【医師監修】ダニに刺されたあとの対処法。
種類別の症状とあわせて解説

ダニに刺されたあと「この赤みやかゆみはすぐ治るの?」「放っておいて大丈夫?」と不安になる方は少なくありません。ダニには、屋内に多いツメダニ・イエダニと、屋外で注意が必要なマダニなどがいます。刺された場合、軽い炎症で済むケースもあれば、適切な処置が必要になる場合や感染症に注意すべきケースもあります。

本記事では、ダニに刺されたあとの症状の特徴や治るまでの目安、正しい対処法、跡を残さないためのケア方法、さらにダニ被害に遭いやすい環境や状況をわかりやすく解説します。

監修
高山 かおる 先生(埼玉県済生会川口総合病院 皮膚科 主任部長)

ダニに刺されたあとの症状と特徴

ダニに刺されたあとの症状や特徴は、大きく分けて以下の2パターンで異なります。

  • 屋内に多い「ツメダニ・イエダニ」 
  • 屋外で注意が必要な「マダニ」

ここでは、それぞれの特徴と症状の現れ方、また症状がいつまで続くのかの目安について解説します。

◎屋内に多いダニ「ツメダニ・イエダニ」の場合

屋内に生息するダニによる被害は、大きく「人は刺さないが、アレルギーや他のダニ増加に関係するダニ」と「人を刺すダニ」に分けられます。

1.チリダニ(人を刺さないが、アレルギーの原因になる)
屋内のダニの大部分を占めるのが「チリダニ」という種類です。チリダニはホコリの中に生息しており、食べ物のカスやカビ、人間の垢などを食べるため、通常は人を刺したり血を吸ったりはしません。ただし、死骸やフンが原因となってアレルギー症状を引き起こすことがあるほか、後述する「ツメダニ」の餌となり、ツメダニを増やす要因になります。

2.ツメダニ(人を刺すことがある)
上記のチリダニなどを餌にして繁殖するのが「ツメダニ」です。通常は人を刺しませんが、餌になるチリダニが増えるとツメダニも大量発生し、人を刺すケースがあります。ツメダニに刺されると8~48時間後に赤み・腫れ・かゆみなどが生じます。

3.イエダニ(人を刺すことがある)
「イエダニ」は主にネズミに寄生するダニです。ネズミが死ぬとその死骸や巣から離れ、新たな吸血対象として人を刺す場合もあります。イエダニに刺されると、直後に激しいかゆみ・赤み・ただれが生じるのが特徴です。

◎屋外で注意が必要なダニ「マダニ」の場合

屋外に生息するマダニに噛まれた場合は、屋内のダニに刺された場合とは全く異なる症状が現れます。

日本では52種類以上のマダニ類が記録されており、民家の裏庭や林、畑、河川敷などにも生息しています。人だけでなく、野生動物や猫、犬などからも吸血します。

マダニの最大の特徴は、皮膚に口器(こうき)と呼ばれる口を差し込み、数日から10日間以上にわたって吸血を続ける点です。マダニに噛まれると、赤み・腫れなどの皮膚症状や違和感が現れます。しかし、痛みやかゆみが少ない場合もあり、吸血されていることに気づけないケースもあります。

なお、吸血中のマダニを無理に引きはがそうとすると、マダニの体液が逆流したり、マダニの一部が皮膚に残ってしまったりする恐れがあります。絶対に自分で無理に取り除こうとせず、皮膚科などの医療機関を受診し、適切な処置を受けてください。

さらに注意が必要なのが、「ダニ媒介感染症」です。ダニ媒介感染症とは、マダニなどに噛まれることで病原体が体内に入り、発症する感染症を指します。日本において発症する可能性のある主なダニ媒介感染症には、以下のようなものがあります。

ダニ媒介感染症の種類 潜伏期間 症状

日本紅斑熱

2~8日

頭痛や発熱、倦怠感、刺し口などが特徴

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

6~14日

発熱、嘔吐・下痢などの消化器症状を伴い、重症化する場合もある

日本紅斑熱では、高熱や強い倦怠感に加え、噛まれた部位にかさぶた状の刺し口が見られることがあります。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)でも刺し口が確認できる場合はありますが、目立たないこともあり、発熱や消化器症状などの全身症状が先に現れることも少なくありません。

マダニに噛まれたあとは体調の変化に注意し、発熱などが見られたら、速やかに医療機関を受診してください。

◎症状はいつまで続く?完治までの期間

○屋内に多いダニ「ツメダニ・イエダニ」の場合

ツメダニ・イエダニなど屋内のダニに刺された場合の赤みやかゆみは、個人差はありますが数日~1週間程度で軽快するケースが多いです。ただし、かき壊してしまった場合や炎症が強い場合は、治るまでに時間がかかることも考えられます。

○屋外で注意が必要なダニ「マダニ」の場合

マダニに噛まれた場合の赤みや腫れは数日~1週間程度続くことがあります。吸血されていた時間の長さや、適切に除去できたかどうかによって回復期間は変わるため、心配な場合は医師に確認しましょう。

