もしかして加齢のサイン?40〜50代の爪事情編
年齢を重ねるにつれて肌や髪に変化が現れるように、爪や手にも変化を感じている人は多いはず。目につきやすいパーツだからこそ、いくつになってもいきいきとした美しい手元をキープしたいですよね。そこで「年齢爪のお悩み対策 指先からのエイジングケア」では3回にわたって、加齢による爪のお悩みにスポットを当て、その対策を皮膚科医がアドバイス。年齢に応じたケアを今から実践し、自分らしい地爪の美しさを育てていきましょう!
第1回目は、加齢による爪の悩みが増え始める40〜50代のリアルな爪事情をレポート。うるおい皮ふ科クリニック院長の豊田雅彦先生に年齢と爪の関係、年齢爪の対策を学びます。
院長 豊田雅彦 先生
医学博士。皮膚科専門医、アレルギー専門医。富山医科薬科大学(現在は富山大学)医学部卒業、1994年から2年半、米国ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経などの研究を行う。2005年、うるおい皮ふ科クリニックを開業。「一人として手を抜かないハイクオリティー高度専門治療」を標榜し、薬だけに頼らず、日常生活の中で病気を克服する診療方針は、世界から絶大な信頼を得ている。2022年6月に著書「新しい皮膚の教科書」(池田書店)を出版。
40代以上の女性が抱える代表的な爪のお悩みとは?
最近「縦すじが目立つようになった」など、爪の変化を感じることはありませんか? 爪は小さくても他人から目につきやすい部分なだけに、悩んでいる人も多いかもしれません。
豊田先生によると、40代頃から爪の変化を自覚する人が増えるのだそう。
「40代・50代は、改めて自分と向き合う年代でもあるのかもしれません。これまでは忙しく、自分の爪や手元の状態を気遣う余裕のなかった女性が、子育てなどが一段落し、ふと指先を見て変化に気づくことも多いようです」
また、興和が日頃から爪のケアをしている女性を対象に実施した調査(2021年9月に実施)から、40代以上の女性が抱える爪の代表的なお悩みが見えてきました。
出典:自社調査による(上位5項目のみ抜粋)
● 40代以上の女性が抱える爪のお悩みは?
縦すじ
お悩み第1位は縦すじ。爪に縦線が入り、触ると凸凹していることも。主な原因は加齢によるもので、乾燥やストレスが原因で現れることもあります。
割れ、欠け
加齢にともない、爪の主成分であるタンパク質「ケラチン」や水分が減少し、爪の弾力性がなくなり、もろくなることで起こりやすくなります。
爪や爪まわりの乾燥トラブル
爪や爪まわりの乾燥トラブルは、加齢によって水分や油分が減少することによる乾燥が主な原因です。水仕事や頻繁な手洗い、消毒も影響しているようです。荒れた皮膚から細菌が入って化膿してしまうことも。
加齢と爪の関係とは?
なぜ、加齢によって、こうした爪の変化が起こりやすくなるのでしょうか? 豊田先生によると「年齢とともに身体機能全般が少しずつ低下することに関係している」のだとか。
「爪は健康のバロメーター」と言われるように、体の状態が現れやすい場所。中でも爪に大きく影響するのが「女性ホルモンの低下」「血流の低下」「消化機能の低下」です。
● 女性ホルモンの低下
爪がしなやかで弾力性があるのは、適度な水分を含んでいるから。その水分を供給してくれるのが「爪床(そうしょう)」とよばれる爪の下の皮膚です。また爪の表面からは常にその水分が蒸発しているため、爪が厚い方が水分は保たれやすくなります。
ここで重要になるのが生殖機能だけでなく、皮膚や骨、血管など全身の健康にも深く関わりがある、女性ホルモンのエストロゲン。皮膚の水分やケラチンを保持するために欠かせないエストロゲンが加齢によって低下すると、皮膚の水分量は減少。爪も薄くなり、水分が容易に蒸発してしまうことに。すると、爪は乾燥して硬くなり、割れ・欠けなどのトラブルが生じやすくなってしまいます。
● 血流の低下
爪は「爪床」に集まる毛細血管から栄養素や水分を補給しているため、爪の維持・形成には血流も重要です。ところが加齢とともに、血流ポンプのはたらきをする心機能や筋力は徐々に低下していきます。さらに、血液の通り道である血管も劣化し、指先など末端の血流が低下します。すると、爪に栄養が行き届きにくくなり、結果として爪はもろくなってしまいます。
● 消化機能の低下
爪の維持・形成に必要な栄養素は食事から摂取する必要がありますが、加齢とともに消化器の機能が低下し、食べたものを消化・吸収しにくくなります。また、爪の生成に必要なタンパク質を多く含む肉や魚類を食べる量も減り、爪が作られる「爪母(そうぼ)」へ十分な栄養が届かず、丈夫な爪が育ちにくくなります。
爪に必要な栄養素とは?
