【医師監修】肌のかゆみの原因は乾燥!日常でできる対策を解説!
「肌がかゆくなる」「肌のかゆみがおさまらない」とお悩みではありませんか?
肌のかゆみは乾燥をはじめ、さまざまな理由から角質層のバリア機能が低下することで生じます。
ここでは、皮膚科医の監修のもと、乾燥を中心に肌のかゆみが起きる原因や、メカニズムについて解説します。
今すぐにでも簡単にできる対策や、ケア方法もご紹介します。
日頃のスキンケアや習慣などに取り入れてみてください。
皮膚科医・美容皮膚科医
今泉スキンクリニック
藤巻 あいら 先生
肌のかゆみが起こるのは乾燥のせい?
肌がかゆくなる理由は角質層(角層)のバリア機能の低下
肌がかゆくなる原因は、角質層のバリア機能の低下です。角質層のバリア機能とは、外部刺激から肌を守る機能のこと。乾燥などの理由で角質層のバリア機能が低下すると、外部からの刺激に弱くなり、かゆみを引き起こします。
(潤いが保たれている状態)(イメージ図)
角質層内は、角質細胞と呼ばれる細胞が並んでおり、その間は細胞間脂質とよばれる脂質で満たされています。また、角質細胞は水分を保有しており、その水分を皮脂が蒸発させないようにすることで、肌の潤いを保っています。
この構造によって、紫外線や細菌など外部からの刺激を防いでいるのです。
しかし、乾燥などによって皮脂や角質層内の水分が減少すると、外部からの刺激に敏感になります。このようにバリア機能が低下することで、かゆみが引き起こされるのです。
かくほどかゆみが増しやすいので注意
肌のかゆみが収まらないと、ついかきたくなりますが逆効果です。かくことで、さらなるかゆみを引き起こす悪循環に陥ってしまいます。
手や爪でかき続けたり、タオルでこすったりすると、刺激の一部が神経の末端に伝わります。伝わった刺激は、かゆみの原因物質のヒスタミンや炎症性サイトカインを放出する細胞を刺激し、さらなるかゆみを引き起こしてしまいます。
また、肌をかくと皮膚が傷つき、さらにバリア機能が低下してしまいます。バリア機能が低下することで、より外部の刺激に敏感になり、一層かゆみを感じやすくなってしまうのです。
角質層(角層)のバリア機能が低下する原因
乾燥
角質層のバリア機能が低下する代表的な要因は乾燥です。
通常、肌の角質層は皮脂膜という組織で覆われており、水分の蒸発を防いでいます。空気が乾燥すると皮脂膜を保つのが難しくなり、肌の表面から水分が蒸発しやすくなってしまうのです。
加えて、乾燥によって角質層内で水分を保持する役割の天然保湿因子が減少し、肌が水分を保てなくなります。
このように乾燥によって、皮脂膜が減り、角質層内の水分が減少することは、バリア機能低下の主な要因です。
水分が蒸発(イメージ図)
紫外線
角質層のバリア機能を低下させる原因の一つに、紫外線も挙げられます。
紫外線には、皮膚を乾燥させたり皮脂を酸化させたりする作用があるため、肌表面の環境が悪化します。
これらの影響によって、角質層のバリア機能は失われてしまいます。バリア機能が低下した肌はさらに紫外線のダメージを受けやすいため、注意が必要です。
肌のターンオーバーの乱れ
肌のターンオーバーとは、細胞が一定の周期で生まれ変わる仕組みのことです。部位によって異なりますが、通常約28日周期で肌の細胞は入れ替わっていきます。
肌のターンオーバーが正常だと、角質層の潤いや健康的な状態が保たれるので、バリア機能は問題ありません。
しかし、年齢などの影響で、ターンオーバーの周期が乱れてしまうことがあります。肌のターンオーバーが乱れていると、健康的な細胞が育たなくなるため、角質層のバリア機能が低下するのです。
間違ったスキンケア、入浴法
間違ったスキンケアや入浴法によって、肌の表面に必要以上の刺激が加わる、あるいは皮脂が減少し乾燥しやすい状態になるケースは、珍しくありません。
たとえば、洗顔のときにゴシゴシとこすりすぎると、必要な皮脂まで落としてしまったり、皮膚表面が傷ついたりしてしまいます。
また、湯船の温度が高すぎる場合も、肌のバリア機能が低下してしまうため、要注意です。
加齢
加齢も、角質層のバリア機能が衰える原因の一つです。
年齢を重ねると皮膚が老化して薄くなり、新陳代謝の低下、皮脂の分泌量の減少などがみられます。
健康的な肌に必要な皮脂や水分が十分でなくなり、それらを保つ力も低下するため、乾燥肌にもなりやすいといえるのです。
乾燥した肌はバリア機能が低下し、かゆみが起きやすくなります。
乾燥で起こる肌のかゆみの対処法
肌を冷やす
かゆみを感じるときは、肌を冷やすことでつらい症状を緩和できます。
冷たさの感覚は、かゆみを生じさせる神経の活動を抑制するため、一時的にかゆみが収まったように感じられるからです。
肌を冷やすときには、保冷剤・氷などを、タオルやビニール袋で包んで当てましょう。氷を直接当てると過度な刺激になってしまいます。
あまりにも長く冷やすと肌の負担になるため、かゆみが収まったら冷やすのを止めましょう。
市販薬を活用する
市販のかゆみ止めも、かゆみをともなう乾燥肌に効果が期待できます。かゆみ止めは大きく分けると以下の2種類です。
・外用薬(塗り薬)
・内服薬(飲み薬)
塗り薬・飲み薬ともに、主なかゆみ止めの成分として、かゆみの原因を抑えるジフェンヒドラミン塩酸塩などがあります。
塗り薬は、肌を保湿してバリア機能を高める保湿剤や、炎症を抑えるステロイド剤など種類が豊富です。
