さらば!痛みよボイス

第2回 【中島有奈さん】/すみだ水族館(東京都墨田区)

第2回 【中島有奈さん】/すみだ水族館(東京都墨田区)

世の中にはさまざまな職業があり、その職種ごとに特有の痛みを抱えています。この「さらば! 痛みよボイス」では、働く人にスポットを当て、彼らが抱える痛みとそれぞれが持つ対処法をご紹介します。

第二回目は、子どもから大人まで多くの人が訪れる「すみだ水族館」のスタッフとして働く中島有奈さん。オットセイ、ペンギン、アオウミガメの飼育を担当しているという中島さんに、水族館スタッフのやりがいと、この仕事ならではの体の痛み・つらさについて伺いました。

「動物が好き!」幼い頃からの夢を叶え、水族館スタッフに

「動物が好き!」幼い頃からの夢を叶え、水族館スタッフに
すみだ水族館で中中島さんが担当しているオットセイ

子どもの頃から生き物や動物に興味があったという中島さん。自分でもハムスターなどを飼ってかわいがっていましたが、高校生になって進路を考えたときに「動物園や水族館で働きたい」という夢が明確になりました。高校卒業後、動物のプロになるための専門学校へ進学。水族館で働くことを目標に、イルカの調教をする「ドルフィントレーナー」を専攻しました。

「最初に就職したのは、実習でもお世話になった北海道の水族館です。そこで3年弱、ペンギンや魚の飼育などを担当しました。わかっていたつもりでしたが、水族館の仕事のハードさには驚きました。たとえば、お客さまに華やかでダイナミックなイルカショーを見せるためには、その裏でさまざまな業務が必要になります。掃除やゴハンの準備、毎日の健康チェック、調子がよくないときの看病……、生き物を相手にしている分、気が休まる時がありません。とはいえ、大好きな動物たちと一緒に仕事ができる充実感は素晴らしいですね」。

中島さんはもともと東京出身。北海道で経験を積むなかで、次第に地元に戻りたいという思いも強くなってきました。また、イルカ以外の動物の魅力にも気がついたといいます。

「イルカはいつもおすまし顔でカッコいい。一方で感情が表に出やすい、表情豊かな動物もいます。さまざまな動物たちと触れ合ううち、コロコロ表情が変わるアシカやオットセイ、セイウチなどの海獣も担当してみたいという気持ちになってきたんです」と中島さん。そんなとき目に留まったのが、すみだ水族館のスタッフ募集。「ここなら、これまで培ってきたスキルを活かしながら、新たな動物にも挑戦できると思いました」。

すみだ水族館で中中島さんが担当しているペンギン
すみだ水族館で中中島さんが担当しているアオウミガメ
すみだ水族館で中中島さんが担当しているオットセイ
すみだ水族館で中中島さんが担当しているペンギン

現在、すみだ水族館で中島さんが担当しているのは、オットセイ、ペンギン、アオウミガメです。海獣チーム約10人で分担しながら、掃除やゴハンの準備、動物たちの健康チェックなどをこなします。朝から仕事に追われ、気づけば夕方なんてこともザラだとか。

「大変な仕事ですが、つらいと思う前に動かないと終わらないので、普段は大変さをあまり自覚していないかもしれません(笑)。動物たちとの触れ合いはとても楽しいですし、お客さまとコミュニケーションをとるという、水族館ならではの楽しみもありますね。すみだ水族館はリピーターのお客さまも多く、動物の個性を理解して会いに来てくれる方も珍しくないんです。ペンギンの名前と特徴を覚えて『“きなこ”が好きです』とか『“ぼんぼり”を探しています!』と声をかけてくれたり、自分が担当している子の特性や魅力などのコアな話ができたりすると、この仕事をしていてよかったと思います」。

ウェットスーツでの作業はとにかく重労働

ウェットスーツでの作業はとにかく重労働
ウェットスーツでの作業はとにかく重労働

「水族館スタッフにはいろいろな仕事がありますが、なかでも体を使うのはウェットスーツでの作業ですね。ペンギンプールの潜水清掃や擬岩清掃の後は、肩周りのこりや腰、膝の痛みに悩まされることもあります」と中島さん。