爪の主成分は、「硫黄」を含むケラチンというタンパク質です。ケラチンを形成するには、動物性・植物性タンパク質をはじめさまざまな栄養素が必要となります。中でも重要なのが、「亜鉛」「鉄」「ケイ素」などのミネラル類。また丈夫できれいな爪をつくるためにビタミン類も欠かせません。
・亜鉛
爪を構成するケラチンの合成や爪の生成を促進する。牡蠣、牛肉、豚レバーなどに豊富。
・ケイ素
爪にうるおいを与えるコラーゲンを強化する。玄米、白米、じゃがいもなどに豊富。
・鉄
爪の生成・再生を促す。赤身肉、レバー、ひじきなどに豊富。
・ビタミンA
皮膚や粘膜を作る。ウナギ、レバー、緑黄色野菜などに豊富。
・ビタミンB群
細胞の成長を促進し、新陳代謝を活発にする。卵、魚、納豆などに豊富。
・ビタミンC
爪を丈夫にするコラーゲンを生成する。イチゴやレモン、キウイなどの果物に豊富。
・ビタミンE
血行を良くしてツヤのある爪を作る。ナッツ類、アボカド、かぼちゃなどに豊富。
年齢爪のお悩みには内側・外側からのケアを
「爪の加齢変化は自然現象であり、完全に避けることはできません。
とはいえ、あきらめる必要はない」と豊田先生。
「ケア次第で年齢による変化を遅らせることは可能ですよ」
ここからは、いきいきとした爪を保つためのケアの仕方を教えていただきましょう!
● いきいきとした爪は、すこやかな心身から
爪の加齢変化は爪だけに原因があるのではなく、内臓や血管、ホルモンなど体全体の状態が関わっています。まずは体そのものをいきいきと、すこやかに保つことが何より重要。それには外側からだけでなく内側からのケアが必要です。
まずは十分な睡眠をとることを心がけましょう。皮膚の新陳代謝と再生が促進され、すこやかな爪を保つことができます。
また、日々の食事はバランスを第一に、先ほどご紹介した爪に必要な栄養素を摂ることを意識しましょう。中でも亜鉛や鉄は、普段の食事ではどうしても不足しがちです。食事から摂取しきれない栄養素はサプリメントで補うのもいいでしょう。
40〜50代は更年期の症状に悩む方も多く、女性ホルモンの変動によってイライラしたり、落ち込んだりもしやすいときです。ストレスは消化機能の低下や血行不良をまねき、爪の老化の原因にもなります。家事や仕事の合間に自分なりのリラックスタイムをもうけるなど、ストレスケアも大切にしましょう。
● 毎日のケアは保湿と保護を意識
乾燥しやすくトラブルの多い年齢爪のケアは、「保湿と保護がポイント」と豊田先生。
日中は、ハンドクリームやローションで手や指先をこまめに保湿するとともに、爪はネイルオイルなどでうるおいを与えましょう。油分は乾燥し、もろくなった爪の表面を保護する役目をしてくれます。また、夜寝る前には、爪の保護成分が入った補修液などで爪トラブルを予防するのも効果的です。
● マッサージで手指の血行UP!
爪先まで栄養素をスムーズに届けるには、手指の血行促進が有効です。豊田先生がおすすめするのは簡単な手と爪のマッサージ。下記❶〜❸を1日1セット、血行が良くなる入浴中に行えば効果大です。
- 手全体を反対の手のひらで包みこむようにして、手の甲から指、指先まで手全体をまんべんなくもみほぐす。
- 指のつけ根を反対の手の親指と人差し指で挟み、プッシュする。
- 爪の上下を反対の手の親指と人差し指で挟んでプッシュする。
年齢爪のお悩みに。ケアアイテムはこんな成分に注目!
年齢を重ねてもいきいきとしたきれいな爪を目指すなら、日々の保湿ケアに加えて、爪のダメージ補修をプラスしましょう。注目したいのが「ケイ素」と「硫黄」です。
「ケイ素は、コラーゲンやヒアルロン酸などの働きを強化し、硫黄は、爪の主成分であるケラチンを生成する働きがあります。健康な爪に不可欠な成分を内部にしっかり浸透させることで、年齢爪のトラブル予防にもつながりますよ」(豊田先生)
加齢とともに爪が変化するのは自然なことではありますが、人の目につきやすい爪や指先は、いつまでもいきいきとした見た目でいたいもの。
「年齢だから仕方ない」とあきらめていた方も多いかもしれませんが、今日からできる対策がたくさんあることがわかりましたね。
いつものケアやライフスタイルを見直して、年齢に負けない、すこやかな爪や指先を目指していきましょう!
次回予告
次回「指先からのエイジングケア」第2回のテーマは「更年期と足の爪の関係編」です。更年期を迎えた女性は、身体だけでなく、足の爪にもさまざまな変化が現れます。次回も皮膚科医の豊田先生に学びましょう!
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