痛みの雑学
女性特有の肩こりとは?
仕事に家事にと多忙な日々を送る現代人にとって身近な痛みの一つである肩こり。「国民病」とも言われる肩こりですが、実は男性よりも女性の方が多いということをご存知でしょうか? そこで今回は、女性特有の肩こりに注目。 疲労や姿勢だけではないというその原因や対処法について、また今日からでもできる簡単なストレッチを、医学博士・健康科学アドバイザーの福田千晶先生に伺いました。
- 監修:福田千晶先生
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医学博士、健康科学アドバイザー。医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。健康科学アドバイザーとして執筆・講演を行うほかテレビやラジオなどでも活躍。わかりやすい家庭医学や女性の健康にまつわる解説、とり入れやすい生活改善法に定評がある。
日本人女性は肩こりに悩む人が多い?
人間の頭は個人差はありますが、スイカ1個分(5〜6kg程度)もの重さがあると言われています。それを支えている筋肉に負担がかかるのは当然のこと。とくに首と肩甲骨をつなぐ大きな筋肉、僧帽筋(そうぼうきん)には負荷がかかりやすく、ここに疲労が溜まると私たちは「肩がこっている」と感じやすくなります。
日本人は肩こりに悩む人が多いと言われています。その原因は2つあり、1つは体幹が華奢なのに頭は重いといった日本人特有の体型によるもの。もう1つは、うつむいたりおじぎをしたり、体が前傾する機会が多い生活習慣から、僧帽筋に負荷をかけやすいということです。
また、男性と女性では、女性のほうが肩こりに悩む人が多いという調査結果もあります。厚生労働省が2019年に実施した「国民生活基礎調査」によると、体の不調に関する自覚症状のうち、女性は「肩こり」に悩む人が最も多く、その割合は男性の約2倍であることがわかっています。
女性は男性に比べて筋肉量が少なく、頭を支えるために首や肩に一層の負荷がかかります。ただ、それだけではない原因も。次のブロックでは女性ならではの肩こりの原因について詳しく解説していきましょう!
冷えにストレス、ホルモンバランス…女性の肩こりは内側から
女性が肩こりを感じやすい主な理由としては、「筋肉量が少ない」「冷えやすい」「細かい作業が多い」「ホルモンバランス」「ストレス」といったことが挙げられます。
筋肉量が少ない
男女とも頭の大きさはそれほど変わりませんが、女性のほうが首が細く、僧帽筋など頭を支える筋肉も小さい傾向にあります。また、頭だけでなく、バストの重さを支えなければならないことも肩こりの原因の一つといえるでしょう。
冷えやすい
筋肉量が少ないと、血液を体に巡らせるポンプ機能が弱くなるため、冷えにつながります。体が冷えて肩周辺の筋肉への血行が悪くなると、酸素や栄養が十分に届かなくなり、老廃物も取り除かれにくくなります。それによって、肩こりが生じてしまうのです。また、首・肩が露出する服や体を締めつけるような下着を身につけることも冷えの原因に。
細かい作業や前傾姿勢が多い
仕事で指先を使う細かい作業をすることも多く、首や肩の緊張状態が続き、血行が悪くなっている女性も見受けられます。また、生活環境や職業柄によっては、家事や育児、介護などで持ち上げたり抱えたりというような前傾姿勢になることも多く、これもまた女性に肩こりが多い理由の一つになっているようです。
女性ホルモンの影響
女性ホルモンと肩こりの関係は、実ははっきりとはわかっていないものの、PMS(月経前症候群)や更年期の症状として肩こりを感じる人は多くいます。それは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが血管の壁の柔軟性に関わっているためだといわれています。とくに、エストロゲンの分泌が急激に減少する40代後半以降は、血管が硬くなりやすく、血行が悪くなることで肩こりを訴える人も増えるようです。
ストレスが多い
家庭環境によっては仕事を終えた後、今度は子どもの面倒を見ながら夕飯の支度をするなど、常に時間に追われている女性も少なくありません。女性はマルチタスクが得意と言われる一方、そのストレスは肉体的にも精神的にも大きいもの。ストレスを感じると体が緊張状態になり、首や肩周りの筋肉も硬くなりがちです。
美容への影響も?つらいだけじゃない肩こり
肩こりがひどい人の中には、頭痛やめまいに悩む人もいるのでは? ほかにも、肩こりから夜中に目が覚めやすくなったり、胃の調子が悪くなったり、自律神経が乱れて温度調節がうまくいかなくなったりするケースもあるようです。
女性の場合、気になるのが美容面での影響ではないでしょうか。肩こりがひどく首・肩の動きが不十分になると、顔の血色が悪くなって不健康に見えたり、筋肉のバランスが崩れて顔の左右差が大きくなったり、首もとにもたるみやシワができやすくなったりする場合があります。さらに、肩の痛みをかばおうと姿勢が悪くなることでお腹が前に出やすくなったり、膝が曲がったり、全身のスタイルに悪影響が出てしまうことも。
また、自分では慢性的な肩こりだと思っていても、実はほかの病気が関連していることもあるので注意が必要です。その判断は非常に難しいですが、肩こり以外に胸の痛みや腹痛、手のしびれなどほかの症状を伴うかどうかは、ひとつの目安になるでしょう。自覚症状がある人は、早めに医師に相談することをおすすめします。
日々の生活で心がけたい!内側からの肩こりケア
自分の肩こりの原因を探る一番の方法は、いつもの生活を見直してみること。同じ姿勢を続けたとき、体が冷えたとき、忙しくてストレスフルなとき……どのようなときに肩こりがひどくなるか、自分の体を観察してみてください。冷えが原因なら体を温めることを、ストレスが原因ならリラックスを、日頃の心がけ次第で肩こりは軽減することができます。
ぜひ、以下のようなことを生活の中で意識してみてください!
