【医師監修】かかとがひび割れて痛い…乾燥によるガサガサ・ゴチゴチの原因とケア方法を解説
        かかとのひび割れのせいで、ストッキングや靴下が引っかかったり、ひどい時には歩くと痛かったり…。
        そんなつらいお悩みはありませんか?
        かかとは、なぜ他の部位よりガサガサ・ゴチゴチに乾燥し、ひび割れてしまうのでしょうか。
        この記事では、かかとがひび割れる主な原因から、日々の正しいケア方法、ひび割れが
        できてしまった時の対処法、そして皮膚科を受診すべき症状の目安まで、医師の監修のもと詳しく解説します。
        正しい知識を身につけて、きれいなかかとを目指しましょう。
      

          東京医科歯科大学 
皮膚科臨床准教授
医学博士 皮膚科専門医
          高山 かおる 先生
        
かかとがひび割れる主な原因とは
皮膚の乾燥と水分不足
            かかとを含む足裏の皮膚は、体の重みを支えるために、他の部位より角質層が厚くなりやすい傾向があります。
            一方、皮脂を分泌する皮脂腺がほとんど存在しないため、皮膚の潤いを保つ「皮脂膜」が作られにくいという特徴があります。皮脂膜の役割は、皮膚の表面を覆い、水分の蒸発を防ぐことです。皮脂膜が作られにくいかかとの皮膚からは水分が蒸発しやすく、体の中でも特に乾燥しやすい部位といえます。
          
ターンオーバーの乱れと角質の蓄積
            ターンオーバーとは、皮膚が一定期間で入れ替わる仕組み(皮膚の生まれ変わりの周期)のことです。
            皮膚の内側で生まれた細胞が徐々に押し上げられ、やがて角質細胞へと変化していきます。最終的には垢となって自然にはがれ落ちる仕組みで、これが皮膚のターンオーバーの一連の流れであり、「皮膚の新陳代謝」と呼ばれています。このターンオーバーの周期は乾燥、外部刺激、加齢などの影響を受けて変動し、一般的には28~45日程度とされています。しかし、この周期から遅れてしまうと角質が自然にはがれず、皮膚表面に蓄積してしまうことがあり、蓄積した角質は次第に柔軟性を失い、ゴチゴチと硬くなることがあります。特にかかとの角質が硬くなると、歩行時などに加わる衝撃でひび割れを起こしやすくなる点に注意が必要です。
          
加齢による皮脂分泌の減少
皮膚は年齢を重ねると皮脂腺や汗腺の働きが衰え、皮膚の水分量や皮脂の分泌量が全体的に減少する傾向にあります。皮脂腺や汗腺の働きが衰えることで、天然の保護膜ともいえる皮脂膜が薄くなると、皮膚の乾燥はさらに進みやすくなり、かかとがひび割れるリスクも高まるのです。
立ち仕事や合わない靴による圧迫や摩擦
            立っている時、体重のほとんどがかかとにかかっています。長時間の立ち仕事や、サイズの合わない靴、クッション性の低い靴などを履いていると、かかとへの物理的な圧迫や摩擦が続くことになります。
            こうした外部からの刺激に対し、かかとの皮膚は防御反応として角質をさらに厚くするため、より一層硬く、ひび割れやすい状態になるわけです。
          
かかと水虫の可能性
            かかとのひび割れやガサガサの原因として、単なる乾燥ではなく「角質増殖型足白癬(はくせん)」、いわゆる“かかと水虫”である可能性も考えられます。
            水虫は、白癬菌というカビが角質層に寄生することで発症する感染症の一種で、かかとの皮膚の角質に寄生している場合を、一般的に「かかと水虫」と呼ぶことがあります。かゆみなどの自覚症状がない場合も多く、乾燥によるひび割れと見分けがつきにくいのが特徴です。
            角質増殖型足白癬によってかかとがひび割れている場合、保湿ケアだけでは改善しないため、薬による治療が必要です。保湿をしても症状の改善が見られない場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
          
かかとのひび割れを防ぐ正しいケア方法
こまめな保湿
            かかとに限らず、スキンケアの基本はまず保湿です。
            硬くなった角質を柔らかくする「尿素」配合のクリームや、高い保湿力を持つ「ヘパリン類似物質」、水分の蒸発を防ぐ「ワセリン」などの保湿剤が有効です。ただし、尿素は角質をやわらげる働きがある一方で、ひび割れ部分に塗るとしみて痛みを感じることがあるため、傷がある場合には避けた方が安心です。
            保湿の最適なタイミングは、皮膚が柔らかくなっているお風呂上がりです。保湿剤を塗った後に靴下を履いてカバーすると保湿効果が高まります。
          
適度な角質の除去
定期的にピーリングやスクラブなどで、蓄積した角質を除去すると、ひび割れの予防につながりやすくなります。
            しかし、皮膚は刺激に敏感です。一度にすべての角質を落とそうと、必要以上に削ってしまうと皮膚が薄くなり傷ついてしまいます。傷ついた皮膚は、自らバリアを張ろうとして、より角質を溜めやすくなります。
            そのため、一度にすべての角質を取ろうとせず、時間をかけてゆっくりとケアしていくのが正しい方法です。以下のステップを参考に、傷つけないようケアしましょう。皮膚のターンオーバー周期に合わせて、3週間に1回ほど行うとよいでしょう。
          
まず足をきれいに洗って乾かします。濡れたまま削るのは、角質がふやけて削りすぎてしまうため、おすすめしません。
角質を、目の細かいやすりで一方向になでるようにさすります。角質がけば立たない程度でやめておきましょう。
最後に必ず保湿ケアを行ってください。
入浴習慣の見直し

