• HOME
  • 痛みの雑学
  • 【腰痛編】繰り返す腰痛を予防・改善するために知っておきたい6つのこと

痛みの雑学

【腰痛編】繰り返す腰痛を予防・改善するために知っておきたい6つのこと

Vol.1【腰痛編】繰り返す腰痛を予防・改善するために知っておきたい6つのこと

デスクワークに集中しているときや、スマートフォンを見ているとき、無意識のうちに体を前に傾けていませんか? また外を歩いているとき、背中が丸まって猫背になっていないでしょうか? 繰り返すつらい腰痛は、このような日常の「姿勢のクセ」や「動作のクセ」が原因かもしれません。

今回は、国民病ともいわれる腰痛の予防・改善について、アスリートの腰痛予防研究に従事する整形外科医師の金岡恒治先生が伝授。家でできる姿勢のチェック法や、腰痛を改善するためのストレッチ、つらい痛みを繰り返さないための予防策についてお伝えします。

監修:金岡 恒治先生

監修:金岡 恒治先生

早稲田大学スポーツ科学学術院教授。整形外科医師。2007年から早稲田大学でスポーツ医学の教育・研究に携わる。シドニー、アテネ、北京五輪の水泳チームドクターを務め、ロンドン五輪にはJOC本部ドクターとして帯同。アスリートの腰痛予防研究に従事しており、体幹深部筋研究の第一人者。『腰痛のプライマリ・ケア』(文光堂)、『一生痛まない強い腰をつくる』(高橋書店)など著書多数。

<雑学1> ぎっくり腰への最善のアプローチは「stay active!」

急に起きた腰痛のことを一般的に「ぎっくり腰」と呼びます。ぎっくり腰になった直後は動くのが難しいため、なるべく痛みが出ない姿勢を取り、安静にしましょう。2〜3日くらいは痛みが続くと思いますが、痛みを恐れてずっと動かずにいると、関節を支える筋力が低下します。それによって、より腰痛を起こしやすくなり、悪循環に陥ってしまうのです。ぎっくり腰になってしまったときは「stay active!」が大切。初期の激痛が引いたら、無理のない範囲で動くよう心掛けましょう。

物を拾ったり、トイレでしゃがんだりするなど、日常生活の中で腰に痛みが出るときに試してほしいのは、“お腹に力を入れながら動く”こと。東洋医学では、おへそから指3本分下にある場所を「下丹田(げたんでん)」と呼びますが、ここに力を入れることによって、腹横筋という筋肉を収縮させ、動くときの腰や骨盤の骨を支えることができます。

腹横筋は、腹部の深層にあるインナーマッスルであり、この筋肉をうまく使うことで関節が支えられ、姿勢が安定します。つまり、筋肉がコルセットの役割を担ってくれるのです。下丹田の位置がイメージしにくければ、おしっこを我慢するときのように、下腹部に力を込めるといいでしょう。

下丹田

<雑学2> あなたの腰痛はどのタイプ?
痛みの場所から4つのタイプを推定

腰痛にはさまざまなタイプがあり、大きく「筋性腰痛」と「関節性腰痛」の2つに分けられます。「筋性腰痛」は、腰周辺の筋肉が損傷することによって起こります。一方、「関節性腰痛」は、椎間版、椎間関節、仙腸関節のいずれかが痛みの原因になります。

自分の腰痛のタイプを知るために注目したいのが、痛みの出る場所と動作です。とくに、痛みが出る場所を特定することは、腰痛を繰り返さないためにも重要なアプローチになります。
「筋性腰痛」では背骨の左右外側に痛みが出ることが多いのに対し、背中の真ん中の背骨や骨盤の周辺が痛いときは、「関節性腰痛」の場合がほとんどです。整形外科の患者さんを診ていると、仙腸関節の損傷が原因で腰を痛めている方も多くいらっしゃいます。その判断のポイントとして、ベルトのラインより下、尾てい骨の斜め上あたりに痛みを感じるときは、仙腸関節が原因の可能性があると覚えておくといいでしょう。

仙腸関節

また、筋肉と関節の痛みが複合的に起こることもあります。なぜなら、筋肉の使い方が悪いと、骨がぐらついて関節に痛みが出るからです。筋肉からくる腰痛を緩和するために注射をして痛みは消えたのに、その後で関節から来る腰痛が気になるようになった……ということもあり得るのです。

<雑学3> 仕事中のこんな姿勢が腰痛を引き起こす!

