【医師監修】蚊に刺されやすい人の特徴とは?体質による違いや対策を解説
「同じ空間にいても自分だけ蚊に刺されやすい」「蚊に刺されにくくするための対策を知りたい」蚊に刺されやすい人と刺されにくい人ではどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では、医学的根拠に基づき、蚊に刺されやすい人の特徴や、蚊に刺されにくくするための対策などについて、医師が解説します。
監修
高山 かおる 先生(埼玉県済生会川口総合病院 皮膚科 主任部長)
蚊に刺されやすい人の特徴
蚊は、吸血源を探す際に「二酸化炭素」「体温」「湿度(汗)」「汗や皮脂などが変化した成分」といった複数の刺激を感知して標的を定めます。
一般的に以下のような特徴を持つ人は、蚊に刺されやすい傾向があるといわれています。
- 体温が高く、汗をかきやすい
- 皮膚常在菌によるカルボン酸の発生が多い
- 二酸化炭素の排出量が多い
- 黒、紺など濃い色の服を着ている
そのため、体温や活動量、発汗などの条件によって、蚊に刺されやすくなる可能性があるでしょう。それぞれの特徴について詳しく説明しましょう。
◎体温が高く、汗をかきやすい人
蚊は温度に敏感な受容体を持っており、周囲より温度が高い熱源を感知して近寄る性質があります。そのため、体温が高い人は標的になりやすくなります。
また、発汗に伴う水分(湿度)も蚊を誘引する要素です。
運動後や入浴後など、一時的に体温が上昇している状態の時は、普段よりも蚊の標的になりやすいため注意が必要です。
◎皮膚常在菌によるカルボン酸の発生が多い人
皮膚上の常在菌が汗や皮脂を分解する際に生成される「カルボン酸」などの揮発性物質が、蚊を強く誘引することが近年の研究で示唆されています。
カルボン酸とは、皮膚に存在する常在菌が、汗や皮脂に含まれる成分を分解する過程で生成される揮発性物質の一種です。
蚊(特にヒトスジシマカなど)の触角にある受容器は、皮膚から蒸散される特定のカルボン酸(乳酸や脂肪酸の代謝物など)に強く反応することがわかっています。
皮膚上の常在菌の種類やバランスは人によって異なるため、生成されるカルボン酸の量や種類にも個人差が生じます。これが「刺されやすい人」と「刺されにくい人」の差を生む大きな要因の一つと考えられています。
人体の中でも足の裏は特に常在菌が繁殖しやすく、カルボン酸をはじめとする多様な誘引物質が発生しやすい部位です。
◎二酸化炭素の排出量が多い人
蚊は数十メートル先からでも二酸化炭素(CO2)の濃度変化を察知する能力を持っています。代謝が活発な人や、激しい運動後・飲酒後の人は、体温の上昇とともに呼吸によるCO2の排出量が増えるため、蚊に刺されやすくなります。
妊婦さんは妊娠前と比較して代謝が活発であり、呼気中のCO2排出量が多く、体温も高い状態にあります。そのため、蚊に刺されやすい傾向があるといえます。
◎黒・紺など濃い色の服を着ている人
服装の色も、蚊を引き寄せる要因の一つです。蚊は視覚的に黒や紺などの暗い色に引き寄せられる性質があるため、白などの明るい色の服よりも、暗い色の服を着ている人が標的になりやすいといわれています。
蚊に刺されにくくなるための対策、蚊の繁殖予防について知ろう
蚊に刺されやすい人の特徴を踏まえて、日常でできる対策を考えてみましょう。
◎虫除け剤の活用
虫除け剤を使うことで、蚊を効果的に寄せ付けにくくすることができます。
現在、日本で承認されている、人体に適用する医薬品・医薬部外品の虫除け成分は「ディート(DEET)」と「イカリジン」の2種類です。これらは蚊の感覚器官に作用し、人を認識できなくさせる働きを持っています。
ただし、両成分にはそれぞれ特徴と注意点があります。
ディートは効果が強力で、蚊以外の虫(ブユ、サシバエ、ノミ、トコジラミ、マダニ等)にも幅広く効きますが、独特のにおいがあります。高濃度(30%)配合の製品は12歳未満には使用できず、また、12%以下の配合製品であっても、生後6カ月以上からの使用や、使用の回数制限が設けられています。さらに、ディートには、プラスチックや合成繊維を溶解させる性質があります。
一方、イカリジンは皮膚への刺激が少なく、においもほとんどありません。年齢・回数の制限もなく、衣類を傷めるリスクも低いとされています。ただし、効果を発揮するのは蚊、ブユ、アブ、マダニに限られます。
そのため、虫除け剤を使う対象者によって使い分けることをおすすめします。
| 成分名 | 特徴 | 使用上の注意 |
ディート(DEET) |
世界的に使われており、多くの虫に効果がある。(蚊、ブユ、サシバエ、ノミ、トコジラミ、マダニ等) |
独特のにおいがある。 |
イカリジン |
皮膚への刺激が少なく、においもほとんどない。衣類を傷めにくい。 |
