られます。中高年以降に増えるのは、加齢による筋肉の衰えに加え、年を重ねるほど重力の影響を長く受けて血管も傷み、筋ポンプ機能が低下するからです。また、女性に多いのは、妊娠時に胎児でお腹の静脈が圧迫され、足の血流が滞るためです。

足が疲れると「むくみ足」「重だる足」になる原因は?

足が疲れると「むくみ足」「重だる足」になる原因は?

では、足が疲れたときに感じる「むくみ・だるさ」は、どうして起きるのでしょうか? その原因をシチュエーション別に見てみましょう。

運動後に足が重くだるい

足をハードに使うスポーツや、よく歩いた後に生じる足の疲労感は、筋肉疲労によるもの。オーバーワークによって疲労物質の乳酸が筋肉に溜まり、足がだるくなるのです。また、乳酸が溜まると筋肉の動きが鈍くなります。筋ポンプ機能が低下して血行不良となり、老廃物が排出されにくくなることも疲労を招きます。

立ち仕事で足がむくみ、だるくなる

ふくらはぎの筋肉を長時間動かさないでいることが原因です。筋ポンプが働かないので足に血液が溜まり、むくみや重だるさを感じます。また、血行不良による老廃物の蓄積も、足の疲労の一因。美容師や料理人など、立ちっぱなしの職業に多く見られます。

デスクワークで足がむくむ

これも立ち仕事と同様、ふくらはぎの筋肉を長時間動かさないために、足の血行が悪くなることが原因です。とくに、近年はコロナ禍で在宅勤務が拡大し、一日中座りっぱなしで足のむくみ・だるさを訴える人が増えています。

扁平足で足がむくむ

足裏のアーチがなくなる「扁平足」は、歩くときにふくらはぎの筋肉が動きにくく、筋ポンプがうまく機能しません。そのため、足がむくみやすくなります。

正常のアーチ/扁平足のアーチ

ハイヒールを履いた日、足がパンパンになる

ヒールの高い靴はつま先に重心がかかり、前傾姿勢になりがちです。ふくらはぎの筋肉をほとんど使わないで歩くことになるので、ハイヒールをよく履く人は足がむくみやすいのです。

ここまで見てきたように、足の疲れからくるむくみ・だるさの原因は、足の血行不良によるものがほとんど。すぐに病気になることはありませんが、「このくらい大丈夫」「我慢できる」などと放置していると、血行不良が徐々に進行し、足の静脈がふくれてこぶ状に浮き出る「下肢静脈瘤」などを発症するリスクが高まっていきます。普段から足の疲れを予防・解消し、足に疲れをためこまないことが大切です。

セルフケアで足の疲労を予防しよう!

疲れ足を予防・解消するには、とにかく、ふくらはぎのポンプ機能をしっかりと働かせることです。ぜひ、これからご紹介する足の疲労対策を生活に取り入れて、むくみやだるさを改善してくださいね。

足の疲労対策・
足を疲れないようにする予防法

まずは、足の血行を良くする生活習慣を身につけて、疲れにくい足を目指しましょう!

毎日こまめに歩く

足の血行を促すには、歩いてふくらはぎの筋肉を動かすのが一番。1日8000歩くらいを目安に、毎日できるだけ歩くように意識しましょう。大きめの歩幅で早めに歩くと、筋ポンプ機能がアップします。

立ちっぱなし、座りっぱなしを避ける

立ち仕事やデスクワークの合間に、ふくらはぎの筋肉を伸び縮みさせる運動を取り入れましょう。20~30分おきにできればベストですが、気づいたときに行うだけでもOK。

  • つま先を床につけたまま、かかとを上げ下げする
  • かかとを床につけたまま、つま先を上げ下げする

着圧ソックスや弾性ストッキングを履く

ふくらはぎの筋肉を外から圧迫し、足の静脈血を下から上へ押し上げるサポートをしてくれる着圧ソックスや弾性ストッキング。スポーツ時や立ち仕事のときに着用することで、運動や仕事後の足の疲労を抑制する効果があります。

着圧ソックスや弾性ストッキングを履く

運動前は水分補給

スポーツをして発汗し、脱水状態になると筋肉がこわばり、足がつったり、血流が悪くなって疲労感が増したりします。運動前に水分補給し、運動後のダメージを抑えましょう。

足の疲労対策・足が疲れたときの対処法

足の疲れはその日のうちにストレッチやマッサージでケアをして、「むくみ」「だるさ」をためないようにしましょう。

運動後はふくらはぎをストレッチ

足を酷使すると、ふくらはぎの筋肉がこわばって血流が滞りがち。筋肉を柔らかくほぐし、血流を良くしましょう。乳酸の排出がスムーズになり、酸素と栄養も取り入れられ、疲労解消になります。

運動後はふくらはぎをストレッチ
  • 両足を前後に開き、後ろ足のアキレス腱を伸ばす。足を替えて同様に行う。

湯船につかる

温まることで足の血行が促進され、水圧によるふくらはぎのマッサージ効果も期待できます。

フットマッサージで疲れをリセット

血行が促進され、むくみやだるさが軽減されます。細かい振動よりも大きな動きで、筋肉にギュウッと圧をかけるのがコツ。

フットマッサージで疲れをリセット
  • ふくらはぎを両手指ではさみ、足首からひざに向かってゆっくりと揉みあげていく。イタ気持ち良いくらいの強さで。

足を心臓よりも高くする

心臓よりも足を高くすると、足に溜まった血液が心臓に戻されます。

  • 仰向けに寝て、壁に足を立てかけ、キープする
  • 睡眠時、足の下にクッションを入れるなどして、5センチから10センチほど高くして寝る
  • 仰向けに寝て、両手両足を天井のほうに上げ、ぶらぶらさせる。ゆすることで血流が促進される。
足を心臓よりも高くする

地球に重力がある以上、血液はどうしても足に溜まりやすくなります。足トラブルのリスクは誰にでもあるのです。それでも、普段から足の健康に気を配り、足をよく動かして血行を良くするよう心がけて生活していれば、足トラブルを遠ざけることは十分に可能です。いくつになっても、自分の足で行きたいところへ行き、やりたいことができるように、健やかな足を維持してほしいと思います。

足の疲労からくるむくみやだるさに悩んでいる人も、あきらめることはありません。ふくらはぎの筋肉をしなやかに保ち、よく動かしていれば足は疲れにくく、トラブルも起きにくくなります。今日からさっそく、ふくらはぎの運動とケアを習慣にして、スッキリ、軽やかな足を目指しましょう!

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