また、マダニに噛まれた場合に注意したいのが先述したダニ媒介感染症です。噛まれてから数日~2週間ほど経ってから発熱などの症状が現れることがあります。皮膚症状が落ち着いてもしばらくは体調の変化に注意し、発熱などの症状が見られた場合は医療機関を受診してください。

◎ダニに刺されたあと病院を受診すべき目安

○屋内に多いダニ「ツメダニ・イエダニ」の場合

ツメダニ・イエダニなど屋内のダニに刺された場合、市販薬で対処できることも多いです。ただし、症状がひどい場合や広範囲にわたる場合には受診を検討しましょう。

○屋外で注意が必要なダニ「マダニ」の場合

一方、屋外などでマダニに噛まれた場合は市販薬での対処は適していません。皮膚に噛みついてから時間が経過するほど除去が難しくなるため、無理に自分で除去せず、皮膚科など医療機関を受診してください。
また、マダニに噛まれたあとは潜伏期間(6日~2週間程度)を考慮し、発熱や倦怠感、悪寒、消化器症状などの体調変化に注意してください。

※この章以降に詳しく解説する対処法や注意点などの内容は、
主に「屋内のダニ(ツメダニ・イエダニ)に刺された方」向けの内容を対象としています。

ダニに刺されたあとの正しい対処法

屋内のダニに刺されたあとの正しい対処法は、次の通りです。

1.患部を清潔にする
2.かゆみを抑えるために冷やす
3.症状に合わせた市販薬を選ぶ

上記の順番で紹介するので、それぞれ参考にしてください。

◎患部を清潔にする

ダニに刺されたあとは、まず患部を清潔にすることが大切です。汗や汚れが付いた状態だとかゆみなどが悪化することもあるため、冷たい水と石鹸で皮膚をやさしく洗いましょう。

◎かゆみを抑えるために冷やす

かゆみや腫れがある場合は、患部を冷やすことで症状が和らぐ場合があります。冷たい水で濡らしたタオルや、保冷剤をタオルで包んだものなどを数分程度あてると良いでしょう。

ただし、長時間あて続けると皮膚への刺激になるため、様子を見ながら冷やすようにしてください。

◎症状に合わせた市販薬を選ぶ

症状が気になる場合は市販の外用薬を使用するのも一つの方法です。かゆみや赤みの程度に合わせて市販薬を選ぶようにしましょう。

○ステロイド成分配合

ステロイド成分には、かゆみや腫れ、赤みなどの炎症を抑える働きがあります。ステロイド外用薬は効果の強さによって5つのランク(ストロンゲスト・ベリーストロング・ストロング・ミディアム・ウィーク)に分類されていますが、ドラッグストアなどで市販薬として購入できるのは、下から3つのランク(ストロング・ミディアム・ウィーク)のみです。症状の強さや塗る部位に合わせて選びましょう。

顔や首などの皮膚が薄い部位や小児への使用は、自己判断せず薬剤師や登録販売者に相談してください。

○抗ヒスタミン成分配合

抗ヒスタミン成分には、かゆみの原因となる「ヒスタミン」の働きを抑える作用があります。腫れや赤みなどの炎症よりも、かゆみが強く現れている場合に効果的です。クリームやゲル、液体タイプなどが販売されているため、使い心地や塗る部位などに合わせて選びましょう。

○ノンステロイドやパッチタイプ

そのほか、比較的かゆみなどの症状が穏やかな場合には、ノンステロイドやパッチタイプの外用薬も選択肢の一つです。
ノンステロイドの外用薬は、顔や首など皮膚が薄い部位にも使用しやすいのが特徴です。また、パッチタイプの外用薬は患部のかき壊しから保護できますが、刺激や蒸れに注意が必要なため、使用上の注意をよく読んで使いましょう。

ダニに刺された跡を残さないための注意点

ダニに刺されたあとのかゆみや炎症が落ち着いても、色素沈着などの跡が残ってしまうことがあります。以下では、跡を残さないための注意点について解説します。

◎患部をかき壊さない

かゆみがあると我慢できずに皮膚をかいてしまいたくなりますが、症状が悪化するほか、傷口から細菌が入ったり色素沈着につながる恐れがあるため注意が必要です。
かゆみがある場合は市販薬を使用するか、医療機関を受診するなどして、患部をかき壊さないようにしましょう。

◎紫外線対策と保湿ケア

ダニに刺されたあとは、紫外線対策と保湿ケアも徹底するようにしましょう。患部に紫外線が当たるとメラニン色素の生成が活発になり、跡が残りやすくなります。
また、かゆみなどの炎症が起こっているときは皮膚のバリア機能が低下している状態です。入浴後は乾燥を防ぐために保湿ケアを行うようにしましょう。

ダニ被害に遭いやすい環境と状況

ダニの被害に遭わないためには、ダニが生息しやすい環境や、ダニに接しやすい状況にいるかどうかが大きく関係します。

◎草むらや屋外活動の機会が多い[マダニ]

マダニは森林や草むら、河川敷など、野生動物が出没する環境に多く生息しています。キャンプ、ハイキング、農作業、草刈りなどでこうした場所に入る際は、マダニに刺されるリスクが高まります。 長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を避けるようにしましょう。

