痛みと向き合うはじめの一歩

【四十肩・五十肩編】治りかけてはぶり返す…。
痛みのループにご用心!

Vol.1【四十肩・五十肩編】治りかけてはぶり返す…。痛みのループにご用心!

ある日突然、肩に激痛が走り、腕がまったく上がらなくなる。気がついたら、夜も眠れないほど痛くなっていた--。あなたにもそんな経験はありませんか?
今回は、働きざかりのミドル世代を襲う「四十肩・五十肩」を徹底解明。痛みの経過や正しい対処法を、理学療法士で医学博士の吉田一也先生が伝授します。「歳だから仕方がない」「おとなしくしていれば治る」と我慢している方、回復への最短距離をぜひここでつかんでください。

監修 : 吉田 一也先生

監修 : 吉田 一也先生

理学療法士、医学博士。1981年千葉県生まれ。2003年理学療法士免許取得。東京都の整形外科病院リハビリテーション科勤務を経て、2009年より埼玉県の理学療法士養成校教員に。2017年に医学博士となる。養成校教員のかたわら、自費施術、セミナー講師など幅広く活動。著書「肩こり、首痛、頭痛は鎖骨を5秒ほぐすだけでなくなる!(主婦の友社)」にて「鎖骨ほぐしTM」を提唱。

https://yoshidakazuya.com/

四十肩・五十肩の症状について、5段階評価で記しました(症状には個人差があります)。

四十肩・五十肩の
痛みの指数

痛みの強さ

じわじわと痛みが強まり、ピーク時には激痛に

慢性化の可能性

適切な対処をすれば、慢性化を防げます

回復の見込み

適切な対処をすれば、数カ月で軽快します

腕が上がらない、夜も眠れない…。
ある日突然やって来る痛み

「四十肩」と「五十肩」は、実は同じものです。当初、50代で発症することが多いことから五十肩と呼ばれていたのが、40代で発症した人に配慮して四十肩とも呼ばれるようになりました。いずれにせよ「四十肩・五十肩」は俗称で、医学的には「肩関節周囲炎」といい、肩関節まわりの筋肉や靭帯が炎症を起こす症状を指します。

では、四十肩・五十肩は、いつ・どこが痛むのでしょうか。ほとんどのケースでは、これといったきっかけがなく痛み始め、数週間から数カ月かけて悪化していきます。悪化するにつれ、肩を動かすときにピリッと刺すような痛みが走り、腕を上げたり背中に回す動作ができなくなるため、上着の脱ぎ着やブラジャーのつけ外し、洗濯物干し、シャンプーや洗顔ができないなど、日常生活に不便を感じるようになります。ピーク時には「夜間痛」といって、夜眠れないほどの激痛に襲われることも。こうなると日中、何もしなくても痛みがあり、痛みの範囲も、肩全体から腕までと広範囲に及びます。

よく混同されるのですが、肩こりと四十肩・五十肩はまったく別のものです。見極めのポイントは、「肩を動かせるかどうか」。肩こりは四十肩・五十肩のように、肩が動かせなくなることはありません。痛みも、肩こりが鈍痛であるのに対し、四十肩・五十肩は鋭い痛みなのが特徴です。肩の痛みにはこれ以外にも20以上の疾患があり、中には「腱板断裂(けんばんだんれつ)」など、四十肩・五十肩と見分けがつきにくく見逃されている疾患も多くあります。痛みを感じたら、自分の症状がどれなのか見当をつけるところから始めましょう。

このようにとてもつらい四十肩・五十肩ですが、適切な対処をすれば、長期間苦しまずに済むので安心してくださいね。この痛みはいつまで続き、どのように回復へと向かうのか、次のブロックで詳しく解説します。

あなたは今、どの段階?
発症から回復までの4段階をチェック

四十肩・五十肩はなぜ起きるのかというと、実は、原因は明らかになっていません。一説には、加齢やデスクワークなどで同じ姿勢を続けて肩関節まわりがこわばった結果、傷つきやすい状態になることが損傷のきっかけを作るといわれています。そしてあるとき肩に炎症が起こったら、以下のように4つの段階を経て症状が進行します。