正しい姿勢をキープするには、首の前側にある頸長筋(けいちょうきん)と、首から肩甲骨の内側につながる菱形筋(りょうけいきん)、骨盤の位置を保持する腹横筋をうまく使うことが必要になります。つまり、顎が引かれ、肩甲骨が寄っていて、骨盤が傾いていない状態。この姿勢をキープできなければ、二足歩行をするための姿勢を保つことが難しくなり、最終的に寝たきりになってしまう可能性があります。

長時間のデスクワークなどで、重心が前に傾いた姿勢を取り続けると、骨盤から胸部へとつながる脊柱起立筋に負担がかかり、腰痛を引き起こしやすくなります。これが悪化すると、骨に負担がかかって、圧迫骨折を引き起こすことも。また、ひざ関節にも負担がかかるため、ひざの痛みも発生しやすくなります。

正しい姿勢が取れているかチェックするための方法はいくつかありますが、簡単なのは、壁に背中を付けて立ってみることです。顎を引いて、後頭部も壁に付けるようにしましょう。正しい姿勢が取れている人は、腰の後ろに少しすき間ができる程度で、頭からかかとまでぴったり壁に付けることができます。

正しい姿勢が取れているかチェックするための方法

<雑学4> 正しい姿勢で歩けている?自分でできるチェック法

腹部の体幹筋が使えるようになると、骨盤が安定し、歩くときに背筋への負担が減って、腰痛が起きにくくなります。70代や80代でも、体幹筋を鍛えることで、長年の腰痛から解放されたという方もいらっしゃいます。つまり、年齢や体型に関係なく、体幹筋を正しく使うことが、腰痛の改善に役立つということです。

体幹筋がきちんと使えているかどうかは、自分でチェックすることができます。まずは、平らな場所で四つ這いになりましょう。その後、右脚と左脚を交互に上げてみます。脚を上げたとき、骨盤が左右に大きくぶれたり傾いたりする人は、体幹筋がうまく使えていません。骨盤が動いているかわからない人は、家族に確認してもらうか、スマートフォンなどで撮影して見てみましょう。体幹筋が使えていない人は、歩いているときも骨盤がグラグラ揺れるので、安定しない体を支えるために、脊柱起立筋に負担がかかり、これによって腰痛が引き起こされることがあるのです。

この“四つ這い足上げ”は、体幹筋を鍛えるエクササイズとしても有効です。腰痛が気になる人は、なるべく骨盤を動かさないように意識して、このエクササイズに取り組んでみましょう。体幹筋を使えるようになると、足を遠くに踏み出せるようになるため、階段を上るのも楽になります。

四つ這い足上げ

<雑学5>もう腰痛に悩まない! 太ももの筋肉をほぐすストレッチ

腰痛の痛みの出方は、「腰を反ったときに痛む」ケースと「腰を丸めたときに痛む」ケースの2パターンに分けられます。

腰を反ると痛い人にオススメのストレッチ

腰を反ると痛い人は、太ももの前の筋肉が硬くなっていることが多いですね。太ももの前の筋肉が硬いかわからない人は、うつぶせに寝てひざを曲げてみましょう。このとき、お尻とかかとに距離がある人は硬いといえます。

太ももの前の筋肉をほぐすには、ひざを後ろに曲げて、右足の甲を両手で引き上げるストレッチが有効です。左足も同様に行いましょう。お腹に力を入れて、腰が反らないように注意します。

腰を反ると痛い人にオススメのストレッチ

腰を丸めると痛い人にオススメのストレッチ

腰を丸めたときに痛む人は、太ももの後ろ側のハムストリングスという筋肉が硬くなっていることが多いです。ハムストリングスが硬いと、腰を丸めるときに腰の骨に負担がかかってしまうんです。腰を丸めると痛い人は、仰向けに寝そべり、片脚ずつゆっくり持ち上げてみましょう。どこまで脚が上がるかによって、ハムストリングスの硬さを推定できます。

ハムストリングスをほぐすには、長座の姿勢になり、骨盤をゆっくり前に傾けるストレッチが有効です。お腹に力を入れて、手が床と平行になるように意識すると、ハムストリングスが伸びますよ。

腰を丸めると痛い人にオススメのストレッチ

<雑学6>ヨガの「犬のポーズ」で腰痛を予防・改善!

ヨガのポーズのひとつに、両手両足を床につけ、お尻を上げて三角形を表現する「ダウンドッグ」というものがあります。ハムストリングスが硬いと、このポーズを取るときに骨盤が前傾せず、背中が丸まってしまいます。

ヨガの「犬のポーズ」

ダウンドッグが上手くできない人は、ひざを曲げたまま、お尻の穴を天井に向けるようなイメージで腰を持ち上げましょう。背中をまっすぐ伸ばし、骨盤と腰を締めるようにお腹に力を入れ、そこから徐々にひざを伸ばしていきます。ひざが完全に伸ばせなくても、毎日繰り返すことで、次第にひざを伸ばせるようになるはずです。

腰を反らして手と足の甲で体を支える「アップドッグ」も、ヨガのポーズのひとつ。骨盤を後傾(=恥骨を床に近づけるように)させ、しっかりと胸を開き天井を見上げます。こちらもダウンドッグと同じく、毎日繰り返すことで、次第に太ももの前の筋肉がやわらかくなり、ポーズを取りやすくなるはずです。

アップドッグ

ダウンドッグとアップドッグがきれいにできる人は、腰痛になりにくいと思います。続けることで、将来、寝たきりにもなりにくくなるでしょう。

金岡先生いわく、つらい腰痛の痛みを繰り返さないためにも、ここで紹介したエクササイズやストレッチを習慣化して、体の使い方を変えていく心がけが大切とのこと。30代、40代から対策を始めることで、腰痛はもちろん、尿漏れや寝たきりの予防にもなります。人生100年時代をすこやかに生きるために、まずは今日から“正しい姿勢”を意識しましょう。

PAGETOP