入浴の仕方や洗い方によっては、かかとの乾燥の悪化につながる場合があります。
            まず、熱すぎるお湯は、必要な皮脂まで落としてしまうので控えましょう。ぬるま湯(38~40℃程度)で洗うのがおすすめです。
            ナイロンタオルなどでゴシゴシこするのも避けましょう。摩擦などの刺激によって角質が厚くなり、乾燥が悪化することがあります。よく泡立てたせっけんやボディソープでやさしく洗いましょう。
            お風呂から上がったら、すぐに保湿ケアをすることも重要です。お風呂上がりの皮膚は水分が蒸発しやすい状態になっています。タオルでやさしく水分を拭き取り、時間を空けずに保湿剤を塗り、ケアしましょう。
          
サイズの合う靴を選び、摩擦を避ける
サイズの合わない靴などで圧迫され続けることも、角質を厚くする原因の一つです。
            硬いサンダルやヒールの高い靴など、足に負担をかける靴を長時間履くのは避け、自分の足のサイズや形に合った、クッション性の高い靴を選びましょう。
            さらに靴下を履くことにより、靴と足の摩擦を軽減できます。吸湿性のよい綿や絹などの素材の靴下を選ぶと、摩擦もムレも同時に防ぎやすく、おすすめです。
          
よくあるNGケア

その他、良かれと思ってやっている以下のようなケアが、実はかかとの乾燥を進め、ひび割れを悪化させる可能性があります。 ・無理に角質を剥がす、削る 硬くなった角質を爪切りやハサミで切ったり、無理に剥がしたりすると、健康な皮膚まで傷つけ、出血や感染の原因になります。 ・軽石などでゴシゴシこすりすぎる 過度な刺激は、さらなる角質肥厚(かくしつひこう)を招く悪循環に陥る可能性があります。もし使う場合は、週に1~2回程度、皮膚を柔らかくした状態でやさしく一方向にこする程度に留めましょう。 ・保湿を怠る 特に角質ケアをした後は、皮膚が無防備な状態になっています。その状態で保湿を怠ると、乾燥が進んでしまうので要注意です。
かかとがひび割れした際の対処法
ぬるま湯でやさしく洗って清潔に保つ
            ひび割れが起きている場合、傷口から細菌が入るのを防ぐことが大切です。まずはかかとを清潔に保ちましょう。
            刺激の少ない、よく泡立てたせっけんで洗い、ぬるま湯などでやさしく洗い流すのがおすすめです。
          
絆創膏などで保護して外部刺激を防ぐ
            ひび割れが深く、歩くと痛むといった場合には、応急処置が必要です。ひび割れ専用の絆創膏や液体絆創膏、ハイドロコロイド素材のパッドなどで傷口を保護しましょう。
            保護することで、外部からの細菌やウイルスの侵入を防ぎ、痛みを和らげることにつながります。また、傷口の乾燥を防ぎ、治りを助ける効果も期待できます。
          
保湿クリームなどで乾燥を防ぎ、皮膚を整える

            清潔にした後は、しっかりと保湿をして、皮膚を保護しましょう。
            保湿剤がひび割れにしみて痛い場合は、尿素濃度が高いものや刺激の強い成分を避け、ワセリンなどの低刺激な保湿剤を選ぶとよいでしょう。
            クリームを塗る際は、ひび割れの溝を埋めるようにやさしく塗り込むと効果的です。
            保湿剤をしばらく使っても改善が見られない場合は、症状を抑え、皮膚の修復を助ける市販薬(OTC医薬品)の活用も考えましょう。
            選び方が難しいときはドラッグストアの薬剤師・登録販売者などに相談しましょう。
          
皮膚科を受診すべき症状の目安
セルフケアを続けても改善しない

            保湿などのセルフケアを1~2週間丁寧に続けても、一向に改善が見られない、あるいは悪化する場合は、皮膚科を受診しましょう。
            単なる乾燥ではなく、水虫やその他の皮膚疾患の可能性も考えられます。自己判断せず、専門医の診断を受け、適切な治療をしましょう。
          
出血や強い痛みを伴う
            ひび割れが深く、真皮にまで達して出血している場合は、細菌感染のリスクが非常に高い状態といえます。
            歩くのがつらいほどの強い痛みがある場合も同様に、セルフケアでの対処は困難な状態と考えられます。速やかに皮膚科を受診し、必要な治療を受けましょう。
          
水虫かどうかの判断がつかない
            かかとだけでなく、足の指の間や側面にも皮むけやかゆみ、水ぶくれなどの症状がある場合は、水虫の可能性が高いといえます。
            水虫かどうかを診断するには、皮膚片を顕微鏡で観察して、白癬菌の有無を確認する必要があります。自己判断で市販の水虫薬を使わず、まずは皮膚科でしっかりと検査を受けることが重要です。
          
毎日の保湿ケアで、
ひび割れ知らずのかかとを目指そう
          
            かかとのひび割れは、乾燥、皮膚のターンオーバーの乱れ、外部からの物理的な刺激が主な原因となって起こります。
            かかとのひび割れ予防の基本は、毎日の「保湿」と、かかとへの負担を減らす「生活習慣の見直し」です。
            セルフケアで改善しない場合や、痛み・出血がひどい場合、水虫が疑われる場合は、ためらわずに皮膚科を受診しましょう。適切なケアをして、ひび割れ知らずのきれいなかかとを目指しましょう。
          
- 参考文献
- 
              安田利顕 著、漆畑修 改訂|改訂10版
 「美容のヒフ科学」
 
 メディックメディア
 「病気がみえる vol.14 皮膚科」
 
 友利新 (監修)
 「最新版 肌美人になる スキンケアの基本 悩み解消パーフェクトBOOK」