①発症期(数週間~数カ月)

きっかけがなく痛み始め、発症の時期を特定できないケースがほとんど。特定の場所に炎症が起こり、いつの間にか痛みがじわじわと強まっていきます。

②炎症期(10日~2週間)

炎症がピークの状態。肩や腕を動かすと激痛が走り、何もしなくても痛みがあります。この時期は、痛みが強すぎてその範囲を特定できません。「夜間痛」で睡眠障害になる人もいます。 激痛があるときは、整形外科病院やクリニックなどの医療機関の受診をぜひおすすめします。痛みを我慢して慢性化させてしまうと、回復にも時間がかかってしまうためです。

③回復期(約1カ月)

痛みが和らぎ、痛みの範囲も、肩の前面や側面など「ここが痛い」と特定できるようになります。この段階で油断すると、「②炎症期」に逆戻りすることも。②と③を半年から1年間繰り返す人もいるので、要注意です。

④炎症完全沈静期(約1カ月)

痛みが完全に消える状態。ただ、肩関節まわりの筋肉や滑膜と呼ばれる関節内を覆う組織が炎症の影響で固まっているため、肩の動かしにくさが残ります。

四十肩・五十肩の4つのステージ

四十肩・五十肩は、この4つのステージごとに適切な対処をすることがポイントとなります。次のブロックでは、ピーク時の痛みを減らす方法と順調に回復するコツをご紹介しましょう。

いつまで経っても治らない…。
その原因は、回復期の「うっかり動作」

まず気をつけたいのが痛みのピーク時、つまり「②炎症期」における痛みのコントロールです。カギとなるのが、肩に負担がかからない「ニュートラルポジション」。実は脇を閉じて腕を下におろす「気をつけ」の姿勢は、腕の重みで肩に大きな負担がかかっています。最も楽なのは、両脇を軽くあけて、肘を肘掛けなどに置く姿勢です。なるべく多くの時間、この姿勢で過ごすよう工夫しましょう。

ニュートラルポジション

同様に「夜間痛」も、ニュートラルポジションで対処します。枕は高すぎず、低すぎずの位置に調整。痛い方の肩の下にタオルを敷いて、寝具と肩のすき間を埋め、脇にクッションをはさみます。横向きに寝る場合は、抱き枕もおすすめです。なお、痛みで横になるのもつらいときは、肘掛けつきのソファで眠るという手もあります。

寝るときの対処法

気をつけたいのは、「③回復期」にやってしまいがちな「うっかり動作」。痛みが和らいできたからと急に無防備な動きをすると、炎症が再発してしまいます。積極的に肩を動かすのは、「④炎症完全沈静期」に入ってからと心得て、炎症期と同様の姿勢で過ごすようにしましょう。ここでしっかり治しておけば、あとが楽ですよ。

あるある! 四十肩・五十肩にまつわるこんな悩み

最後に、患者さんからよく寄せられる質問をご紹介します。

何もしなくても痛いときは、どうすればいい?

極力、肩への負担を減らすことを目的に、できるだけニュートラルポジションを心がけてください。通勤など移動時は、ポケットやベルトに手をかけて脇をあけるようにすると、この姿勢をキープできますよ。

立ち姿のニュートラルポジション

やってはいけないことはある?

「②炎症期」「③回復期」は、「痛い」と感じる動作は絶対にしないでください。痛みは「その動きは危険!」という身体からのサイン。炎症を起こしている場所をいたわることが、回復への第一歩です。

肩を上に上げる2つの動作
肩を上に上げる2つの動作

この記事を読んでいる方の中に、「②炎症期」と「③回復期」を繰り返している人がいたら、まずはそのループから抜け出すことを目標にしてください。それには痛みがひどいときだけでなく、治りかけでも、ニュートラルポジションと肩の安静を心がけること。四十肩・五十肩は、必ず治る病気です。一緒に回復への一歩を踏み出しましょう!

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