体を温める
血行不良による肩こりは、温めることで改善することが多いです。ゆっくりとお風呂に浸かることはもちろん、外出するときは、ハイネックを着たり、スカーフやストールを巻いたりして、首周りを冷やさないように心がけてください。
ファッションを見直す
モヘアのような素材のセーターやカーディガンは、見た目は温かそうですが、実は風を通しやすく、冷えやすいファッション。首や肩に手を当ててみて冷たければ、冷えている証拠。インナーを重ね着するなどの対策をしましょう。
軽い運動をする
とくにピラティスやヨガなど全身をゆっくり動かす運動は、体幹やインナーマッスルを鍛えられるため、筋肉量が少なく冷えやすい女性におすすめ。ウォーキングなどで腕を後ろに動かすことも、肩こりにはいいでしょう。肩甲骨周囲の筋肉がほぐれやすくなります。
こまめに水分をとる
体は脱水状態になると血液量が減少して血行不良に陥り、筋肉にも影響を与えます。とくにエアコンの効いたオフィスなどでは知らず知らずのうちに水分不足になっていることも。作業の合間の5分でもいいので、こまめに水分をとるよう心がけましょう。また、温かい緑茶やハーブティーなどは、体を冷やさずリラックスできるのでおすすめです。
ストレスケアの時間をもつ
日々時間に追われて、自分のことが後回しになってしまう女性は多いはず。寝る前の5分でいいので、ゆっくりストレッチをしたり、手足を丁寧にマッサージしたりするなど、セルフケアの時間をもってみてください。ホッと肩の力を抜いてリラックスする時間を意識的に作ることがストレスケアにつながります。
今日からできる!カンタン肩こり解消ストレッチ
肩こりをほぐすと、肩関節の可動域が広がったり腕が動かしやすくなったりするほか、体が軽くなり血色も良くなるなどメリットがたくさん! 仕事や家事の合間に、毎日のセルフケアに、今日から取り入れたい簡単なストレッチを4つご紹介します。
まずお伝えするのは、体の緊張をほぐすストレッチ。体が緊張状態になりやすい人は肩がこりがち。しかし、私たちは「体の力を抜きましょう」と言われても、なかなか脱力することができません。このストレッチを続けることで、体が脱力状態を覚え、普段から力を抜くクセがつきますよ。
体の力を抜く
肩の上げ下げストレッチ
- 一度腕をだらんと垂らしてから、肩をぎゅっと引き上げます。このとき目をつぶり、手もぎゅっと握りましょう。
- 10秒数えたら、全身の力を一気にストンと抜きます。
肩甲骨を寄せる
腕伸ばしストレッチ
次にお伝えするのは、肩甲骨を動かすストレッチ。肩こりを引き起こしている僧帽筋に働きかけるためには、肩甲骨を動かすことが効果的です。固まった筋肉をゆっくりほぐしていきましょう。
- 両腕を胸元まで上げ、肘を曲げた状態で中心に向かって寄せます。
- 左右に思い切り開きます。肘を伸ばしたまま腕をできるだけ後ろに反らし、肩甲骨をキュッと寄せるのがポイント。
肩甲骨をまわす
腕のスイングストレッチ
- 体の前で腕を重ねます。
- そのまま腕の重さを利用して左右に腕をスイングします。
- 10回スイングしたら、重ねた腕を大きくぐるりと回しましょう。
再び左右に10回スイングして、反対方向に大きく回します。座ったまま行ってもOKです。
肩甲骨を伸ばす
タオルストレッチ
- タオルを肩幅くらいの長さに持ち、両腕を伸ばして頭上にタオルがくるように上げます。そのまま上半身を左右に5回曲げます。
- 5回目で体をグーッと伸ばします。脇の下の筋肉が伸び、肩甲骨が外側に移動する感覚を意識してください。反対側も同じように伸ばします。
ストレッチは、転倒やケガなどしないよう注意して行いましょう。
女性の肩こりの原因は1つではなく、冷えやホルモンバランス、姿勢の悪さなどさまざまな要因が重なって引き起こされることがほとんど。まずは生活の見直しが肩こり改善のカギです。そしてこの記事でご紹介したストレッチを毎日の習慣にして、痛みやこりに悩まされることのない軽くしなやかな体を手に入れましょう!