痛みをラクに!自宅でできる簡単メソッド

手指と手首の痛み対策に! 見直したい日常動作とセルフケア

Vol.3手指と手首の痛み対策に! 見直したい日常動作とセルフケア

パソコンやスマートフォンを長時間使う生活が当たり前になっている今、手指や手首の痛みに悩む人が増えているそうです。「腱鞘炎(けんしょうえん)」とも言われるこの痛み、日常のちょっとした動作の改善と心がけによって、軽減できるのだとか。今回は、「痛みで苦しまない人生を医学で導く痛み改善ドクター」富永ペインクリニック院長の富永喜代先生に、気をつけるべき日常の動作や、腱鞘炎の痛みを解消するためのセルフケアについて教えていただきました。

監修:富永喜代先生

監修:富永喜代先生

富永ペインクリニック院長・医学博士。日本麻酔科学会認定麻酔科指導医、産業医。1993年より、聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務し、延べ2万人を超える臨床麻酔実績を持つ。2008年には、愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。ヘバーデン結節外来を開設する。経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」を委託され、新しい痛み医療のリーダーとして注目される。YouTube『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は開設1年で総再生回数 2600万回、チャンネル登録者数は15万人。TikTokフォロワー4.8万人。facebookフォロワー3万人、facebookLiveは1年で1300万人にリーチする。著書・テレビ出演も多数。

手指や手首に起こる「腱鞘炎」のメカニズム
今すぐできる腱鞘炎チェックも!

手指や手首を酷使することで起こる「腱鞘炎」ですが、どういったメカニズムで引き起こされるのでしょうか。
私たちの体には、骨と筋肉をつなぐ腱(けん)という組織があり、これを包むトンネルのような組織を腱鞘(けんしょう)といいます。関節や筋肉を動かすたびに、腱は腱鞘を出たり入ったりするのですが、「腱鞘炎」とは、この腱と腱鞘がこすれ合い、炎症を起こした状態のこと。とくに指や手首は動かす機会が多いため、腱と腱鞘が擦れ合う回数も多く、腱鞘炎が起こりやすいのです。

手指や手首に起こる「腱鞘炎」のメカニズム

腱鞘炎の中でも身近な症状が、手指の付け根が痛む「ばね指」と、手首の親指側が痛んだり腫れたりする「ドケルバン病」です。

ばね指

手指を曲げるための腱と腱鞘が炎症を起こしている状態で、手のひら側の親指・人差し指・中指の付け根などに痛みが生じます。初期症状としては、朝起きたときに指にこわばりを感じたり、スマートフォンを操作しているときに指先が痛んだりします。症状が進むと、指が曲がったまま自力で戻らなくなってしまうこともあります。

ドケルバン病

手首の親指側に腫れや痛みが出る疾患のことで、主に親指の使い過ぎが原因です。親指は、ほかの指と違い可動域が広く酷使されやすい部位。痛みがあっても日常の中で使い続けてしまうことも多く、悪化しやすいので注意が必要です。

ドケルバン病チェック!

手首や親指に痛みを感じていて、「もしかしたらドケルバン病かもしれない」と思っている人は、次のような方法でチェックしてみましょう。

  1. 親指を曲げ、ほかの4本の指で包むように握る
  2. 剣道で素振りをするように、小指側に手首を倒す
ドケルバン病チェック!

この動きが痛くて行えない場合は、ドケルバン病の可能性があります。
痛みや腫れが気になる場合は、無理に自己判断せず、医師や医療機関に相談するようにしましょう。

こんな動かし方には注意!手首に負担のかかる日常動作

手指や手首に痛みを感じるようになると、お皿を洗ったり、ドアノブを開けたり、ズボンを上げ下ろししたりといった日常動作がつらく感じるようになります。つまり、それらは手指や手首に負担の大きい動作だということ。とくに手首を甲の方向に返したり、手指の関節で重いものを支えたりする動きには気をつける必要があります。
腱鞘炎を悪化させないため、また日頃から手指や手首に負担をかけないために、次のような習慣がないか日常の動作を見直してみましょう。

スマホを片手で持つ、小指で支える

手指に最も負担をかけるのは、スマートフォンを「片手で持って片手で操作する」こと。表面がツルツルして滑りやすいスマートフォンを片手で持てば、自然に手指や手首に力が入り、負担も大きくなります。

スマホを片手で持つ、小指で支える

とくに、スマホの下に小指を添えて持つのはNG! フリック入力や画面スクロールのほか、ゲームをするときにもこの持ち方をしがちですが、関節の弱い小指には一層負担がかかりやすいため注意が必要です。スマホは「両手で持って両手で操作する」ことを意識しましょう。