保湿剤に使われている成分は、皮膚からの水分蒸発を防ぐワセリンや、保湿因子となる尿素などです。
肌のかゆみが強く、炎症を起こしている場合は、保湿剤だけでなくステロイドの使用も検討してみましょう。
飲み薬は主に抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬があります。
肌に刺激を与えない
肌のかゆみを感じたら、対策として刺激をできる限り避けましょう。
ついかきたくなってしまいますが、こすったり叩いたりすることも含め、極力刺激を与えないようにしてください。
かゆみが出ている肌は、角質層のバリア機能が低下し、さらにダメージを受けやすくなっている状態です。かゆみを悪化させないためにも刺激を避けるようにしましょう。
寝ている間に無意識にかきむしってしまうこともあるので、手袋を着用するなどの対策がおすすめです。
乾燥で起こる肌のかゆみを防ぐ対策
化粧水や乳液・クリームでしっかり保湿
乾燥による肌のかゆみを防ぐ上で、保湿はもっとも重要です。
かゆみの原因となるバリア機能の低下は、主に乾燥によって引き起こされます。普段からしっかり保湿をしておけば、適切な皮脂の量や角質層が保有する水分量が保たれ、バリア機能を維持しやすいです。
たとえば、スキンケアの際には、まず化粧水で肌に水分を与え、乳液やクリームでフタをすると水分が保たれやすくなります。お風呂上がりのタイミングで行うのもよいでしょう。
また、保湿剤を選ぶときは、有効な保湿成分が含まれているかをチェックしてみましょう。たとえば、尿素などは水分保持作用が高く、有効な成分の一つです。尿素の場合、20%含まれていると高い水分保持作用があります。
入浴習慣の見直し
入浴の習慣を見直すことも、乾燥によるかゆみの改善には大切です。入浴は皮膚を清潔に保つために重要な一方で、入り方によってはバリア機能を低下させてしまうからです。
お湯の温度は、40℃程度のぬるめに設定しましょう。41℃以上の熱すぎるお湯は、肌のかゆみの感覚を増幅させ、皮膚のバリア回復が損なわれます。
また、保湿用の入浴剤を使うのも良い方法です。香りのよいものを選べば、保湿効果だけでなくよりリラックスできるという効果もあります。
体を洗うときには、ナイロンタオルや硬いブラシなどでゴシゴシこすらないことが大切です。刺激を緩和できるように、泡立てた石鹸を使って手でやさしく洗いましょう。
ボディーソープや石鹸を選ぶときは、肌に優しい弱酸性のものや、保湿成分を含んだものを選ぶのがおすすめです。
紫外線を防ぐ
角質層のバリア機能を保護するために、紫外線ケアも重視しましょう。帽子や手袋といった紫外線ケアのアイテムを使う、日焼け止めをこまめに塗るといった対策は簡単に始められます。
紫外線は一年を通して降り注ぎますが、気象庁のデータによると3月〜7月の量が多く、5月頃がピークと言われています。特に、春〜夏は軽装になり肌の露出が増えるため、この時期の外出はいつも以上に紫外線対策を念入りに行いましょう。
出典:気象庁「紫外線に関するデータ」
また、標高が高いと紫外線のダメージも強くなるので、登山の際などは念入りに対策をしてください。
部屋を加湿する
肌のかゆみを防ぐには、空気の乾燥対策も重要です。定期的に室内を加湿するなどの対策を行いましょう。
室内の理想的な湿度は55〜70%と言われていますが、乾燥しやすい冬の時期は35%近くまで下がることもあります。湿度の高い夏場でも、冷房をずっとつけていると除湿効果があり、空気が乾燥するため注意が必要です。
加湿器を使うのが確実ですが、持っていない方は下記の方法を試してみましょう。
・濡れたタオルや衣類を部屋の中に置いておく
・鍋でお湯を沸かす
・霧吹きで周囲に水を吹きかける
肌への刺激が少ない衣服
乾燥肌でかゆみが出ているときは、肌のバリア機能が弱っているため、衣服もなるべく刺激の少ないものが望ましいです。
たとえば、綿でできた衣服は、かゆみの原因物質であるヒスタミンを含んだ汗を吸収しやすい素材です。かゆみ対策として取り入れてみましょう。
一方で、チクチクした質感の服、ナイロンやポリエステルなど化学繊維を使った服は、直接肌に触れるとかゆみの原因になります。また、肌への刺激を軽減するために、体に密着するフィット感のある服も避けたほうが無難です。
睡眠や食事などの生活習慣の見直し
生活習慣を見直すことで、肌のターンオーバーが改善され、肌のバリア機能の維持につながります。
「食事の時間が定まっていない」「睡眠不足」といった不規則な生活をしていると、肌のターンオーバーが乱れ、バリア機能が損なわれてしまうからです。
特に、睡眠は肌のターンオーバーの促進には欠かせません。加えて、6〜8時間の十分な睡眠を取ると、肌の水分量が増加することがわかっています。
また、ストレスも肌の水分量やバリア機能を悪化させる一因です。ストレスを溜めすぎず、適度に発散することを心がけましょう。
セルフケアで症状が改善しない場合は
早めに皮膚科へ
肌のかゆみの対策や予防について、ここまでいくつかの方法をご紹介しました。かゆみの原因は乾燥肌であることが多い一方で、何らかの疾患が原因である可能性もあります。
対策をしても改善しない場合や、あまりにもかゆみが強く皮膚炎が疑われる場合は、早めに皮膚科を受診してください。
アトピー性皮膚炎のような疾患は、医師の指示のもと正しく治療することが大切です。
- 参考文献
- 気象庁「紫外線に関するデータ」