痛みをラクに!自宅でできる簡単メソッド

肩こりを楽にする簡単メソッド!今話題の“肩甲骨はがし”って?

Vol.1肩こりを楽にする簡単メソッド!今話題の“肩甲骨はがし”って?

朝・夕1日2回の習慣化で、腕の上下運動が楽になる

家の中にいる時間が増えたり、テレワークが長期化したりする中で、肩こりに悩まされる方も多いのではないでしょうか? その解消法として注目を集めているのが、“肩甲骨はがし”。

「聞いたことはあるけれど実際にどんなことをするの?」「やってみたいけど痛くないの?」そんな疑問をもっている方も多いはず……。そこで今回は、“肩甲骨はがし”の第一人者である東京医科大学整形外科准教授の遠藤健司先生に、そのメカニズムや、やり方について教えていただきました。

監修 : 遠藤健司(えんどう・けんじ)先生

監修 : 遠藤健司(えんどう・けんじ)先生

東京医科大学整形外科准教授
東京医科大学卒業。米国ロックフェラー大学ポストドクターとして留学。東京医科大学霞ヶ浦病院整形外科医長、東京医科大学整形外科医局長などを経て2018年より現職。脊椎脊髄の専門医の観点から肩こりに焦点をあてた「肩甲骨はがし」を考案。著書に「本当は怖い肩こり」(祥伝社新書)などがあるほかメディア出演多数。

そもそも“肩甲骨はがし”って何? そのメカニズムを解説

私たちの体の中には、皮膚や筋肉、臓器、骨、血管などを包みこんでつなぐ繊維状の組織「ファシア」が張り巡らされています。ミカンの皮と実の間にある白い筋を想像していただくとわかりやすいかもしれません。
例えば、ひじを曲げるとき、皮膚や筋肉、神経がぴったりくっついてしまっていると、それらが引っ張られて痛みが発生します。ところが、ファシアがあることで組織間にゆとりができるため、私たちはひじをスムーズに動かすことができるわけです。いわば体の「ゆるゆる組織」と言いましょうか。

そもそも“肩甲骨はがし”って何? そのメカニズムを解説

そんな大切な役割をするファシアですが、運動不足や長時間同じ姿勢が続くと、周囲の骨や筋肉と癒着したり、浮腫を引き起こしたりして、まるで古くなったミカンの筋のように固まってしまうのです。その結果、体を動かしづらくなり、姿勢の崩れや肩こり、首こりといった様々な不調を招くことになります。
“肩甲骨はがし”とは、固まってしまった肩甲骨周りの筋肉とファシアをほぐして、「ゆるゆる組織」の働きを取り戻すこと。肩甲骨を上げてギュッと寄せる動きをすることで、マッサージではほぐすことのできない深部の筋肉、肩甲骨を動かす役割をしている、菱形筋(りょうけいきん)と肩甲挙筋(けんこうきょきん)に働きかけることができるのです。

菱形筋(りょうけいきん)と肩甲挙筋(けんこうきょきん)

“肩甲骨はがし”が肩こり・首こりに効く理由とは?

“肩甲骨はがし”が肩こり・首こりに効く理由とは?

肩こりの一番の原因は、首にかかり続けた負荷の蓄積によるものです。人間の頭の重みは、体の10%で、体重50kgの人なら5kgの重みがあります。常に5kgのお米を支えているわけですから、首には相当な負荷がかかっているわけです。さらに、頭を30度ほど前かがみにするだけで、首に加わる重さはその3倍に。デスクワークなどで長時間頭を傾けていれば、首の筋肉はみるみる緊張して硬くなり、血行不良や痛み、こりなどの不調を招きます。そしてこの首を支え、土台となっているのが肩甲骨です。“肩甲骨はがし”によって、首の周りの硬くなった筋肉をほぐしてあげることで、血流を良くし、不調を改善することができます。

“ストレスも肩こりの大きな原因の一つ

ストレスも肩こりの大きな原因の一つでしょう。ストレスを感じると筋肉やファシアが緊張状態になり、血流が悪くなる。自律神経にも影響が及んで、ひどくなると抑うつ状態になったり、意欲がなくなったりします。こうしたストレスにも、“肩甲骨はがし”が有効です。緊張状態になった筋肉をやわらげるだけでなく、首に通っている自律神経に働きかけ、頭をスッキリさせる効果もあります。
私たちは日常生活の中で“肩甲骨はがし”のような動きをとることはありません。ですから、肩こりや首こりに悩んでいる方は、意識的に“肩甲骨はがし”をして、ガチガチに固まった肩甲骨周りをゆるめてあげることが大切です。

「横からバンザイ」テストで
あなたの「肩甲骨ガチガチ度」をチェック!