スマホは「両手で持って両手で操作する」ことを意識しましょう

手首をひねってキーボードやマウスを操作する

キーボードの右端にあるテンキーを使ったり、体の中心から離れた場所でマウスを操作したりすると、手首にひねりが加わり、腱鞘炎を起こす原因になります。これを防ぐためには、ワイヤレスのテンキーやマウスを使い、なるべく体に近い位置で手を動かせる環境をつくりましょう。
また、手首を反り返す動きも負担が大きくかかります。手首よりキーボードの位置が高くならないように、手首の下にはパームレスト(パソコン操作時に手首をのせるクッションや台)や、タオルを置いたり、マウスパッドを活用したりするのがおすすめです。

重い物を手指や手首の力だけで持ち上げる

重い物を持つ動作も、手指や手首の関節に負担をかけます。とくに育児や介護で人を抱き上げる機会が多い人は要注意です。重い物を持ち上げたり、運んだりするとき、手を伸ばした状態で行うと手首の負荷が大きくなります。手を体幹に引き寄せることを意識しましょう。

腱鞘炎の痛みを解消する「10秒神経マッサージ」

腱鞘炎になったとき、痛みの周辺を不用意に揉んだり伸ばしたりして刺激を与えるのは禁物です。
対処法としておすすめしたいのは、神経をピンポイントに刺激することで痛みをやわらげる「10秒神経マッサージ」。手首と手指の痛み、それぞれに効果的なマッサージをお伝えしましょう。

手首(親指側)の10秒神経マッサージ

まずは、コップを持つような形に手を構えてみましょう。このとき、手首の横に静脈が走っているのが薄く見えると思います。この静脈と、手首のシワが交差した地点から3cmほど下に「手首の神経ポイント」があります。刺激するとグリグリとした感覚があるので探してみてください。

手首(親指側)の10秒神経マッサージ

神経ポイントが見つかったら、親指の爪を立てて10秒間刺激を加えます。
爪の先に力をこめて、縦方向に小刻みに揺らしましょう。

人差し指のつけ根の10秒神経マッサージ

続いて、手指の痛みにアプローチする人差し指のつけ根のマッサージです。神経ポイントがあるのは、人差し指の骨と親指の骨と交差する地点から人差し指側少し上。手の甲から爪で刺激したとき、ピリッとした痛みが走る場所です。

人差し指のつけ根の10秒神経マッサージ

同じように親指の爪を立てて、縦方向に小刻みに揺らしながら10秒間刺激を加えます。

これらのマッサージを朝・夜の2回行います。10秒以上やると刺激が加わりすぎて、痛みが増す可能性があるため注意が必要です。

腕や手首の疲労解消! 腱鞘炎予防には「肩ほぐし体操」

腱鞘炎を予防するためには、手指や手首だけを集中的にケアするだけでなく、神経でつながった首や肩のコンディションを整えておくことも大切です。とくに首・肩がこっている人は、手指や手首に疲労が溜まっていることも。「肩ほぐし体操」で、肩まわりの筋肉のこりやハリを効率よく解消することで、腕や手首、指先の血行が良くなり、疲労をやわらげることができますよ。

手首を楽にする肩ほぐし体操

手首を楽にする肩ほぐし体操
  1. 両腕を肘の高さに上げ、両手のこぶしを握って胸の前で水平に構えます。
  2. 鼻からゆっくり息を吸いながら、肘と肩を後ろへ引いて5秒間キープしましょう。
    このとき左右の肩甲骨を中央へ引き寄せるのがポイントです。
  3. 口から息を吐きながら、両手を勢いよく前へ突き出します。このとき、指先はピンと伸ばしましょう。そのまま5秒間キープしたら、一気に脱力してリラックス。

①~③を3回繰り返しましょう。

セルフケアにサポーターもプラスして

こうしたマッサージや体操にプラスしたいのが、指用や手首用のサポーター。腱鞘炎の症状が進むと、日常のちょっとした動作が不安になりがちですが、サポーターで過度な動きを抑制したり関節を保護したりすることで、手指や手首への負荷を軽減することができますよ。

どうしても動かす機会の多い手指や手首は、腱鞘炎が悪化してしまいがちです。痛みは我慢せず、日常生活に支障をきたさないためにも、普段から手指や手首に負担をかけない動作を習慣化し、セルフケアとして富永先生考案の「10秒神経マッサージ」や「肩ほぐし体操」を続けていきましょう。手指や手首がスムーズに動かせるだけで、毎日をストレスなく過ごせるようになりますよ。よく使う部位だからこそ、日々いたわり、ケアすることが大切です!

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