二枚爪、爪の割れや欠けの原因は?正しい応急処置と予防法を皮膚科医が伝授
仕事や家事に追われる毎日の中で、爪のお手入れは後回しになりがち。ふと気がつくと、爪先にひび割れや二枚爪が……なんてことも多いですよね。こんな爪トラブルを仕方がないとあきらめていませんか?
爪は、「健康のバロメーター」といわれるパーツ。症状を見逃さず早めに対処することで、すこやかに保つことができます。
そこで「爪トラブルレスキュー」では、よくある爪のトラブルを3回に分けてピックアップ。第1回は「爪の割れ・欠け」「二枚爪」を解説します。
医学博士・皮膚科認定専門医・「私のクリニック目白」院長。女性専門医療(皮膚科・婦人科・美容皮膚科・内科・救急医療)に携わり、2003年、「日本中の女性を健康で元気にしたい」という思いから、女性専門外来「私のクリニック目白」を開院。皮膚トラブルをはじめとした女性の体のさまざまな不調の治療にあたっている。
そもそも爪のトラブルはどうして起こるの? 気になる原因を解説
爪は、皮膚の一部が変化したもので、主成分は「ケラチン」というタンパク質です。一枚板のように見えますが、実は三層構造。そのおかげで適度な柔らかさが生まれ、簡単に折れたり割れたりしないようになっています。
新しい爪をつくっているのが、爪の根元にある「爪母(そうぼ)」。「爪の工場」とも呼ばれていて、ここを傷めたり、爪母の近くギリギリまでジェルネイルやマニキュアを塗ったりしていると、生えてくる爪にダメージを与えてしまいます。
爪母が弱った状態で爪が生み出されると、爪は薄くもろくなり、トラブルを招きやすくなります。ではここから、爪が弱る3つの主な原因を見ていきましょう。
原因 1栄養不足
爪の下には多くの血管が通っていて、栄養素を爪に届けています。偏った食事や極端なダイエット、病気によって体に必要な栄養素が不足すると、爪の発育が悪くなり、弱る原因に。バランスの良い食事は、体はもちろん、爪にとっても大切なのです。
原因 2乾燥
お肌と同様、爪は油分や水分が失われると乾燥し、もろくなります。ジェルネイルやマニキュアを頻繁に繰り返す人や水仕事が多い人のほか、仕事柄、刺激の強い溶剤・薬剤を使う人は注意が必要です。最近は、日常的に消毒剤を使う機会が増えているので、どんな人も爪の乾燥が起こりやすい状態にありますね。
原因 3加齢
加齢で皮膚にシワができるのと同じように、爪にも変化が起こります。とくに女性は更年期でホルモンバランスが変わり、肌の生まれ変わるサイクル、いわゆるターンオーバーが乱れ、保湿力が低下することから、爪がもろくなりやすいのです。
爪トラブル1.「爪の割れ・欠け」 その症状と応急処置
!「爪の割れ・欠け」の症状
ひと言で「爪が割れる」「爪が欠ける」といっても、先端が割れてギザギザになったり、雲母(うんも)状に表面がポロポロとはがれたりと、症状には幅があります。また、まれに爪の下に腫瘍ができたり、爪母付近にイボができたりして、爪が縦に割れることも。今まで症状がなかったのに、急に爪が割れたり欠けたりしたときは、健康状態が落ちているサイン。すべての爪に一斉に横線が入っているときや、症状の変化が激しいときは、病院で診てもらうようにしましょう。
+「爪の割れ・欠け」の応急処置
爪は死んだ細胞からできているので、一度割れたり欠けたりすると、修復することはありません。放置するとストッキングやニットに引っかかったり、さらなる衝撃が加わって症状を悪化させてしまうことも。またスキンケアの最中に、ギザギザの爪が肌を傷つけてしまうこともあります。そのままにせず、正しく処置することが大切です。
おすすめの応急処置は、医療用テープを細く切り(絆創膏の粘着テープ部分を切ったものでもOK)、グッと引っ張って、爪のはがれた部分を押さえつけるように貼る方法。ガサガサ・ギザギザになった部分をやすりでなめらかにしたあと、透明のマニキュアでコーティングするのもよいでしょう。その状態で、新しい爪が伸びてくるのを待ちます。
爪トラブル2.「二枚爪」 その症状と応急処置
!「二枚爪」の症状
二枚爪とは、三層の爪の一番上の層、もしくは二枚目の層がはがれた状態のこと。二枚爪のほとんどは、物にぶつけたり挟んだりといった外的な要因によって起こります。健康な爪の場合、三層はピタッと密着しているので、そうした衝撃があっても耐えられますが、爪が弱っていると三層の接着が甘くなるために、ちょっとした衝撃で層がバラバラになってはがれてしまうのです。
また、爪切りを使っている人も、二枚爪になりやすいかもしれません。パチンと切るときに爪の根元に想像以上の力がかかり、大きな負荷をかけるのがその原因です。
+「二枚爪」の応急処置
二枚爪は痛みがないため放置してしまう人が多いのですが、水仕事による乾燥やちょっとしたダメージの積み重ねで、悪化してしまうことも。早めの応急処置が肝心です。
爪の割れ・欠けと同様、医療用テープを細く切って補強するほか、透明のマニキュアでコーティングするのもおすすめ。無理に切ったりはがしたりせずに、先端をやすりで削りながら、新しい爪を伸ばすようにしましょう。
ダメージに負けない、すこやかな爪を手に入れるトラブル予防法
最後に、皮膚科医の視点から、爪トラブルを未然に防ぐ生活術をお伝えします。
目指すべきは、ちょっとしたことで欠けたり割れたりしない、ダメージに強い爪。表面がつややかなピンク色をしたすこやかな爪になるために、体の内側と外側、双方からのケアを心がけましょう。
❶ バランスの良い食事
豚肉・卵・牛乳・魚・大豆製品など、爪をつくる栄養素である「タンパク質」を意識して摂るようにしてください。ほかにも、タンパク質を補強する「ビタミンA」を多く含むレバーやウナギ、爪の成長に役立つ豆類や緑黄色野菜などの「ビタミンB類」、乳製品やイワシに含まれる「カルシウム」も、すこやかな爪をつくるのに欠かせない栄養素です。最近は糖質や脂質を過度に制限する人が増えていますが、爪のためにはあまりおすすめできません。
❷ 爪を健康にするサプリ
私のクリニックでは、“皮膚のビタミン”と呼ばれる「ビオチン(ビタミンH)」薬を処方しています。ビオチンは皮膚や粘膜の維持、爪や髪の毛の健康に関わるビタミンで、爪を強く丈夫にする効果が期待できます。普段の食事から十分に摂るのは難しいため、ビタミン剤として補ってあげるのが効率的。サプリメントは、ドラッグストアなどでも購入できます。
空気が乾燥する秋から冬は爪も乾燥しやすい時期なので、爪のトラブルが多くなります。「私はいつも、顔に化粧水や乳液を塗ったあと、そのまま爪の根元になじませています」と平田先生。毎日のちょっとした心がけで、爪トラブルを遠ざけることができますよ。
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