普段意識することの少ない自分の肩甲骨の状態はなかなか自覚しにくいものですよね。肩甲骨周りの筋肉が硬くなってその働きが悪くなると、腕を上げづらくなります。そこで、「横からバンザイ」をするだけで自分の肩甲骨の状態が簡単にわかるのです。
では実際に、あなたの「肩甲骨ガチガチ度」をチェックしてみましょう!

  1. かかと、背中、腕を壁に背を付けて立ち、手のひらを下にした状態で腕を肩の位置まで真っ直ぐに伸ばす。

    POINT
    このとき、ひじを曲げないように注意!
    かかと、背中、腕を壁に背を付けて立ち、手のひらを下にした状態で腕を肩の位置まで真っ直ぐに伸ばす。
  2. そのまま腕が壁から離れないように上に上げる。肩の水平ラインと腕の角度を見る。

    POINT
    腕や肩に痛みを感じないところまででOK!
    そのまま腕が壁から離れないように上に上げる。肩の水平ラインと腕の角度を見る。

    肩の水平ラインから上げた腕の角度が60度以上なら、肩甲骨に柔軟性が保たれている状態。45度未満の場合は、肩甲骨周りの筋肉がガチガチになっている証拠です!

やってみよう!“肩甲骨はがし”体操

肩甲骨がガチガチだった人も、落ち込むのはまだ早いですよ。いざ、“肩甲骨はがし”をやってみましょう。ここでは“肩甲骨はがし”体操の2つのステップをお伝えします。

STEP.1 準備体操

肩こりのひどい人がいきなり肩甲骨を動かすのは大変です。まずは準備運動で、筋肉の可動域を広げていきましょう。

  1. ひじを曲げて肩の高さまで水平に上げる。

    ひじを曲げて肩の高さまで水平に上げる。
  2. 腕の高さを保ったまま、5秒間かけて後ろに引く。これを5回繰り返す。

    POINT
    このとき、肩甲骨をギュッと寄せるようなイメージで
    腕の高さを保ったまま、5秒間かけて後ろに引く。

STEP.2 “肩甲骨はがし”体操の基本

準備体操で肩や腕が動きやすくなったら、“肩甲骨はがし”体操をしてみましょう。
四十肩・五十肩で腕が上がりにくい場合は無理をせず、できる範囲で行ってください。

  1. 両ひじを肩の高さに上げ、胸の前でV字を作るようにさらに肩の上に上げる。

    POINT
    立っていても座っていてもOK!
    両ひじを肩の高さに上げ、胸の前でV字を作るようにさらに肩の上に上げる。
  2. 両ひじの位置をできるだけ下げないように5秒ほどかけてゆっくりと後ろに回し下ろす。ここまでを5回繰り返す。

    両ひじの位置をできるだけ下げないように5秒ほどかけてゆっくりと後ろに回し下ろす。
    POINT
    このとき、肩甲骨をぎゅっと寄せるイメージで!

    (横から)

    横から

    (後ろから)

    後ろから

“肩甲骨はがし”体操を続けることでどんな変化が起こる?
もう辛い肩こりに悩まされないために

まずは、朝・夕の1日2回を習慣にして、1週間続けてみましょう。腕が格段に上がりやすくなるのを実感できるはずです。姿勢が良くなることで、バストアップやヒップアップなどの効果も期待できます。また、パソコンやスマホを使う方に多い症状で、本来ゆるやかにカーブしているはずの首の骨が真っ直ぐになってしまう「ストレートネック」の改善にもつながりますよ。

“肩甲骨はがし”体操を続けることでどんな変化が起こる?

“肩甲骨はがし”体操に加えて日頃から心がけていただきたいことで言えば、デスクワークなどで長時間同じ姿勢をとりがちな方は、30分に1回は立ち上がってみたり、体をひねってみたり、簡単なことでいいので体を動かすことを意識してみてください。腰と椅子の間にクッションを入れて、正しい姿勢を保つようにするのも肩こり解消に効果的ですよ。

そもそも“肩甲骨はがし”を開発したきっかけは、僕自身がずっと肩こりに悩まされてきたから。それまでは、痛みで勉強に集中できなかったり、よく眠れなかったりと辛い日々を送っていました。それが今じゃ肩こりは全く気にならなくなりましたよ。肩こりに悩むみなさんが “肩甲骨はがし”で、辛い痛みから解放されたら嬉しいですね!

“肩甲骨はがし”で、辛い痛みから解放されたら嬉しいですね!

肩こりの辛さがよくわかるからこそ一人でも多くの人によくなってもらいたい。遠藤先生の思いが、丁寧でわかりやすい解説からも伝わってきました。肩こりや首こりに悩んでいる方は肩甲骨がガチガチになっていませんか?ぜひ“肩甲骨はがし”体操を毎日の習慣にしてみてください!

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