潜水清掃とは、ウェットスーツを着て水槽内に潜り、プールの床をこすってきれいにする作業。お客さまに美しい情景を楽しんでもらうことはもちろん、動物たちの健康を守るためにも欠かせない仕事ですが、ただでさえ可動域が狭く動きにくいウェットスーツで、水中で呼吸するためのタンクを背負い、浮いてしまわないよう腰におもりをつけたまま泳ぐのは見た目よりもずっと重労働です。しかもその状態で1〜2時間潜ったまま汚れをこそげとる作業を続けるので、肩や腕、肩甲骨のあたりに負荷がかかり、こりや痛みにつながります。また、ブラシでペンギンプールの擬岩をゴシゴシこする擬岩清掃もなかなかのハードワークだそう。

「こうした清掃は開館時間中にも行うため、お客さまに見られているときはつらい顔はできません。ウェットスーツを着るとどうしても前かがみになりがちですが、お客さまの前では姿勢よく、カッコよくいることを意識しています」。

また、ペンギンやオットセイに合わせて低い姿勢を続けることも多く、無理な体勢で体に痛みが生じることもあるとか。楽しそうに働いている水族館のスタッフにも、見えないところで痛みとの攻防があるようです。

ウェットスーツでの作業はとにかく重労働
ウェットスーツでの作業はとにかく重労働

毎日の入浴でリフレッシュすれば、体力仕事も頑張れる!

毎日の入浴でリフレッシュすれば、体力仕事も頑張れる!

朝8時に出勤し、17~18時頃まで勤務することが多い中島さん。1日中作業に追われ、帰宅する頃には疲れてクタクタ、清掃などで酷使した肩や腰が重く痛む日もあるそうです。そんな毎日の疲労をリフレッシュするために、どんなことに気をつけているのでしょうか。

「単純なことですが、やはりよく食べ、よく寝ることが基本ですね。体が資本なので、健康でいられるように気を遣っています。あとは、毎日湯船に浸かること。お風呂で体を温めながらこっている箇所を伸ばしたりして、リフレッシュしています。妹にマッサージしてもらうこともありますよ」と中島さん。また、休憩室ではスタッフ同士でマッサージし合ったり、肩こり解消グッズなどを使ったりする光景も。「栄養補給をして体を労り、しっかり休めば、次の日も元気に働けます!」。

中島さんは最近、仕事で嬉しいことがあったそうです

中島さんは最近、仕事で嬉しいことがあったそうです。「1年半ほど前に、すみだ水族館でオットセイの赤ちゃん(名前:アテナ)が生まれました。そのときはもう大変で、出産に備えてスタッフが24時間交代で泊まり込みでした。無事に生まれたあとも『お乳がちゃんと吸えているか』、成長してからは『魚が食べられているか』などと、常に心配しながらお世話をしてきたアテナが、このほどお客さまへのお披露目を迎えることができたんです。他のオットセイたちと元気に泳ぎまわる姿は本当に愛らしいですし、お客さまにアテナをかわいがってもらえるのは本当に幸せです」。

「これからも動物たちが元気に過ごせるように努め、そして彼らに会いに来てくれるお客さまをたくさん増やしたい」と意気込みを語る中島さん。スタッフの方々の努力と気遣いによって、すみだ水族館は多くのお客さまに愛されています。

一生懸命働く人たちにつきものなのが体の痛み。華やかな水族館の裏側にある苦労やつらさ、リフレッシュ方法を参考に、痛みと付き合う方法を考えていきましょう。

すみだ水族館 東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F
すみだ水族館 東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F

施設紹介

すみだ水族館
東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F

アクセス

  • 東武スカイツリーライン「とうきょうスカイツリー」駅 すぐ
  • 東武スカイツリーライン・東京メトロ半蔵門線・京成押上線・都営地下鉄浅草線
    「押上(スカイツリー前)」駅 直通徒歩5分

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