年齢制限や回数制限がない。 |
○虫除け剤の効果的な使い方
使用時には、塗り残しがないよう、スプレータイプであっても、直接肌に噴霧するだけでなく、いったん手にとって塗り広げるようにしましょう。特に首筋、耳の裏、足首は塗り残しが生じやすいので注意が必要です。
日焼け止めと併用する場合は、先に日焼け止めを塗り、その上から虫除け剤を重ねると効果を得やすくなります。
また、虫除け剤の効果は時間とともに薄れるため、塗り直しも大切です。ディート10%の場合は約3時間、30%の場合は約6時間が目安とされています。発汗や水ぬれでも効果が低下するため、状況に応じてこまめに塗り直してください。
乳幼児にディートを使用する際は、なめてしまうリスクを避けるため、顔や手への直接塗布は控え、大人がいったん自分の手にとってからお子さんに塗布するとよいでしょう。
◎衣服で肌の露出を控える
長袖や長ズボン、レギンスなどを着用し、蚊が吸血できる皮膚の面積を物理的に減らすことが、もっとも確実な防御策の一つです。首元にはタオルやストールを巻く、ズボンの裾を靴下に入れるなど、蚊が入り込みやすい隙間をなくす工夫も有効です。
◎こまめに汗をふく
汗に含まれる水分(湿度)や、汗を栄養源に増殖する常在菌が放つ「におい」が蚊を引き寄せる要因になります。
汗をかいたら放置せず、清潔なタオルや汗拭きシートでこまめに拭き取り、肌を清潔でドライな状態に保つよう心がけましょう。
◎皮膚を清潔に保つ
足の裏を含む皮膚から放出されるにおい成分や、それに関与する皮膚常在菌は、蚊の誘引に関わることが知られています。
帰宅後に皮膚を清潔に保つことは、こうした蚊に好まれやすいにおいを減らすという点で、理にかなった対策といえるでしょう。
◎明るい色の服を着る
黒や紺などの濃い色の服は、蚊を引き寄せやすい傾向があります。
屋外活動や、蚊が活発になる夕方・早朝に外出する際は、白やベージュ、黄色など光を反射しやすい明るい色の服を選ぶことで、標的になるリスクを下げられます。
◎扇風機を回す
蚊は飛行能力が低いため、扇風機の風を送ることで物理的に着地を妨げることができます。また、蚊が標的を探す手がかりとなる「二酸化炭素」や「皮膚のにおい」を風で拡散させ、蚊に居場所を悟られにくくする効果もあります。
◎蚊の侵入を防止する
網戸に破れや隙間がないか定期的に確認し、必要に応じて網戸専用の虫除け剤を使用しましょう。
また、玄関や窓の開閉は短時間で済ませ、人の出入りの際に蚊が室内に紛れ込まないよう注意することも大切です。
◎蚊の繁殖防止も重要
蚊の幼虫(ボウフラ)は、わずかな水たまりでも繁殖します。植木鉢の受け皿、雨ざらしのバケツなど、家の周りに不要な水たまりをつくらないことが、蚊の発生を根本から抑える対策になります。
蚊の感染症リスクを知っておこう
蚊は単にかゆみを引き起こすだけでなく、恐ろしい感染症を媒介する生物でもあります。デング熱、チクングニア熱、ジカ熱などは、ヒトスジシマカやネッタイシマカによって媒介されます。
○蚊が媒介する主な感染症
・デング熱
高熱、激しい頭痛、関節痛、発疹が主な症状です。
世界的にもっとも流行している蚊媒介感染症の一つで、重症化すると出血傾向を伴う「デング出血熱」に至ることもあります。
・チクングニア熱
デング熱に似た急激な発熱と関節痛が特徴です。
関節の痛みや腫れが数週間から数カ月以上、長期にわたって続くケースがある点が特徴的です。
・ジカ熱(ジカウイルス感染症)
軽度の発熱、発疹、結膜炎などがみられます。
症状自体は比較的軽いことが多いですが、妊娠中の感染により胎児に小頭症などの先天性障害を引き起こすリスクが指摘されており、特に妊婦さんは注意が必要です。
近年は温暖化の影響で蚊の活動期間が長期化し、生息域が北上しつつあります。日本国内でも蚊を媒介とした感染症のリスクが高まる可能性があるため、適切な虫除け対策を日ごろから意識することが重要です。
蚊に刺されやすい人の特徴を知って正しく対策しよう
蚊に刺されやすい人には、体温の高さ、二酸化炭素の排出量、皮膚の常在菌など、複数の要因が絡み合っています。
「虫除け剤をきちんと塗る」「皮膚を清潔に保つ」「明るい色の服を選ぶ」といった日常の小さな工夫で、刺されるリスクを下げることが可能です。
感染症予防の観点からも、正しい虫除け対策と繁殖源の除去をぜひ徹底してください。
【参考】
『蚊媒介感染症』厚生労働省
『蚊媒介感染症の予防と対策』国立感染症研究所
『気候変動影響評価報告書』環境省
『ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について』厚生労働省
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