◎屋外に出るペットを飼っている[マダニ、屋内ダニ]

散歩などで屋外に出る犬や猫などのペットは、マダニを体につけたまま室内に持ち込むことがあります。また、ペットの寝床やカーペットなどは屋内のダニが好む環境になりやすいため、こまめな掃除や健康管理が重要です。散歩のあとはブラッシングを行う、ペット用のノミ・マダニ駆除薬を使用するなど、日頃のケアを心がけましょう。

◎ネズミや鳥の巣などの発生源が身近にある[イエダニ]

屋根裏にネズミが住み着いていたり、ベランダに鳥の巣があったりする場合、そこに寄生している「イエダニ」などが室内に入ってくることがあります。 ネズミの駆除や鳥の巣の撤去を行わない限り、くり返し被害に遭う可能性があるため、早めに対処を行うようにしましょう。

◎寝具やカーペットの管理が不十分[屋内ダニ]

高温多湿で、食品のクズやカビ、人間の垢が豊富な場所はダニが増殖しやすい環境になります。 特に敷きっぱなしの布団や、掃除機をあまりかけないカーペットを使用している環境ではダニが大量発生しやすく、刺されるリスクが高くなります。

ダニに刺されないための予防と対策

室内でダニに刺されないための予防と対策として、下記について解説します。

  • 寝具の乾燥と掃除機がけ
  • 部屋の換気と除湿
  • 常に部屋をきれいに保つ
  • ネズミ対策

○ダニが発生しやすい時期と環境

ダニは室内で一年中見つかりますが、夏から秋にかけての繁殖のピーク期に最も多くなる傾向があります。特に気温と湿度が高い時期は注意が必要です。

また、ダニが発生しやすい環境は、以下の通りです。
1.高温多湿の環境(20~30℃、湿度60%以上)
2.エサが豊富な環境(ホコリやカビ、食べ物のカス、人間の垢など)
3.ダニが潜れる環境(畳やじゅうたん、寝具など)

これらの条件を把握し、ダニが発生しにくい環境を整えることが予防の基本です。

◎寝具の乾燥と掃除機がけを行う

ダニは湿度を好むため、天日干し、または布団乾燥機を使って寝具をよく乾かしましょう。

また、布団を干す際に布団を叩くと、細かくなったダニの死骸やフン(ダニアレルゲン)が布団の表面に浮き上がり、アレルギー症状を引き起こす原因となります。そのため、布団を干したあとは叩かず、掃除機をかけることが大切です。

なお、もし布団を干せない場合は、丸洗いが効果的です。半年に1回のペースを目安に洗うようにしましょう。

◎部屋の換気と除湿を徹底する

ダニ対策のためには、部屋の換気と除湿を徹底することも重要です。以下のポイントを押さえて、ダニが発生しにくい環境を整えましょう。

  • 天気の良い日は窓を開けて風通しを良くする
  • 梅雨時期には除湿機やエアコンのドライ機能などを使う
  • 加湿器を使う場合はこまめに湿度管理を行う
  • 洗濯物を室内に干すのは避ける
  • 家具と壁の間に5cm以上の隙間を空けて風通しを良くする
  • 観賞魚の水槽や観葉植物を置く場合は湿度が上がりすぎないよう注意する

特に寝室や、浴室・洗面所、押入れ・クローゼット、カーペットなどの敷物がある場所については換気と除湿を徹底しましょう。

◎常に部屋をきれいに保つ

ダニは、ホコリや食べ物のカス、カビ、人間の垢・フケなどを食べます。このような汚れを放置しているとダニが発生しやすくなるため、少なくとも3日に1回は掃除を行い、常に部屋をきれいに保つことが大切です。

フローリングは、いきなり掃除機をかけると排気でホコリが舞い上がってしまうことがあります。まずはワイパーやモップなどで軽くホコリを取り除いてから、仕上げに掃除機をかけましょう。また、畳やじゅうたんは特に、一畳あたり1分以上を目安にゆっくり掃除機をかけるのがポイントです。

◎ネズミ対策を行う(イエダニ対策)

もしネズミの気配がある、急に激しいかゆみが出た場合など、「イエダニ」による被害が疑われる場合、掃除だけでは解決しません。専門業者に依頼するなどして、発生源であるネズミの駆除を行う必要があります。

ダニに刺されたあとは適切なケアと対策が必要

ダニに刺されたあとの症状や注意点は、ダニの種類によって異なります。

屋内に生息するツメダニやイエダニの場合は、赤みや強いかゆみが現れることが多く、市販薬で対処できるケースもあります。一方、屋外で注意が必要なマダニは長時間吸血することが多いため、自分で無理に取り除こうとせず医療機関で適切な処置を受けることが大切です。

屋内のダニによる被害をくり返さないためには、日頃から掃除や換気、湿度管理を徹底し、ダニが発生しにくい環境づくりを心がけることが重要です。

また、症状が広範囲にわたる場合や長引く場合、発熱などの体調不良が現れた場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

【参考】

感染症情報提供サイト
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/tick-borne-diseases/index.html
日本皮膚科学会
https://qa.dermatol.or.jp/qa19/index.html
東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/zenbun3